prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「好奇心」

2021年06月21日 | 映画
母親と息子が肉体関係を持つというスキャンダラスになりそうなモチーフが良くも悪くもなんともあっけらかんと明るく軽快に描かれている。
母親役のレア・マッサリがすこぶる色っぽく水気たっぷりなせいが大きいだろう。

ルイ・マルは少女娼婦という今だったら製作自体が危ぶまれそうな題材の「プリティ・ベイビー」でもおよそあっけらかんとした調子でジャズの発祥の地ニューオーリンズという背景と併せて描いていたが、今回のチャーリー・パーカーの音楽起用も明るさに拍車をかけた。

フランス有数の財閥の出身という大ブルジョワの出であるところのマルがまことに自然な調子でブルジョワの生活を実感をこめて描いている。
物質的な贅沢さ、仮に問題が起っても問題など存在しないようにやり過ごしてしまう、偽善と事なかれにすらならない無風体質など、なかなかこうぬけぬけとは描けないのではないか。




「国宝 鳥獣戯画のすべて」

2021年06月21日 | 映画
緊急事態宣言で前に予約したのはパー、改めて粘って予約して最終日に滑り込んだ。

これまで知っていたのが甲乙丙丁の四部のうちほとんど甲でしかなかったのがわかる。
鳥獣とはいっても人間を描いているのもあれば、獏や麒麟といった空想上の生き物を描いているのもあって、ずいぶんバラバラ。ネコもいたのね。
むしろなぜこの四巻がまとめられたのか不思議になるくらい。

動く歩道に乗ってゆっくり絵巻物を追っていくのは流れに身を任せて展開を追っていくようでどうしてもとぎれとぎれに部分部分を切り取ってみていた習慣から離れる面白い体験だった。

中には絵巻物の一部を切り取って写して掛け軸に仕立てた作品の展示としてのもあって、ずいぶんと融通無碍なのだなという気もした。

グッズですみっコぐらしのキャラクターとカエルやウサギがコラボしているのは面白かった。




「映画大好きポンポさん」

2021年06月21日 | 映画
ナタリー·ウッドワードとは凄い名前だなあ。ナタリー·ウッドとジョアン·ウッドワードを足して二で割ったわけか。

身も蓋もない言い方するけれど、編集段階で作品を客観的に見られないと苦しむのだったら、第三者の専門の編集者を立てて文字通り客観的に見てもらえばいいではないか。
現にそうしている現場の方が普通だろう。この映画自体そうしているわけだし。
映画は一人で作るものではないと何度も繰り返されるのは何のためなのかと思ってしまう。

一般論になるが、監督が脚本や編集を兼ねるのはあまりいいことだとは思わない。
やはり同じ人間がやっていると単純再生産か下手すると縮小再生産になりがち。

90分という縛りのある映画だったら、予算やスケジュールにも同じ縛りがあるわけで、そうそう破っていいものではないだろう。
その中でなんとかやりくりするのも、モノ作りではないか。作家性と枠を生かすのとは両立するし、させなければ仕方がない。
映画は間に合わせの芸術である、というフランソワ·トリュフォーの言もある。

融資をとりつけるプレゼンにあのやり口はアンフェアではないかなあ。