prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
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新藤兼人95歳・人生との格闘果てず

2008年01月21日 | 映画
数々の病気を抱えてたびたび発熱しながら新作のオールロケ撮影に臨む姿は、鬼気迫る。モチーフは新藤兼人がこれまで描いていたことの繰り返しのようだけれど、いくら描いても描きたりないのだろう。

それにしても、新藤兼人のバイオグラフィについてはずいぶんたくさん、目に入る限りすべて読んできたし映画になったものも見てきたけれど、最初の夫人であり「愛妻物語」のモデルである久慈孝子と、愛人であり三度目の夫人にもなった乙羽信子の両氏は出てくるけれど、二度目の結婚の相手についてはまったくといいくらい(名前すら)出てこなかったのだが、ここでは珍しく息子(プロデューサーの新藤次郎)の口を通していくらか父親不在の家庭について語られている。

監督がたまに家に戻って金木犀の伸びたところを花切り鋏でぱちんぱちんと切っていたら、突然夫人が飛び出してきて鋏を取り上げていってしまった、なんて「火宅の人」の一場面みたいで、コワい。

それにしても、撮影中の映画で大竹しのぶがけたけた笑ってみせるシーン、その笑い方が新藤作品の乙羽信子そっくりなのにびっくり。


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