prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
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「ジェシー・ジェームズの暗殺」

2008年01月23日 | 映画
ジェシー・ジェームズの妻、ジーを聖母マリアに喩える(殺された夫を抱く姿がピエタ風だからか)ナレーションがあったが、あこがれと畏れの対象であるカリスマにほころびが出てきた時にそれをあえて自分の手で殺して逆説的な意味で「救う」、という点でジェシーと暗殺者ロバート・フォードの関係には、キリストとユダみたいな匂いがある。
邪推か知れないが、結婚してから妙にいいとっつぁんがかってきている感じのブラッド・ピットが、カリスマ性と不必要な残酷さという形で顕れてきたその破綻とをうまく両面出し、実質主演のロバート役のケイシー・アフレックが、カリスマを前にした恍惚と畏れを無言の演技で見事に表現している。

オープニングから特殊なレンズをつけたのか、両端が引き伸ばされて流れるような画面処理をしているのが、後半に多用される室内から外を見るアングルのショットにガラス窓が昔のだから平らではなくて外の風景がちょっと歪んで見える効果とつながって対象に一定の距離感を出し、殺される時や「記念写真」を撮られる時に必ずしも直接カメラを向けられず「反射像」として描かれるジェシーの姿で焦点を結ぶことになる。

独特の冷ややかな感じを持った広大な麦畑の風景を見てテレンス・マリック監督の「天国の日々」みたいと思ったら、ロケ地が同じカナダのアルバータ州(といっても、日本の国土のおよそ1.75倍もの面積があるが)。ナレーションの多用や、美術・調度が工業化以前のアメリカのカントリー・ライフのエレガンスを香らせるあたりなども似た感じがする。
(☆☆☆★)


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