prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「手紙」

2006年12月05日 | 映画
差別され迫害される主人公は同情を誘うが、見ている側は差別し迫害する側であることの方が多い。ひねくれた見方か知らないが、この手の泣けるといわれる映画を見る時は、あまり気持ちよく泣いてないで、そのことをできるだけ忘れないようにして見ようと心がける。

そのため恋人の父親役の風間杜夫の、君も人の父になることがあったら、私のこの(手切れ金をやるから別れろという)理不尽な申し出もわかってもらえるだろう、といったセリフに、主人公が差し出された金を持っていくのも含めてうなずいたりして、作品の作りに納得できた。
残念だが、自分があの父親の立場だったらああいう風に振舞わざるをえないだろう。社会や世間を悪者にして指弾するといった作りではない。

泣きはしなかったが、感心はした。いいところに目をつけたと思うし、考えさせる。
CBSドキュメントで犯罪者と被害者の遺族が対面するのがあったが、家族同士の対面というのは直接はまったく関係ないはずなのに、なぜかそう言いきれなくなってしまう。人というのは嫌でも拒絶を含めて「縁」を作らないではいらないらしい。

兄弟が手紙のやりとりだけで直接話す場面がまったくない、という趣向が、絆が切れそうで切れない、切りたくても切れないという距離をよく出した。

主人公をお笑いタレントにした設定はハードルが高いのではないかと思うが、よくクリアして、ラストで大いにものをいった。
(☆☆☆★)