prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「婉という女」

2006年06月19日 | 映画
原作・大原富枝、脚本・鈴木尚之、監督・今井正、主演・岩下志麻の1971年作。

権力争いで負けた家老の家族全員を跡継ぎの男子が絶えるまで一家全員を閉門蟄居させるという処分のため、四歳の時から40年にわたって一つの屋敷から出たことのない、という特異な設定のヒロイン。
前半は閉門生活の描写、後半は閉門が解かれても世間で生きていくには自由を奪われていることに変わりない生活の描写と、いずれにせよ息が詰まる場面がずうっと続く。

製作意図としては戦後社会派監督代表の今井正らしく権力の横暴の糾弾にあるのかもしれないが、あんまりこれでもかこれでもかとマゾヒスティックな描写を重ねていくうち、表向きのテーマからはみ出たと思えるデカダンな部分がけっこう面白い。
閉じ込められているうちに近親相姦に走る兄や、ヒロインが非常に観念的に憧憬の対象の男を思い続けるが決して接触を許されなかったり、解放されても男と接触を許されないで悶々とし続けてほとんど内面が腐臭を放っているかのような状態になってくるあたり。
男たちが閉じ込められている間、勉強ばかりしているというのも、見ようによってはブキミ。
(☆☆☆★)



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