prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「花よりもなほ」

2006年06月15日 | 映画
是枝監督の前作「誰も知らない」は現代のビンボー物語、本作は江戸時代のビンボー物語。
主舞台になる長屋の汚いこと汚いこと、平行四辺形に歪んだ調度や虫が湧きそうな畳、特に擦り切れかけて叩くとホコリが立つ衣装(黒澤和子)など、黒澤明の「どん底」を思わせて見ごたえあり。長屋が傾斜に立っていて、閉ざされた感じを強調しているあたりも似ているが、外とつながっているのが見えるのが違うところ。
ただ、カラーだと役者の顔色から栄養いいのがバレる。宮沢りえがいささか痩せてちょっと筋ばっているのが目立つのがリアルに見えたりするのが皮肉。身奇麗にはしているが、近寄ると着物が色あせているのがわかるあたり、手がかかっている。(どうでもいいけど、りえにはいくらか西洋人の血が混ざっているから30過ぎたら太るともっともらしいこと言ってた奴、いたな)

剣の強さや仇討ちにこだわる侍の見栄などにまったく価値を見出していないのは一つの見識だが、長屋の連中が主人公のニセの仇討ちで一儲け企むようなことを言っているのに、いざ役人の前で一芝居うつところではどこが金儲けと関係あるのかわからず、そのあと忠臣蔵の仇討ちのあと初めて金儲けに走るところを見せているのは、なんだかとんちんかん。
一芝居、と書いたが、実際は芝居としての組み立ては物足らず。嘘をまことと言いくるめるハッタリに乏しい。
(☆☆☆★)



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