prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「マスター・アンド・コマンダー」

2004年03月19日 | 映画
18世紀の帆船の生活をさまざまな角度から丹念に再現しているのは見ものだけれど、そこで満足しちゃったみたいで、ナポレオン軍との戦いがメインなのか、船長と船医の友情と確執を描くのか、少年たちと船長のドラマなのか、自然科学の勃興を描くのか、どれも平行して追いかけていて焦点がはっきりしない。航海の最中に描写を絞り切っていて、見事に男しか出てこない。望遠鏡で覗いた映像で、ガラスが歪んでいて像がぐにゃっとしているあたり、芸が細かい。

死んでいるかどうか鼻に針を刺して確かめる云々という台詞があるから、…の死体が出てくるところで何もしないので?と思ったら案の定。だけど、ホラーじゃないのだから、そういうひねりって意味あるのかな。

アカデミー撮影賞・録音賞を受賞しているけれど、ラッセル・ボイドの撮影とすると同じピーター・ウェアーと組んだ「ピクニック・at・ハンギングロック」の方が魅力的だと思った。(余談だが、この映画では「刑事ジョン・ブック」「イングリッシュ・ペイシェント」のジョン・シールがボイドの撮影助手をつとめている)。船のきしみや爆音をクリアに録音した技術は見事。海原の風景美や、バッハやモーツアルトなどのクラシックの使い方はウェアーらしい。
(☆☆★★★)


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