prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「テキサス・チェーンソー」

2004年03月22日 | 映画
オリジナルの「悪魔のいけにえ」は、作ろうとしても作れない、半ば偶然のように生まれてしまった傑作だと思う。低予算ゆえの極端に即物的な描写と無意識過剰な演出が、舞台になるテキサスの田舎のなんともいえない無気味な空気を巧まずして丸ごと捕えてしまっていた。

それをネタが割れた上、贅沢な体制で作り直すというのは本来ムリのある話なのだが、ムリを承知の上で小技に工夫をこらしていて結構見せる。出だしでバンに乗ってくるのをサイコな男から先輩の被害者の女の子に変えて、それがとんでもない行動に出たもので逃げるに逃げられなくなるあたり、若者たちが逃げられるはずなのにうろうろして殺される単細胞スラッシャー・ムービーとは一味違う。大仰な映像と音響はいいかげんこっちもマヒしているのであまりびっくりしない。オープニングとラストは映像のトーンとは裏腹に一種の伝説的なニュアンスを出している。

保安官に「フルメタル・ジャケット」のハートマン軍曹ことE・リー・アーメイを配して、アメリカ保守層のいやぁな感じを出したあたりも考えている。いやらしすぎて不愉快にもなるが。レザーフェイスがちらっと別の仮面をつけるのはいいが、それきりなのはちと雑。あと素顔を見せちゃいけません。

舞台を一軒家に住む一家の話からかなりあちこち広げているのはショー・アップにはなっているが、もともと食肉加工で生計を立てていた一家が景気が悪くなるとともにおかしくなったという“核”の部分を外すことになった。子供には罪がないように描くあたり、いかにもコビてる。そういう欺瞞的なところを含めて、ブッシュの地元という感じ。
(☆☆☆)


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