サムイズダート・ロシア

めざせロシア式菜園生活!ダーチャごっことロシア&北海道のお話あれこれ

つくられた名言

2012-02-20 | etc.
いわゆる「名言」というものが、ひとり歩きすることがある。

束縛があるからこそ、私は飛べるのだ。
悲しみがあるからこそ、高く舞い上がれるのだ。
逆境があるからこそ、私は走れるのだ。
涙があるからこそ、私は前に進めるのだ。


マハトマ・ガンディーの“遺言詩”と言われているこの言葉、
ガンディーの言葉集(「『ガンディー 魂の言葉』太田出版)のなかに
ぜひ入れたいと思い、出典をあたってみたことがある。
が! あたるといっても、ガンディーという人は、
毎日何かしら書きまくっていて、全集だけで5万ページ!もある。

一体このなかからどうやって探せばいいの!?
幸いこの全集(英語版)、全文PDF化されていて
CD内やネット上で検索できるのだが、
何せわかっているのは日本語訳だけ。
適当に英単語をいくつか入れて、クロス検索を繰り返す。
これでもダメならこの単語で、さぁどーだっ!
・・・あった。それらしき文章が。
といっても、この段階でわかるのは、
この文章が何番のファイルに収められているか?
ということだけなので、原典をあたったことにはならない。
さらにこのあと該当するファイルのなかで検索を繰り返す。

そしてついに発見!「ハリジャン」1947年10月12日号より

「ある友人が、ジョージ・マセソンの次のような名句を
引用して送ってくれた;
束縛があるから、私は飛べるのだ。
悲しみがあるから、高く舞い上がれるのだ。
逆境があるから、走れるのだ。
涙があるから、前に進めるのだ……」

え…。てことは、これはガンディーの言葉ではなく、
スコットランドの盲目の牧師マセソンの言葉の孫引き??

実はガンディーは自分の新聞(ハリジャンもそのひとつ)に
自分の文章だけでなく、気にとまった他人の文章や
知人からの手紙を、ちょこちょこ引用して紹介している。
「新聞」なのだから、それは当然なのだが、
膨大な文章のなかに「引用」が紛れこんでいるものだから、
ガンディーの言葉だと思い込んでしまうのも無理からぬこと。
かく言う私も危うく、引用されていた米国人記者の言葉を
ガンディーの言葉として紹介してしまうところでした!

「名言」のなかには、このようにしてつくられ、
伝説化してしまうものが少なからずあるに違いない。
言葉を引用する際は、原典にあたる手間暇を
惜しんではならない、と痛感したしだい。

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