北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

農業用ロボットの未来がすごい

2014-01-30 23:04:12 | Weblog

 北海道測量技術講演会を聞いてきました。

 この講演会は、国土地理院北海道地方測量部と日本測量協会北海道支部が主催するもので、サブタイトルにある今回のテーマは「地理空間情報の一層の利活用推進と普及に向けて」というもの。

 「地図情報」というと紙や画面で表される二次元平面の情報ですが、それらに高さはもちろん、防災情報や都市計画など様々な情報を付加することで「地理情報」として利活用することができます。

 今回は地理情報を使って社会をより便利で効率的にするいくつかの取り組みが紹介されました。

 今日特に感心したのは、北大大学院農学研究院の野口伸教授の研究成果として発表された「地理空間情報を高度に活用したロボット農業」です。

 我が国の食糧自給率はカロリーベースで40%前後をうろうろしており、6割以上を海外に依存していますが、これは欧米先進諸国に比べても非常に低い数字です。

 農水省では「せめて50%程度に回復を」とラッパを吹きますが、具体的な方法は見えません。

 それに加えて農家人口は減少の一途をたどっており、平成2年に482万人だった農家人口は20年後の平成22年には260万人と実に46%も減少しました。

 さらに少子化により若年就労者が参入してこないために、農業者の高齢化が進み、平成22年の農業者の平均年齢は65.8歳にまであがりました。

 建設業でも就労者不足や高齢化が叫ばれていますが、農業はさらに輪をかけて大変な状況。

 そして今後これに日本のTPP参加などの条件が加わると、農業を取り巻く環境は更に悪化することが予想されるというわけです。


      ◆    


 そこで着目されているのが、労働生産性を向上させる農業のIT化であり具体的にはロボット技術と言うこと。

 農業用ロボットを導入することで、一人でやっていた作業を一気に省力化し、逆に言うと一人でやれる作業を大幅に拡大させることが期待されます。

 既に安倍政権になってからの昨年6月7日に閣議決定された科学技術イノベーション総合戦略や、同じく6月14日に閣議決定された日本再興戦略においてもこのことに関する記載があり、国を挙げて注目している分野なのです。

 既にロボットトラクターやロボット農薬噴霧機、ロボット収穫機などが試作されており、水田の水面上で除草剤を撒くロボットボートなどもあります。

 高性能のGPS受信セットを設置してハンドルやギヤを自動化したロボットトラクターならば、あらかじめ敷地の情報とGISマップで走るべきルートをインプットしておけばそのとおりに走らせることができ、水田での耕うんや代掻き、畑の整地や肥料・種まきなどを行うことが実験段階では可能になっています。

 自動化されるとすごいと思ったのは、例えば人間のオペレーターでは何も見えない夜間でも、指示さえしておけば勝手に作業をしてくれて朝には耕されているなんてこともできてしまいます。

 また農作業の中で一番やっかいなのは除草ですが、種を植えた場所をピンポイントで記録しておくことで、土をかき回す装置で除草するときに種を植えた場所の周辺だけ避けるということも実験ではやれています。

 農業にはなんともすごい未来が待っているものです。


     ◆     


 もっとも、まだ衛星からの通信環境は不足感があるうえに、外国の衛星に頼る不安定さも指摘されています。

 そこで日本として精密誘導に対する社会インフラの一つとして、準天頂衛星「みちびき」に大きな期待が寄せられています。

 2010年に一機が打ち上げられていますが、これを今後2019年までに三機を追加して打ち上げ、四機体制になれば極めて安定した衛星測位システムが完成するそうです。

 さらにそれらは日本からオーストラリアまでの上空を非対称の8の字を描いて移動するので、東南アジアからオーストラリアにかけても日本の農業ロボットを売り込む可能性も見込まれます。

 情報インフラが新しい産業を生み出し、人口減少という変化に対応した社会への転換を支えるという興味深い事例です。

 農業用ロボットは、耕地面積の広い北海道こそ真っ先に導入の価値があり、また地元の意欲も強いそう。

 無人のロボットが畑を動き回る風景が一つの観光要素になる日も近いかも知れませんぞ。
 

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