65歳になる直前に年金関係の書類が届きました。
65歳になると年金が受給できるということになっていますが、ここにはちょっと誤解があります。
65歳になれば皆年金をもらわなくてはならない、のかと思うとそうではありません。
年金は支給基準が65歳ですが、経済状況が苦しくて早くもらいたければ満60歳以降に「繰り上げ受給」を希望すれば、基準支給額よりも『一か月あたり0.5%×早くなる月数』だけ減額(仮に12カ月早めれば0.5%×12=6%の減額)されますが受け取れます。(ただし、その額は一度支給を開始すれば生涯変わりません)
逆に65歳以上でも一定の収入や資産があって当面年金収入に頼らなくても良いのなら「繰り下げ受給」という形で受け取らずにいれば、こちらは基準支給額よりも『一か月あたり0.7%×遅くなる月数』だけ増額となります。
ただこれも、老齢基礎年金(昔の国民年金)はそのとおりでも、厚生年金は(50万円くらいの)一定の収入があればそれは"年金不支給"となって、繰り下げても増額にはなりません。
令和5年の老齢基礎年金は月々6万6千円くらいですが、収入があって1年間支給を我慢すれば、0.7%×12か月=8.4%の増額(66,000円→約71,500円)になります。
これからの時代は、高齢者でも適正なお給料をいただいてできるだけ年金受給を遅らせつつ自らも年金保険料を負担し続けることが次世代の負担を少なくし、年金財政を守ることに繋がるということです。
そのため政府としても定年年齢を70歳にするなど、高齢者にもできるだけ働き続けてもらえるような環境づくりに努力しています。
歳を取ったら働きたくない、というのならその段階で年金を受給して悠々自適の暮らしに入るという選択ももちろんアリです。
健康や趣味や人生の時間の使い方など様々な要素を考えて人生を選択 するうえで、最後の頼りの年金は上手に支給を受けることが必要です。
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さて、そんななか、気になるネット記事を目にしました。
それは、上記の年金の「繰り下げ需給をすることで増額になる、ということを鵜呑みにして絶望したお年寄り」というものでした。
記事によるとその方は、
①繰り下げ需給での増額に期待して繰り下げ限度の75歳まで受給せずに我慢した
②ところがそれから需給を受けたところ、残りの平均余命を計算すると、トータルでもらえる年金が早くもらい始めた時よりも少ないことに気が付いた
③もらわなかった分は取り返せないので絶望した
…という趣旨の記事でした。
その記事の趣旨は、「繰り下げ需給を行ったとしても必ずしも得をするとは限らない(ので注意しなさい)」ということでした。
それは、「人には寿命があって年金を受け取れる期間は限られている」のであって、日本人の平均寿命は男性で81歳程度、女性では87歳程度ということから、老後に年金を受け取れる期間は一般に15年~20年程なのだ、と。
年金を生涯の総額で「損した、得をした」というのはちょっと違和感があります。
年金の意味は収入における保険であって、年金を受給しなくても済む状況に恵まれるならそれはそれでハッピーなこと。
いつまでもらえるかという自分の寿命は自分でもわかりません。
もちろん平均余命どおりに死ぬなどということもありません。
なので、何歳まで生きれば得だとかその前に死んだら損だ、という議論そのものがあまり意味がありません。
労働などによる収入の道が途絶えたときに、最後に月々の暮らしを支えてくれるのが年金なので、できるなら繰り下げて増額をしたうえでそれを生涯にわたって受給すれば良いのです。
年金を「いつからもらえば得だ、損だ」という議論で惑わされることがありませんように。