北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

日本復活のカギは「生産性の向上」しかないみたいです

2016-08-28 18:55:04 | Weblog

 ある勉強会で、デービッド・アトキンソンさん(以下「アトキンソンさん」)の講演を聞きました。

 デービッド・アトキンソンさんは、1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学で日本学を専攻し、卒業後は世界的な証券会社に入社。的確な分析で「伝説の金融アナリスト」として注目を浴びましたが、42歳の時にゴールドマン・サックス証券会社を退社。

 日本文化を深く学びたくて京都に家を建て、茶道に没頭していたアトキンソンさんですが、軽井沢の別荘が隣り合わせだったという縁で、小西美術工藝社に関わるようになり、経営に携わります。

 小さな工芸品から日光の建造物をはじめ、国宝、重要分解材まで漆工芸の修理を幅広く請け負う小西美術工藝社ですが、アトキンソンさんが驚いたのは経理も在庫管理も丼勘定で経営が不安定だったこと。そこで独自の感覚で経営を改革し、生産性を高め利益を一気に拡大したのでした。

 歴史的文化財の修理・復元なんて、ともすると日本人ならば、「気合と浪花節でやれ!利益は後からついてくる」なんて言いそうなものですが、『そういうふわふわした感覚が正しい経営の目を曇らせている。ちゃんとしたまともな経営をしてちゃんと儲けて社会に貢献しなくちゃだめ』というのがアトキンソンさんの主張です。

 【身勝手な日本人が、日本の国宝をダメにする(東洋経済ONLINE)】
 http://bit.ly/2bQDk35


          ◆  


 アトキンソンさんは日本での経験を踏まえて『新・観光立国論』を著すなど、辛口ながら日本シンパとして応援をしてくれているので、彼の意見は傾聴に値します。

 今日の講演では、まず日本のGDPを取り上げました。
「日本はかつて世界第二位の経済大国と言われていて、国ごとのGDPは中国に抜かれて現在は世界三位になりました。しかしながら今でも皆さんのうちの多くは、『まあそういうがまだ日本は世界の経済大国だ』と思っているかもしれません」

「しかし日本には1億二千万人の人口がいるからこその500兆円のGDPといえます。人口一人当たりのGDPで言うと、日本は世界26位で先進国中最下位、アメリカの五十州と比較しても49位の州と同程度です」

「最近は日本人がノーベル賞を取ることが多くて誇らしいのですが、それも人口一人当たりのノーベル賞で比べると、日本は全体で40位、科学部門のノーベル賞で比較しても29位です。人口の少ないイギリスはもっとノーベル賞をもらっています
 ※人口1千万人あたりで日本は1.76個(科学部門で1.52個)
 ※イギリスは17.3個、化学部門では12.5個」

「日本の経済力や国力の潜在力はこんなものではないとかねがね思っていますが、それを真に発現させるには、生産性を上げるしかありません。生産性の低い部門を残しているから日本は先進国でも最低の経済成長率しか上げられない。これを脱却して経済成長しなければ、少子高齢化がいよいよ進んだ時に配分するだけのお金が稼げないことを意味します。『必ずしも経済成長なんてしなくてもいいんじゃないか』という意見は全く間違いです」

 アトキンソンさんは「人口が減るからといって移民を入れるというのはこれも全く間違いです」と言い切ります。「貧困をそのままにして、今いる国民の生産性を上げずに移民を入れるというのでは本末転倒です」


         ◆  

 アトキンソンさんのキーワードは「生産性の向上」です。

「日本は効率性をきちんと考えていない。日本型経営とか日本型資本主義というのは、人口が激増していた時代にマッチしていたやり方ですが、人口が減少局面に入った今、それと同じことをしていたのでは国は衰退します」

「生産性とはイコール給料のことです。海外先進国は人口は増えなくても給料を上げることで生産性を向上させている。しかし一人の経営者として考えた時に、『給料を上げろ』と言われたら生産性を向上させるしかない。それには株価をあげなくてはだめなんです」

「国の株価を上げようと思うと、国の中心の株価が上がらなくてはだめ。という事は東京、つまり上場企業の株価が上がらないとダメ」

 

「日本のバブル崩壊は相当なトラウマでず、だから株価が上がらなくても平気なのかもしれない。しかし海外でもリーマンショックなどバブル崩壊はありましたが、そこから企業は盛り返してちゃんと株価を上げている。それが日本はできていない」

「アメリカでは主要な株主は政府系金融機関です。そして株主として企業の株価が上がるようにプレッシャーをかける。そうすると企業は賃金を上げるしかないんです」
 
          ◆  


 アトキンソンさんがあげた生産性向上のターゲットの第一が「観光」。

「訪日外国人旅行者による宿泊、食事、物品購入等の観光収入を対GDPでみると、世界平均が1.61%であるのに対して日本はわずか0.41%、世界ランキング129ヶ国中126位と極端に低い数字となっている。これより低いのは戦争などで治安が最悪の国しかないんです」

 次にあげたのが新たな輸出。日本の農産品はもっと売れるのに、売り込みができる人がそれをやっていない、のだと。

「私の会社で言うと、日本産の漆は生産が1トンしかなくて、中国から50トンを輸入して使っている。品質や持ちが全く違うのに日本の漆が高くて売れない。日本の漆産業を復活させて、これを十年で中国からの輸入をゼロにしてやりたいと思っています(笑)」 

 アトキンソンさんが試算した日本の適正なGDPは770兆円なんだそう。それが500兆円レベルにとどまっているのは、生産性が相変わらず低いままだから。

 こういう文脈で語られているのが政府方針としての「生産性向上」であり「賃金の上昇」だということがわかります。様々な業種においても、どうやって生産性を向上させて、どう稼ぎ、業界の賃金をどう上げるかを考えるべきですね。

 生産性の向上は日本のこれからのキーワードなのです。


 ※ちなみにこちらも参考になりますよ。
 【「日本われぼめ症候群」の深層】  http://bit.ly/2brFx12 

コメント
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