朝から出入りの激しい一日。こういう日もあるものだ。
さて今日は、
■北海道観光戦略の会議 の1本です。
【北海道観光戦略の会議】
午前中から北海道の観光戦略を構築しようという会議に組織を代表して参加する。観光の様々な側面のお話が聞けて有益な思いだった。
会議の座長は観光の世界では定評のあるFさんで、あとは観光カリスマからアウトドアの代表、マスコミ系、官公庁、外郭団体、輸送業界、旅行業界などからの代表のそうそうたる顔ぶれである。
自己紹介など一連の儀式を終えてから、まずは始めに事務局から北海道観光の現状分析の説明を受ける。
旅行形態が団体旅行の割合が年々減り、小グループや個人旅行が増えているという実態、北海道への旅行者数もここ数年減りつつあるというデータ、客単価は全国の他の地域に比べて一番低い実態、そのような中で外国人観光客は年々増えつつあること…などを細かく説明をしてくれた。
総じて、大衆を相手にしてドカンと運んでそそくさと観光地を行き過ぎ、ドカンと食わせてきたこれまでの路線を転換しなければ、ニーズが多様化して現状に不満を持ちつつあるお客さんが離れつつあるということを示しているようだ。
各参加者の話になって、まず道東の観光カリスマのOさんからは、「データよりも客単価はもっと低い印象を持っている。道東への旅行が奮わない理由は、北海道への航空路線が新千歳空港に集中しているからだ。道東へ来るのに、新千歳から大型バスで何時間も揺られてやっとたどり着く行程になる。そして団体相手の食事、大人数への同水準待遇をする、というやり方が曲がり角に来ている。打破するためには道東に核的空港が必要なように思う。また、地方レストランの充実も図る必要がある」とのこと。
新千歳だけで良いと思っていてはいけないのかも知れない。
アウトドア会社の社長であるSさんからは「北海道で体験観光を、ということで一時修学旅行需要が伸びたのですが、最近はまた減少傾向にあります。それは本州でも長野県や新潟県での受け皿が増えたこともあると思います。逆に北海道にはアウトドアの受け皿が弱いのです。ラフティングが人気と言っても年間100日しか稼働しないので、通年でガイドを雇用しきれないのです。北海道に残って欲しかったけれど、結局通年雇用出来なくて本州へ帰り長良川や利根川で起業した人もいるくらいです」とのこと。笑えない現実だ
さらに「アウトドアへの過大評価もあるかもしれませんね。受け皿が弱いという事で言えば、体験農場という需要もありますが、ほとんどは道東のある農場で受け入れてもらっています。そこは北海道で一番農業体験をさせてくれるところですが、そこの農場面積が350ヘクタールです。では2番目はどうかというと、面積が5ヘクタールしかないのです。これが1位と2位の差という現実です。」むー、これが現実か。
「白神山地も世界自然遺産に指定されて2年目までは旅行ツアーが組まれましたけれど、3年目に激減して、4年目にはツアーがなくなってしまいました。もとからある程度の観光地だった知床はそんな風になるとは思いませんが、白神山地がそんなことになった原因は、ガイドの不足です。ほとんどがアルバイトで需要を受けきれなかったのです。また、インバウンド(=外国人観光客)相手にしても、言葉が通じない、食事が同じなどの不満が出ています。九州はそうやってもう飽きられつつあります。北海道がそうならないためには、看板・サインと言葉が大事だと思います」とのこと。観光地ならばそうなのだろうな。
* * * *
マスコミ系のHさんは「これからのマーケットを道内・道外・外国とわけて考えると、道内客は減るだろうし、道外は分からない、外国は増える、という図式が見える。最近は北海道競馬を馬文化として大事にしたいと考えている」とのこと。そう、賭け支えの精神が必要だと主張する。
運輸局からは「他の地域と会議をすると『北海道の知名度が羨ましい』という声が聞かれるが、なぜそれが生きないのか」という問題提起。
「Oさんの千歳集中の弊害はその通りで、道東へのチャーター便は増えつつある。しかし降り立った空港でのC.I.Q《C=(税関:Customs)I=(出入国管理事務所:Immigration Office)Q=(検疫所:Quarantine)の略》の能力が不足していてなかなか国内へ入れない。関空で入国をしてもらって、そこからの国内便がもっと安くできないのか、という考え方もある」とのこと。我々は入国の厳しさ・不便さにほとんど気づいていないのではなかろうか。
さらに「中国人エージェントにホテルを見せると、部屋をぱっと見て『ここはダメ』、『あ、ここはいい』とチェックしているんです。何が良くて何が悪いのか、と良く聞けば、天井に梁があってその下にベッドの頭が来るところは風水上だめだと言っているらしいのです」そんなこともあるんだ!ふーん。
札幌市からは「シニア層の誘客に力を入れたい。現在は訪問客の平均滞在日数が1.7日ですが、これをなんとか2日にしたいと思っています。そのためにはススキノだけに頼らずに、夜の観光に力を入れたいと思っています」と説明。すかさず座長のFさんから「北海道は都市観光にほとんど力が入っていませんね。いろいろな意味で【夜の観光】を考えるべきでしょう」とつっこみが入りました。
* * * *
そのほかにも、「札幌シティガイドが好評だ。全道展開したい」、「沖縄はリゾートというイメージがかなり定着してきたが、北海道のこれだ!というイメージが希薄だと感じる」
「マーケティング戦略などというのは製造業ではあたりまえの話で、もっと真面目にやらなくてはダメ」、「個者の努力で売り上げをアップしてその総体がアップするというのはもう無理。適正な競争と同時に連携とコラボレーションが大事」というような意見が出ました。
さて、私からの発言です。「北海道開発局では道路・河川を始め多くの公共インフラを整備していますが、それらはやはりまだ観光を内部目的化することが難しいのが現状です。観光のために○○を作るということは言いにくいですし、観光の目的となるコンテンツを自ら作り出すというのは無理でしょう。しかし、これまで作り上げてきたインフラを積極的に利用してもらうようなことはインフラ整備の関連事業としてやれる可能性があると思います。」
「例えばシーニックバイウェイなどでも、道をキーワードとして地域が連携して景観を守り育てたり、地域に活気が生まれるという効果を生み出しています。自治体同士というのは案外ライバル関係にあるので、実質的にNPOだったり市民団体が連携の主人公になるでしょう」
「道の駅も人気のアイテムとなりましたが、ビジネスとして独り立ちさせるために今年からスタンプ帳を有料にしました。昨年まで実質40万冊が出回っていたものが、さすがに減少したようですが、派生的なビジネスを生み出すためには採算性をしっかりと確保すると言うことは重要です。また道の駅ネットワークを情報ステーションとして強化することも、利用者にも地元にも有益で、道の駅に対する新たなてこ入れの時期なのかもしれません」
…と言った発言をしました。
これまでは観光担当と言えば旧運輸省、という思いが強くて、わが組織はどちらかと言えば、観光に対しては役に立ちうる施設を整備・管理していたにもかかわらず低いマインドにとどまっていたと言えるだろう。
そのため観光に関する実績もなく、組織も育たず、したがって実績は生まれない…という鶏と卵の論理から抜け出せずにいたのだと思う。
旧運輸省=現在の国土交通省運輸局が担当する観光分野は大きなものがあるが、我々インフラづくりを担当する者にとっては、そこに関わりながら観光に寄与出来る面も多いに違いない。
手探りでもやれることから実績を作り、それを組織や新しい事業につなげて行くという、前向きの気持ちと一歩の踏み出しが必要なのではなかろうか。
思って、実践することが必要なのだ。
さて今日は、
■北海道観光戦略の会議 の1本です。
【北海道観光戦略の会議】
午前中から北海道の観光戦略を構築しようという会議に組織を代表して参加する。観光の様々な側面のお話が聞けて有益な思いだった。
会議の座長は観光の世界では定評のあるFさんで、あとは観光カリスマからアウトドアの代表、マスコミ系、官公庁、外郭団体、輸送業界、旅行業界などからの代表のそうそうたる顔ぶれである。
自己紹介など一連の儀式を終えてから、まずは始めに事務局から北海道観光の現状分析の説明を受ける。
旅行形態が団体旅行の割合が年々減り、小グループや個人旅行が増えているという実態、北海道への旅行者数もここ数年減りつつあるというデータ、客単価は全国の他の地域に比べて一番低い実態、そのような中で外国人観光客は年々増えつつあること…などを細かく説明をしてくれた。
総じて、大衆を相手にしてドカンと運んでそそくさと観光地を行き過ぎ、ドカンと食わせてきたこれまでの路線を転換しなければ、ニーズが多様化して現状に不満を持ちつつあるお客さんが離れつつあるということを示しているようだ。
各参加者の話になって、まず道東の観光カリスマのOさんからは、「データよりも客単価はもっと低い印象を持っている。道東への旅行が奮わない理由は、北海道への航空路線が新千歳空港に集中しているからだ。道東へ来るのに、新千歳から大型バスで何時間も揺られてやっとたどり着く行程になる。そして団体相手の食事、大人数への同水準待遇をする、というやり方が曲がり角に来ている。打破するためには道東に核的空港が必要なように思う。また、地方レストランの充実も図る必要がある」とのこと。
新千歳だけで良いと思っていてはいけないのかも知れない。
アウトドア会社の社長であるSさんからは「北海道で体験観光を、ということで一時修学旅行需要が伸びたのですが、最近はまた減少傾向にあります。それは本州でも長野県や新潟県での受け皿が増えたこともあると思います。逆に北海道にはアウトドアの受け皿が弱いのです。ラフティングが人気と言っても年間100日しか稼働しないので、通年でガイドを雇用しきれないのです。北海道に残って欲しかったけれど、結局通年雇用出来なくて本州へ帰り長良川や利根川で起業した人もいるくらいです」とのこと。笑えない現実だ
さらに「アウトドアへの過大評価もあるかもしれませんね。受け皿が弱いという事で言えば、体験農場という需要もありますが、ほとんどは道東のある農場で受け入れてもらっています。そこは北海道で一番農業体験をさせてくれるところですが、そこの農場面積が350ヘクタールです。では2番目はどうかというと、面積が5ヘクタールしかないのです。これが1位と2位の差という現実です。」むー、これが現実か。
「白神山地も世界自然遺産に指定されて2年目までは旅行ツアーが組まれましたけれど、3年目に激減して、4年目にはツアーがなくなってしまいました。もとからある程度の観光地だった知床はそんな風になるとは思いませんが、白神山地がそんなことになった原因は、ガイドの不足です。ほとんどがアルバイトで需要を受けきれなかったのです。また、インバウンド(=外国人観光客)相手にしても、言葉が通じない、食事が同じなどの不満が出ています。九州はそうやってもう飽きられつつあります。北海道がそうならないためには、看板・サインと言葉が大事だと思います」とのこと。観光地ならばそうなのだろうな。
* * * *
マスコミ系のHさんは「これからのマーケットを道内・道外・外国とわけて考えると、道内客は減るだろうし、道外は分からない、外国は増える、という図式が見える。最近は北海道競馬を馬文化として大事にしたいと考えている」とのこと。そう、賭け支えの精神が必要だと主張する。
運輸局からは「他の地域と会議をすると『北海道の知名度が羨ましい』という声が聞かれるが、なぜそれが生きないのか」という問題提起。
「Oさんの千歳集中の弊害はその通りで、道東へのチャーター便は増えつつある。しかし降り立った空港でのC.I.Q《C=(税関:Customs)I=(出入国管理事務所:Immigration Office)Q=(検疫所:Quarantine)の略》の能力が不足していてなかなか国内へ入れない。関空で入国をしてもらって、そこからの国内便がもっと安くできないのか、という考え方もある」とのこと。我々は入国の厳しさ・不便さにほとんど気づいていないのではなかろうか。
さらに「中国人エージェントにホテルを見せると、部屋をぱっと見て『ここはダメ』、『あ、ここはいい』とチェックしているんです。何が良くて何が悪いのか、と良く聞けば、天井に梁があってその下にベッドの頭が来るところは風水上だめだと言っているらしいのです」そんなこともあるんだ!ふーん。
札幌市からは「シニア層の誘客に力を入れたい。現在は訪問客の平均滞在日数が1.7日ですが、これをなんとか2日にしたいと思っています。そのためにはススキノだけに頼らずに、夜の観光に力を入れたいと思っています」と説明。すかさず座長のFさんから「北海道は都市観光にほとんど力が入っていませんね。いろいろな意味で【夜の観光】を考えるべきでしょう」とつっこみが入りました。
* * * *
そのほかにも、「札幌シティガイドが好評だ。全道展開したい」、「沖縄はリゾートというイメージがかなり定着してきたが、北海道のこれだ!というイメージが希薄だと感じる」
「マーケティング戦略などというのは製造業ではあたりまえの話で、もっと真面目にやらなくてはダメ」、「個者の努力で売り上げをアップしてその総体がアップするというのはもう無理。適正な競争と同時に連携とコラボレーションが大事」というような意見が出ました。
さて、私からの発言です。「北海道開発局では道路・河川を始め多くの公共インフラを整備していますが、それらはやはりまだ観光を内部目的化することが難しいのが現状です。観光のために○○を作るということは言いにくいですし、観光の目的となるコンテンツを自ら作り出すというのは無理でしょう。しかし、これまで作り上げてきたインフラを積極的に利用してもらうようなことはインフラ整備の関連事業としてやれる可能性があると思います。」
「例えばシーニックバイウェイなどでも、道をキーワードとして地域が連携して景観を守り育てたり、地域に活気が生まれるという効果を生み出しています。自治体同士というのは案外ライバル関係にあるので、実質的にNPOだったり市民団体が連携の主人公になるでしょう」
「道の駅も人気のアイテムとなりましたが、ビジネスとして独り立ちさせるために今年からスタンプ帳を有料にしました。昨年まで実質40万冊が出回っていたものが、さすがに減少したようですが、派生的なビジネスを生み出すためには採算性をしっかりと確保すると言うことは重要です。また道の駅ネットワークを情報ステーションとして強化することも、利用者にも地元にも有益で、道の駅に対する新たなてこ入れの時期なのかもしれません」
…と言った発言をしました。
これまでは観光担当と言えば旧運輸省、という思いが強くて、わが組織はどちらかと言えば、観光に対しては役に立ちうる施設を整備・管理していたにもかかわらず低いマインドにとどまっていたと言えるだろう。
そのため観光に関する実績もなく、組織も育たず、したがって実績は生まれない…という鶏と卵の論理から抜け出せずにいたのだと思う。
旧運輸省=現在の国土交通省運輸局が担当する観光分野は大きなものがあるが、我々インフラづくりを担当する者にとっては、そこに関わりながら観光に寄与出来る面も多いに違いない。
手探りでもやれることから実績を作り、それを組織や新しい事業につなげて行くという、前向きの気持ちと一歩の踏み出しが必要なのではなかろうか。
思って、実践することが必要なのだ。