駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『STEPS ON BROADWAY 2nd season』

2018年07月16日 | 観劇記/タイトルさ行
 浅草ロック座、2018年7月15日17時。

 ※今回、18禁というか、ややアレかもしれない話題を含みます。…まあ、でも、いつもか。あと、毎度のことですが前置きが長いです。

 確か二年ほど前に、誰だったかお友達から、
「ストリップって行ったことあります?」
 と聞かれて、それがまた「行ったことくらいありますよね?」みたいなニュアンスで、でも行ったことはなくて、申し訳ない不甲斐ない…みたいに感じた記憶が、あります。パリのムーランルージュとかは25年くらい前に旅行したときにさも観光客として観に行ったかと思いますが、あまり覚えていませんでしたし、このときの話題はあくまで日本の、いわゆるロック座とかの(思えばこの名称程度の知識は当時もあったのだな…)ストリップのことだと思えたので、すみません観劇経験ございません、となったのでした。女性客も多くて綺麗でおもしろいですよ、みたいなことも言われたかと思うのですが、そのときは食指が動きませんでした。
 私は子供の頃、商店街にある店舗の二階に間借りして住んでいて、両親は店員として働いていて、普段遊ぶ友達はみんな「お店屋さんの子」、という「町っ子」でした。メインの通りから一本奥に入ると飲み屋街もあって、「♪ロンドンロンドン、愉快なロンドン」とかの呼び込み音楽が流れているような、古いグランド・キャバレーのノリがまだ残るようなタイプのキャバレーとか(入ったことがないのであくまでイメージですが)、カラオケの歌声が漏れ流れるスナックなんかもけっこうありました。うちの父親は会社でのつきあいとかでの外飲みを嫌うタイプの人間だったので、こうしたお店にはあまり縁がなかったようで、子供心にそれらは「どこかよその大人の男性、おっさんの領域のもの」というイメージを持っていたかと思います。
 その町にはストリップ劇場みたいなものはありませんでした。だから私の浅薄なイメージは、昔のドラマとか映画とかでちらりと出てくるような場末のもので、劇場は薄暗くて汚くて臭くて、隅に泥酔して寝込んでいるおじさんがいたりそのまま寝小便しちゃってたり、踊り子さんがまだ踊っているのに早く脱げとヤジを飛ばしたりなんならその場でマスかいてたりする…みたいなものでした。映画館で隣に座ってきた男性に脚をなでられる、程度の痴漢には遭ったことがありましたし、子供ながらに暗いところは性的で危ない、怖いというイメージはどうしてもあったかと思います。
 社会人になってから、歌舞伎町のキャバクラから銀座のクラブまで会社の先輩にくっついて仕事で行くこともありましたが、自分は女性でありそうしたお店の、というかそこで働く女性たちの本来のお客ではない気がする、というある種の引け目を感じて、全然楽しくありませんでした。私はバレエとかフィギュアスケートを観るのが好きで、それは舞台の演目を楽しんだりスポーツ競技としてのプログラムを楽しんだりする一方で、鍛錬された肢体を見て堪能するという要素が確実にあるな、という自覚はあったのですが、それはやはり舞踊演劇とかスポーツのジャンルの中でのことで、かつお衣装が付いていてのことですし、身体そのもの、つまり裸体が提供されるとなると、どうしても最終的には目的が性的なものになるように感じられて、でも私はそれこそバレエでもフィギュアスケートでも男性舞踊手や男性選手より女性舞踊手・女性選手を見るのが好きなんですけれど、それは私が好きな男以外の男はだいたい嫌いというタイプの女であって、あくまでシスジェンダー・ヘテロセクシャルの女性なので、言い方が良くないかもしれませんがこういう、女が売って男が買う場において女の客としてどう存在していればいいのかわからなくてとまどう、という気持ちがずっとあったのでした。売春ではない、んだけれど、でも広い意味では、売り物にしているのは色、ですよね?という…
 そういう混乱というかとまどいがずっとあって、なかなか動けないでいたのでした。

 そのうち、この数か月ほどのことかと思うのですが、浅草ロック座の演目がブロードウェイ・ミュージカル縛りになっていておもしろいんだよ、というツイートを見たり、女性が初めてストリップ観劇に行ったときのブログ記事へのリンクツイートなんかが流れてきたりで、今度は「へえ、行ってみようかな」と思えたのでした。歳をとって厚顔になってきましたし、変な度胸が出てきたというか、旅の恥はかき捨てみたいなこともできるようになってきたので、たとえおじさま方からジロジロ見られたりしても無視できるだろうし、絡まれたら言い返すとか触られたら席を立つとか暴れるとか通報するとか、対処もできるだろう、いっちょ覗いてくるか、と思ったのです。そうしたら、「以前一度見たこととがあって、おもしろかったですよ。ご一緒しましょう」と声をかけてくれるお友達がいたので、出かけてきたのでした。
 現地で待ち合わせしたのですが、前の回を見終えた観客が出てくるところにちょうど居合わせ、お若いお嬢さんふたり組みたいなのを3組くらい見かけ、お友達を待っている間にも2組ほどがチケットを買いに階段を上がっていって、本当に女性客が意外にいるんだな、と感じました。
 階段を上がったらチケット売り場、すぐモギリ、狭いロビーがあって小さな映画館みたいな感じ。こういうものはなんとなくガラガラでさびれたもの…という思い込みがありましたが、休日だったからか客席はすでに六割ほどの入りでけっこう席が埋まっており、最後列どセンターという演出家席かい、みたいなところに陣取ってみました。
 舞台は本舞台と、真ん中にランウェイのように花道が突き出ていて、その先に直径1.5メートルほどの盆があって、そこでの踊りは「ベッドショー」と呼ばれているようなので、そこをベッドと呼ぶということなのでしょうか。女性も多いしカップルもいるし若い男性も多く、飲んだくれてくたびれた臭いおじさん、みたいな人はまったくいませんでした。ジロジロ見られたり絡まれたりすることもなく、そのうちほぼほぼ満席になって、開演しました。

 …感動しました! てかめっちゃ楽しかった! また行きたい! すぐ行きたい! リピートしたい! 宝塚歌劇同様お約束拍手の位置があってそれはすぐ学習できましたが、楽曲ごとの手拍子を覚えて参加したい盛り上げたい! だってバラパラ(古い)みたいな振りを一緒にやってる常連さんっぽい人いたもん! アレやりたい! まざりたい!
 ブロードウェイ・ミュージカルの曲を使ってそのイメージで踊る部分もありますが、全然違う曲が続くこともあるし、なのでこれは物語を見るミュージカルではなくてあくまでダンスと身体を見るショー、レビューなのです。ならただ席におとなしく座っているだけじゃなくて、拍手で感動を伝えたいし手拍子で盛り上げたい、という性が発動してしまったのでした。というか本当にフツーにおもしろかった! ダメな表現だけど!!

 演目は1景(という言い方をするんだそうな)が『Kinky Boots』、大見はるか。2景は『CATS』、みおり舞。3景は『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』、中条彩乃、4景が『CABARET』、赤西涼。10分の休憩を挟んで(演目解説のナレーションが替わりたいくらいたどたどしくて漢字も読めてなかったんですけれど、おそらくあれが味なんですよね…?)、5景『コーラスライン』真白希実、6景『シスターアクト』ゆきな、7景『エビータ』夏木りりか、8景『CHICAGO』真白希実。そしてフィナーレ付きの100分でした。豪華!
 なんせ知っている曲ばっかりだし、イメージどおりのお衣装を着てくれるし、キャッツなんて本当にバレエとして美しかったし、バックダンサーも素敵だし、目が足りない!
 てかオペラ持ってくればよかった!と思いました(笑)。これはご贔屓ができた方が楽しいだろう、とすぐ思ってしまったんですよね。で、好みのスタイルの持ち主、とか好みのダンスをする人、というのはすぐわかるし識別できるようになるんだけれど、顔がもっと見たかったんです。でもわりと薄化粧で、識別がしづらく感じたのでした。というかなんでも宝塚歌劇と比較して考えてすみませんが、お衣装とか踊る世界観は完全にミュージカルの非日常ファンタジーなので、お化粧ももっと宝塚ばりに濃くして浮き世離れして見えた方がいいし、もっと美人にしちゃってもいいのに、と思ったのです。でも男性はナチュラルメイクが好き、というアレなのか!?とも思いましたが…わりとファニーフェイスに見える方が多かったので、余計にそこはとまどいました。美人慣れしていてすみません。しかしそれからすると宣材写真は修正しすぎだろう…(笑)
 あと、意外にみんな笑顔が硬い。必要以上にエロティックで扇情的な表情を作るとかはしていなくて、上品な笑顔で、それはAVみたいでなくて本当によかったのですが、宝塚の笑顔度って逆に特殊なんだなと思いました。でもどんなに下級生でももういつでもものっすごい笑顔を作れるように訓練されているじゃないですかタカラジェンヌって。あの笑顔はすごい、あれだけ笑いかけられて初めてこっちもテレずに微笑み返せるんだな、と思いました。私は本当に感心したし感動したので終始笑顔だったと思うのですが、踊り子さんの笑顔が硬いとなんかこっちだけがヘラヘラしていて失礼に当たるような気がして、ちょっと居心地悪く感じてしまったのでした。踊り子さんは女性客の反応なんか気にしちゃいないよ、ということならそれまでなのですが…これは特に最初の場面でセンターだった方が序盤ほとんど笑わなかったので、それはもしかしたらローラのキャラとしてそうだったのかもしれませんが、私はなんか激しく「踊るの、嫌なの? それともやっぱり私たちみたいな女の客に見られるのは嫌なの?」と動揺してしまったんですよね…その後はそうでもなかったので安心したのですが。
 しかしみなさん身体が本当に綺麗でツルペカで、あれはドーランとかを全身に塗っているのでしょうか。それとも照明の技なのかなあ…
 また、ダンサーとかアスリートってどうしても筋肉質でスレンダーで、だから私の好みからすると胸も小さすぎるのですが、だからこそ露出されてもヘンに色っぽくなりすぎず、清潔で健康な感じがするのもおもしろかったです。男性もモデル体型よりぽっちゃりくらいが好き、とかよく聞きますし、要するにルノワールの絵くらい肉感的な方が本当はセクシーなのかもしれませんが、そういう方向では作っていない、ということですよね。
 どの場面も基本的な構成は同じで、そういう様式美があるのも私としては好みでした。まず本舞台で踊って、花道に出てきて、本舞台は幕が閉まって中で装置が入れ替えられたりいろいろしていて、その間に踊り子さんは脱いでいって、盆が回ってどこからでも見えるようになって、そこでいわゆるご開帳ポーズを次々取って、ポーズが決まるたびに拍手、というのがお約束。で、脱いだお衣装を優雅に拾って幕の向こうに去って行く…
 このご開帳ポーズが、まあ要するに開脚して局部を見せるためにするのですが、まず身体能力的にすごいわけですよ! 人間、そんなふうに脚上がるんだ!?とかそんなふうに脚開くんだ!?とかそんなふうにのけぞれるんだ!?みたいなのの連続で、柔軟性と筋力、体幹の素晴らしさに感動しちゃいました。だから自然と拍手しちゃうわけです。そういう意味では立派に見世物なのかもしれないし、それってある種の差別的な視線があるんじゃないのかなと頭の隅で困惑しなくもないんだけれど、お客が見ないと見せる人の商売は成立しないわけだし、だったら目を逸らすことなくきちんと見て真摯に向かい合わなければならない、とも思うし、冷やかしの拍手ではなく心からの感動の拍手を送りたい、とかまたついつい理屈っぽく考えながら拍手していました。
 あと、本当に神々しいし、なんかすごくありがたい。局部を見せてくれることがありがたい、ってなんなんだ、とか思うし、また実際には本当にブツはあんまり見えなくて、うまくというかなんというか、ヘアで隠されているんですけれどね。私は恥ずかしながらいい歳して自分のものを鏡で見たこともないようなへっぽこなので、がっつり見せつけられたら気持ち悪かったりしてショックかも、みたいなことも心配していたんですけれど、そんなこともまったくなかったのでした。逆についつい目でデッサンする癖で、脚の付け根ってああなっているのかとかお尻から前ってあんなふうになっているのかとか、身体の構造の観察とかをしちゃうくらいでしたよ。それくらい、なんというかドライで清潔なんです。エッチで湿っていて隠微で猥雑、という感じはない。それがこういうものとして正しいのかどうかは正直わからないのですが。でも本来性愛はごくプライベートなものでだからこそほの暗く湿っているものなのでしょうが、エンタメとしてやる以上こう振り切るしかないものなのかな、とまたまた小難しく考えたり。
 そしてアマノウズメとかもこうして裸で踊ったりなんたりしたとかしないとかの神話があったはずですが、踊りって本当に神聖だなあ神事だなあ神に奉納するものだなあ、とか思う一方で、でも旦那に水揚げされる売春みたいなものに通じるものでもあるんだよなあ不思議だよなあ芸事ってホントなんなんだろうなあ、とかもぐるぐる考えちゃったのでした。

 オードリーの赤いロングヘア・ウィッグが素敵だったことや、キャバレーから何故か『グレイテスト・ショーマン』の「This is me」になって踊る赤と黒のリゾートドレスみたいなお衣装とその扱いが絶品だったこと、シスアクのガーリーな白のドレスの絶妙さ、エビータのドラマチックさ、シカゴのヴェルマとロキシーらしき絡み、ベテランダンサーの色気と気迫と全員登場のフィナーレでその踊り子さんがひとり飾りが多いトップスター様だったこと…本当にツボでした。
 あと、前作から追加されたという『コーラスライン』の場面は、ものすごく挑戦的だったのではないでしょうか。私は休憩に続くインターミッションみたいなものかとばかり思っていました。だって脱がないんですよ言い方アレですが! オーディションの準備をしているらしきダンサーが鏡の前でひたすら自主レッスンしている様子を、顔にはライトを当てずほぼシルエットしか見えないような形で、ただひたすら見せ続ける一場面なんです。「ONE」が流れるわけでもないんですよ。すごい! 前衛的だしとてもアーティスティックだなとシビれました。

 せっかく覚えたこのお姉さんたちをまた観に行きたいけれど、次の演目はミュージカル縛りではないしキャストも全然違うようです。しばらくツイッターで演目チェックしちゃおうかな、平日夜はまた空気が違うかもしれないけれど今度はひとりでふらりと行っちゃおうかな、とか考えています。楽しい経験でした!




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