駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『ジョン&ジェン』

2023年12月20日 | 観劇記/タイトルさ行
 よみうり大手町ホール、2023年12月19日18時。

 1985年、6歳の少女ジェン(この日は新妻聖子)の家に、ジョン(この日は森崎ウィン)が生まれる。弟を温かく歓迎するジェンは、暴力を振るう父親から守り抜くことを誓う。ふたりは支え合いながら成長し…
 音楽/アンドリュー・リッパ、歌詞/トム・グリーンウォルド、脚本/アンドリュー・リッパ、トム・グリーンウォルド、演出・翻訳・訳詞・ムーブメント/市川洋二郎。1995年オフ・ブロードウェイ初演、全2幕。

 男女ふたりの俳優によるミュージカルで、キャストは他に田代万里生と濱田めぐみ。組み合わせとして4パターンあるわけですが、なんとなくこの回を選んでみました。それぞれ違った味わいがあるのかもしれません。
 が、私はちょっと退屈したかな…楽曲は複雑でしたが歌唱は素晴らしく、歌詞が聞き取れないとかもないのですが、純然たる芝居パートはほぼないので、プログラムのあらすじにあるようなドラマが私には立ち上がって見えませんでした。そういうようなことを描きたいのかなー、とは感じられはしたのですが…
 1幕は姉ジェンと弟ジョンだったふたりが、2幕では母親ジェンと息子ジョンになる、というのがミソの舞台です。ジョンはイラク戦争で戦死し(この従軍やらマッチョ化やらが父親の影響だった、とあらすじにありましたが私にはわかりませんでした…)、ジェンはそのまま恋人と結婚して息子を産み、弟にちなんだ名をつけるわけです。1幕で姉の試合に弟が応援に行きたがったときに、ジェンはジョンに自分の弟だと周りに知られないように、と釘を刺します。それが2幕になって、息子の試合に母親が応援に行きたがったとき、ジョンがジェンに自分の母だと周りに知られないようにと言う…みたいな仕掛けが何回かあり、その趣向はおもしろいとは感じました。でも、考えオチ、企画倒れみたいな気がしちゃったんですよね…
 ふたりのジョンは別人なので、全体としてはこれはジェンの物語なんだと思いますが、私は弟はいても息子を持っていないからわからないだけかもしれませんが、ジェンに共感とか感情移入できないというよりはなんかあたりまえのことをやっているだけのように見えて、おもしろく感じられなかったのです。
 父親がDV男で、おそらく早いうちに母親が家を出て、姉弟ふたり支え合って生き延びて、大学で家を出たときは羽根が伸ばせたけれど、家に戻ってすっかり背が伸びた弟に再会したら強い愛情が戻って、でも弟は戦死してしまい、自分は結婚してカナダに移る。息子を産み、その父親とは別れ、やや過干渉な母親になり、だけど息子は弟とは全然違う人間になっていき、進学で家を出、ふたりは離れる。…あたりまえでは…? それでも家族だよ、とかはもちろんあるんだけれど…だから何?というか、何故そこまで、というのが、描かれていたのかもしれませんが私には読み取れなかったのでした。
 6歳から18歳までを二度演じる森崎ウィンと、6歳から44歳までを演じる新妻聖子は、そら達者でした。舞台中央に設えられたほぼ正方形のステージに上がって歌うとき以外は、その両脇のスペースで着替えだけして、基本的にずっと観客に見える舞台上にいる、大変でしょうが鮮やかな演じっぷりで、素晴らしかったです。これは残るふたりもそうでしょう。なので芝居が、ドラマが立ってこないのはあくまで脚本、演出のせいなのではないかと思うのですが…アメリカ政治の変遷なんかまで読み取って絶賛している感想ツイートも見たので、私の感じ方の問題かもしれません、すみません。
 小ぶりなB5判でまあちゃんとした厚みはあるもののごく普通の内容、装丁のプログラムが2500円もして萎えたのが悪影響だったのかもしれません…小さい人間ですんません……







コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ねえ、ナナ ~『NANA』... | トップ | ブルスカ始めてます。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

観劇記/タイトルさ行」カテゴリの最新記事