駒子の備忘録

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柚木麻子『ナイルパーチの女子会』(文藝春秋)

2015年07月25日 | 乱読記/書名な行
 ブログがきっかけで偶然出会った、大手商社に勤める栄利子と専業主婦の翔子。よい友達になれそうと思ったふたりだったが、あることが原因でその関係は思いもよらぬ方向に…

 帯にある「女同士の関係の極北を描く」とある惹句はやや正しくないとは思いましたが、とにかく怖くておもしろくて、あわわわわとなりながら読みました。
 コミュニケーション不全みたいな問題って性別とか特に関係ないし、解決できるとか改善されるとかってことではないのかもしれないけれど、物語としては一応、希望が持てる終わり方になっているとは思うので、よかったかと思います。安易だとか嘘っぽいとかは思わなかった。人は自分や周りと折り合ってとにかく生きていかなければならないのだし、できれば幸せに生きたいものだからです。

 私はひところは「私は友達が少ないから」と、特に自虐的な意味ではなく単なる事実としてよく周りに言っていたのですが、今となっては事実ではないので口にしなくなりました。大人になってこんなに新しい友達が持てるようになったのはツイッターと宝塚観劇趣味のおかげです。呑んで食べて宝塚の話をしているだけでもその人の人柄や人生観は表われますし、それが好きになれなければ何度も会わないし、別に深い話とか今はしていなくてもいずれ機会があればするようになるだろうと思える、宝塚以外のことでも話せるであろうちゃんとした友達だと思っています。
 でもいわゆる「女友達」という意味では、確かに私も作るのが下手なタイプの子供だったかな…
 まずもって性格的にさっぱりしていて女の子らしくなかったし、兄弟は弟がひとり、隣の家には私と同じ歳の男の子を頭に三兄弟がいて、小学校に上がる前はこの五人でしょっちゅう遊んでいたのだと思います。もちろん男の子の遊びを。私は運動神経は悪いけれどおてんばでガキ大将タイプだったので、きっとボス猿のようだったのでしょう。
 もう少しものごころがつき出すと本や漫画が好きになり、自分でお話を作ったり絵を描いたりすることも好きになったので、外では男の子と元気に遊びまわって、家に帰ったらひとりでお絵かきして遊んでいる子供になりました。このころから女の子の友達もできるようになったとは思うけれど、仲良しグループみたいなものを作ることはなかった気がします。
 中学生のときに引っ越しをして、転校生に話しかけてくれる女子グループがあったので、そこで初めてそういうつきあいを知ったかも。家が近所で親同士も仲良くなったりして、私が就職で地元を離れるまではけっこう緊密でした。
 高校一年のときのクラスメイトふたりを今でも生涯の親友だと思っているのですが、当時は三人とも違うグループにいて、仲良くなり出したのはクラスが別れてからかむしろ卒業してからでした。なんとなく話が合って趣味が合って、寄り集まるようになったんですよね。その後ひとりは結婚し母親になり、お互い忙しくて数年会わないときなんかもザラにあったし、でも話が出て都合がついたらすぐ四泊六日の海外旅行に行って喧嘩もしないで楽しくすごせる、パソコンの買い替えから恋愛相談までなんでも持ちかけられる、貴重な友達です。
 社会人になると新しく知り合うのは仕事関係の人ばかりで、多少親しくなっても友達というのとは違う気もしましたし、仕事が終われば疎遠になったりもするのでなかなか難しいものです。同期の女子とも単に同期というだけですごく親しくなったかというとそんなこともなかったし。だから私は友達が全然いないけれど、何かあればなんでも言えて頼れて親身になってくれる親友ふたりがいるからそれで十分、あとは家族と、ときどきは好きな男と、仕事と趣味があって健康でいれば楽しくて幸せ、と思っていました。
 この物語の登場人物たちのような意味で「友達」を求めたり、それにこだわったりしたことは、なかったのかもしれません。幸いなことに。
 でも、私は弱虫だから、なければないですませようとすると思うのですね。ないのに欲しがるのってつらいじゃないですか。私はそのつらさに耐えられない。だからなくて平気なことにして、自分を慰める、甘やかす。そういう方に走るのです。でもそうじゃない人っているんですよね。私にはそうした人は、つらさに浸れる強さ、苦しめる強さを持っている人に見えます。だから同情しづらい、という…
 だから今回も、登場人物たちに共感するとか同情するとかはなくて、自分とは違う生き方をしている人たちのように見えてしまって、でももしかしたら生き方って意外に当人が選べるものでもないのかもしれないしその意味では同情するけれど、しかし怖い、つらい…と思いながら読みました。
 光明が見える終わり方でよかったです。あと、何より彼女たちは私よりずっと若いしな。それは明るい未来を示していると、私には思えました。


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