家事だけが取り得の主婦・冬乃と会社員の佐々井の同級生夫婦は、故郷の長野を飛び出し久里浜で静かに暮らしていた。佐々井は毎日妻の作る弁当を食べながら、出社せず釣り三昧。佐々井の後輩・川崎は自分たちの勤め先がブラック企業だと気づいていた。夫と川崎に黙々と弁当を作っていた冬乃だったが、元漫画家の妹・菫が転がり込んできて…著者15年ぶりの長編小説。
何作か読んでいる作家で、どんな内容か知らずなんとなく新刊を買い、なんとなくドロドロした愛憎ものだろうと予想していたのですが、もっとなんか不思議に凪いだ物語でした。
というか、視点人物はふたりともまったく好感も親近感も持ちづらいキャラクターで、かつ物語の前半ではまったく接点が見えず、そもそも物語自体もなんの話なのかどこへ進む話なのかさっぱり見えないまま進みます。
でもおもしろい。こういうひとっているよね、こういうことってあるよね、と思って読み進められてしまう。それだけの筆力がある。
だから物語が見えてきて組みあがっていって意外にと言うのもなんなんだけれどすごく綺麗にまとまって終わるのには、鮮やかすぎてちょっと驚くくらいでした。
綺麗すぎたかもしれない。でもこういう読書もいいな、と思いました。大人の読書だわ。
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