駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇月組『フリューゲル/万華鏡百景色』

2023年11月09日 | 観劇記/タイトルは行
 宝塚大劇場、2023年8月18日13時(初日)、9月7日18時(新公)。
 東京宝塚劇場、10月31日18時、11月7日18時。

 東ドイツの文化庁に出向する人民軍地上軍大尉であるヨナス・ハインリッヒ(月城かなと)は、世界を席巻するスーパーアイドルで西ドイツ出身のポップスター、ナディア・シュナイダー(海乃美月)を招聘したコンサートの責任者に任命される。欧州各地で巻き起こった民主化の波は東ドイツにも押し寄せており、政府は国民の不満を解消する目的で首都ベルリンでのコンサートを企画したのだ。しかも単なる親善イベントではなく、東西ドイツの行く末に関わるもので、何者かによるテロ犯行声明も届いていた…
 作・演出/齋藤吉正、作曲・編曲/青木朝子、長谷川雄大、多田里紗。1988年、ベルリンの壁崩壊に向かう激動のドイツを舞台にしたミュージカル。

 初日雑感はこちら
 組ファンとして何度もリピートすればよかった探しもできるかな、とも思うのですが、今の私のスタンスはそうではないので…おもしろくなかったというよりは、なんというのか…not for meだった、というのとも違うんだよなあ、なんなんだろうなあ…
 やっていることは、まあいいんじゃないの?と思うんですよ(毎度偉そうな物言いですみません)、ホームドラマとしても政治思想ドラマとしてもラブストーリーとしても。ただ、ものすごく凡庸だとも思いますけどね。全部どこかで見たことある話じゃないですか? オリジナリティがない、新鮮みがない。これが本当に今、齋藤先生が一番やりたいネタなの? 全然そんなふうには思えないんですけど…そのことが一番、私は嫌なのかもしれません。ファンでもなんでもないけど、もうちょっと作家としての情熱とか能力とかを買っているつもりだったので…
国境のエミーリャ』にインスパイアされたとか、ホントかよ?とかつい思っちゃうんですよねえ…だったら素直に『エロイカより愛をこめて』の版権を買えばよかったのでは…?
 脚本の日本語がちょいちょい怪しいのが気に障るし、そんな無神経さでこの時代のこの問題を扱えるものだろうか、とかつい思っちゃうんですよね。民主主義は尊いよ、でも資本主義に問題がないわけではないことは年々わかってきているんだし、社会主義を一方的に悪く見る視線には私は疑問を感じます。私は人間がまだその思想の域に達していない存在なだけなんだと考えているので…というかなんらかの主義にこだわりがあって生きる人々を描くほどには、作家になんらかの主義やこだわりが感じられる気がしないのだが…という、私の齋藤先生への不信感が目を曇らせているのかもしれません。まあ毎度ここは私の感想を書く場であってちゃんとした論評発表の場などではない、というのが私の逃げ口上なのですが、この作品をすごく好きで高く評価していらっしゃるか互いたら申し訳ございません。私はハマれなかった、という話です。
 たとえば、ミク(彩みちる)とマリア(羽音みか)なんですけど、元アスリートのスパイが外国への移動でジャージ、着ます…? あれは偽装ってことなの? というかこのふたりもちゃんとした(?)諜報部員なんですよね、ということはサーシャ(天紫珠李)脱出計画というのは公務というか、正式な任務なの? ヨナスの個人的な行動ではなくて、軍が、国家が認証していた作戦ということ? でもヘルムート(鳳月杏)たちはそれを知らないか、少なくともその趣旨に反対していて、勝手に邪魔しようとしていたということ? 部署は違えどこんな国マンセーの人がそれでいいの? というか軍での職務って任務であって「業務」とは言わないんじゃないの…?
 宝塚歌劇と現代劇との食い合わせが悪いのはよく知られたことですが(とはいえ併演のショーは上手く平成も令和も扱っているのだけれど)、またお衣装ストックの問題もあるのかもしれませんが、ミクたちが潜入した先の西ドイツの洋服屋ないし周りの人々のファッションがあんななのは、なんでなの? そして東ドイツ側でも、どんなに制限されていても隙をぬって西側の情報を手に入れているしほぼ変わらない生活をしているんだよ、ってことなんだとしてもなんでみんなあんな私服なの? リン(白河りり)とか、そういうキャラだってことなんだろうけど全然意味がわからないんですけど…絵面から的確な情報が得られなくて観客としては混乱するんですよ。少なくとも私は全然ワケがわかりませんでした。ここはいつでどこなの? これは何を意味しているの?と大混乱…
 ナディアも、なんか明確なモデルがいるそうでいかにもなファッションらしいんだそうですが、私にはそのイメージがないので、西側のスーパーアイドル・ロックスターってこんなか…?と呆然としてしまうんですよね。で、彼女が東側が用意した舞台衣装に怒るくだりがあるんだけれど、正直ダサさとしては同じレベルなので笑えないのです。というかあのお衣装も、東側が用意する衣装、というイメージを表現できてなくない? 私にはヒッピールックに見えるのですが、それってフラワーチルドレンとかアナーキズムとかには通じても、社会主義的ではなくないですか? 私の知識が偏っているか足りないだけ?
 あと何度か歌われる、彼女のヒット曲らしい持ち歌がダサいのが嫌。なんだっけ、『カンパニー』のアイドルたちの歌みたい、というツイートを見ましたが、ホンソレでそれも嫌。このときのドレスも、可愛いけど曲に合っていないのが嫌。こういう雑さがとにかく嫌。
 ヘルガ(菜々野あり)が東側の軍人を「ドーピング野郎」と呼ぶのは何故? 最初は脳筋マッチョっぽいトーマ(礼華はる)を指しているのかなとも思ったのですが、ヘルムートたちにも言うし…元アスリートに、ドーピングで勝ってたんでしょ、と揶揄するのならわかるんですが…というか東側のアスリートはみんなドーピングしてるんだ、なんて事件とか事実とかがあったんでしたっけ? それが常識として存在していないと、この別称は意味が通らないと思うのですが。単にわかりづらいだけで、邪魔では? 『IAFA』のときの「ウィンナー野郎」もだいぶ微妙だったけど、いかに蔑称とか悪口とかを書くかにこそセンスが表れるものだと私は思うんですよどーかなサイトーくん…(><)
 あとこれは演出というか演技指導の問題かもしれないけれど、ルイス(風間柚乃)の正体明かしソングで客席の手拍子を煽っておいて、前半は手拍子が要らない曲調でむしろ台詞を聞く必要があるのに手拍子が邪魔なのとか、ホント嫌。
 ヘルムートとゲッツェ(彩海せら)とのこれまでの経緯なんかを匂わせで終えているのはいいなと思いました。でもヘルムートの自殺が嫌。生徒の自死という事件があったのちの東京公演でも演出が変わらなかったことが嫌。ここにそんなにこだわりがあるはずないじゃん、てかそういう人物だって描き込まれてないじゃんヘルム…(この愛称でヨナスが何度か彼を呼ぶんだけれど、そんな関係性も描けていないのにそんなことするな、と思う。ならわかりやすさのためにずっと「ヘルムート」で通すべきだと思う)こういう人はむしろ「国家が私を裏切っても、私は国家を裏切らない」(だっけ? 何かのキタさんの台詞…)ってタイプであって、自殺なんてしないのでは?
 るねっこやれんこんはいいなと思ったんですけれどね…ああもう他に褒めるところがない…
 そうだ、あと、普通の人ってドイツ語なんてダンケシェーンくらいしか知らないのでは? なんかもっとちょいちょいいろいろ使われていて、特に前後にフォローもなく私はノー理解で、これもイライラさせられました。「♪アインス・ドイッチュラント」とかは歌詞だからまあいいとしても、さあ…

※以下追記※

 マイ楽に同伴した我が親友は、作中当時ベルリンの壁の上を走って警察に追われたことがあるとかなんとかいう猛者なのですが(笑)、長文感想メールをくれて、その中に私の今回の記事に対する解説もありましたので、許可をもらって一部加筆修正のうえ、引用転載します。

>ミク(彩みちる)とマリア(羽音みか)なんですけど、元アスリートのスパイが外国への移動でジャージ、着ます…?
 →ここは、「元アスリート」ではなくて、幼少期よりドーピング漬けで仕立て上げられた「現役の」体操選手兼諜報部員が、西側で行われる大会に派遣されるという形で諜報活動の任務を行っているのだと思います。メダルを取り、かつ諜報部員としての仕事をこなして帰国すれば国家の英雄として一生安泰。みとさんのお偉いさん女性幹部(元陸上金メダリスト)がそのロールモデルを体現していましたね。
 だからナショナルチームのジャージを隠れ蓑にして堂々と活動しているわけです。実際に東ドイツでもそういう例は多々ありました。
 ほかのロールモデルとしては、体操界の妖精「コマネチ」はルーマニアでチャウセスク大統領の息子の愛人で(のちに米国亡命)、ロシアの新体操金メダリスト「カバエバ(日本でもCMに出ていた)」はプーチン大統領の愛人になり子供を産み、国会議員になっています。彼女らもなんらかの形で西側政府高官との接触をしていたかもしれません。
 というわけで、ミクとマリアはその大会参加や諜報活動の中で、西側の豊かさに触れて、諜報部員の立場を利用して亡命を幇助するに至った、とあのお芝居の中では理解しました。しかし、普通の観客(80年代の東側スポーツ界や政界に興味がなかった人)はそんなことわかりませんよね…
 あと、三本線のジャージはアディダスから訴えられちゃうのではとちょっとビクビクしながら観ていました(せめて四本とか二本線に…笑)

>ミクたちが潜入した先の西ドイツの洋服屋ないし周りの人々のファッション<<中略>>なんでみんなあんな私服なの? 
 →えーと、これは当時の流行りのファッションにめっちゃ忠実でした( ;∀;)。そして東ドイツの若者は、その西のファッションを質の低い繊維で必死に模倣して着ていたわけです。当時の「東ドイツのジーンズ」で論文があるくらいです。ナディアのモデルであるNENAの来日時のファッションも「西側のスーパーアイドル・ロックスターってこんな」でした。
 ただし、それをそのまんま宝塚の舞台に持ってきてどうなのよという(特に若い人が見た時にどう思うのかという)思考が働かないサイトー先生に………

 以上です。
 他にも、ブランデンブルク門の周囲は当時から緑が多くてあんなにしょぼくなかった、とか、西側の壁はペンキの落書きだらけだったので、盆を回すなら東側のグレーの壁との対比を見せればよかったのに、とか、東側の反体制派の若者たちが東ドイツ旗を振っているのは、たとえれば60年安保でデモ隊側が日章旗を振り回しているようでおかしいだろう、とかの指摘もありました。なるほど、そしてもっともだ。
 で、宝塚歌劇はもうこれ以上、日本以外の史実、歴史ものをやるのはやめた方がいいのではないか、ちゃんとした校閲や時代考証の専門家を入れる気がないのなら、近く国際的な問題になって過去の作品まで凍結・封印されるのでは…というこれまたもっともな懸念も語っていました。これについては、今回の文春報道を発端とする事件より根が深い問題なのでは、と常々私も考えているので、また別途語ってみたいと思っています。

※追記おしまい※

 組子に役が多いのはいいなと思いました。そういう愛はあるタイプですよね齋藤先生って。でもぱるもうーちゃんもあのくらいのお役でいいのか?とかは思うのですよ…
 舞台に大勢人を出すわりに舞台転換やミザンスがスムースで、ストレスがないのはいいですね。こういうところには手慣れているのを感じます。フリューゲルのコロスもいいと思う。
 でも、なあ…なんか、足りないというか雑というか…貴重なオリジナル作なのになあ…と、望みすぎなのかもしれないけれど、私はわりとしょんぼりしてしまったのでした。重ね重ね、大好きだ、よくできていると思う方にはお詫びします。

 でもれいこちゃんはホント硬軟なんでも上手いよね、ヨナスも素敵な役だと思いました。
 くらげもなんでも上手いんだけど、個人的に苦手だし、こういうお役のくらげはなお苦手なので、これはもう正しい評価が下せません、すみません。スタイルがむちゃくちゃいいのは、知ってたけどそれでも毎度新鮮に感動しました。
 ちなつもなんでも上手いのでいいんですけど、新たな魅力を引き出せているお役ではなかったかもしれませんね。それはおださんも同様かな…ホント達者で、ジェンヌ人生何回目の研10なの?って感じですけどね(笑)。
 みとさんも素敵だけど、ときどきヒヤヒヤするのはなんなのかな…さち花は老け役でも、若き日の葛藤の芝居でも上手い。ぐっさんやヤスがいつもとちょっと違うようなお役をこれまた超絶上手くやっているのが頼もしい。ぺるしゃ、るおりあ、一星くんに大楠くんあたりはもう少し使えないものかねえ、とも思いますが…
 娘役は役割というかポジションがだいぶいろいろ散っている印象でしたが、それだけ中堅から若手が充実しているってことなんですよね。まのんたんはアナウンサー役をもらった他は学生モブだからなー…

 東京新公は残念ながら中止になってしまいましたが、大劇では観られたので以下簡単に感想を。
 ヨナスは初主演となったるおりあ。顔がいいのはもちろん、真面目で熱心そうで、でもまだ男役仕草がいろいろ怪しくて、そういうところも含めてとても好感が持てました。上手く育てー!
 ナディアは二度目のヒロインとなったまのん、これはもう可愛いし場数も違うので安心して観ていられましたし、こういう役作りならワガママスーパースターというキャラにも納得できるのです。歌もよかった!
 ヘルムートはあやっつぃーで、これがまたとてもよかっただけに、そうかるおりあと同期で主演しないまま新公卒業かもったいないなー…とちょっと悔しかったです。
 みとさんのところはおはねで、健闘していたけどニンじゃないかなーと感じました。おはねが生きるのはこういうところじゃないと思うのよ、てか宙組に移してどう起用しようというのよ…(><)
 おださんのところに抜擢されたのはまだ研2の雅耀くん、さすがに華があって、素直にやっているのがいい感じでした。良き逸材では?
 こありちゃんのところはみうみん、ちっさくて可愛かった!
 うーちゃんとのころの和真あさ乃くんが大きく役作りを変えてきて好感。その分ぱるのところの七城くんは埋もれたかも…? でも本公演でモブでも目立ってきていますよね、綺麗さがはっきり前に出てきたと思っています。やはり一度新公主演すると変わるなあ…そして贔屓にしている静音ほたるちゃんが美人でたまらんかったとです…! 朝香ゆららんも可愛かった。
 りりたんエミリアは上手くて絶品。少年ヨナスは研1の乃々れいあちゃん、しっかりやれていてエラい。
 みちるのところがのりんちゃんでこれまたちっさくて有能そうで良きでした。コードネームは「チノチノイチノ」…だっけ? みかこのところは澪花えりさちゃん、この人も可愛いですよね。
 まひろんの神父は手堅く、わかのゲッツェは今回は良くてほっとしました。等身大で考えられるお役でやりやすかったのかな? 大きすぎる役ばかりつくのを少し休めてあげるといいんだよね、と思います。
 ヨナスの従妹イルゼが華羽りみちゃん、この人も可愛かったです。
 サーシャがみかこで、でっかくてマジ女戦士でした。ぺるしゃのルディが天つ風朱李くんで、鬼スタイルで華があって目を惹きました。
 あとは桃歌姐さんのアンジーをやった咲彩いちごちゃんも上手い! おはねのところの彩姫みみちゃんも可愛かったです。
 まのんのアナウンサーのところは美渦せいかちゃん、そつなくやれていましたね。

 これを観ていたから、マイ楽に当たった代役祭りもなかなか味わい深かったです。
 公演前半の男役さんインフル休演、代役ラッシュがひととおりおちついたと思ったら、今度は娘役さんターンで…トップ娘役の休演となると、ウメちゃんとかミドリとかがかつてやってるんですよね? 一番観ていない時期で当時のことをよく知らないのですが…
 というわけでナディアはみちる。『エルピ』前後くらいで顔がぐっと痩せましたが、今回は緊張もあってか目がギラついていて口元の皺も深く、老けて見えて可愛くなくて仰天しました。そして代役2回目で早くも喉がガラガラで…もともと歌は弱いし、くらげちゃんの歌とはキーが合わないのかもしれませんが、インフルは陰性なの? これじゃここも早晩次の代役なのでは…とヒヤヒヤしました。翌日からは持ち直していたとも聞くので、なんとかがんばってほしいものですが…
 お衣装もみちるが着ると丈が長いなー、とは思いましたが、しっかり着こなしていたのはさすがでした。そしてくらげちゃんよりなんか老成したナディアで、叩き上げスター感があって、これはこれでこのワガママさへの理由にはなるな、という役作りでさすがだなと思いました。お芝居はホント上手い人だし、れいこと組むとなると『星逢』新公を思い起こすわけで、それはなかなかのエモでしたね。
 さち花も休演で、ヨナス母のエミリアは桃歌姐さん。これまた手堅いわ上手いわ、どーなってるの!?ってなもんです。
 みちるのミクはこありちゃんに。コードネームは「チルチルミチル」から「ナニヌネナナノ」に。はっちゃけていてよかったです。そして桃歌姐さんのアンジーは新公のいちごちゃん。堂々としたものでした。こありのヘルガがこれも新公のみうみんで、これまた可愛くて達者。みうみんとのころがえりさちゃんでしたが、これは私はチェックできませんでした。
 変わっていない分がっつり引っ張り、支えるぜ!みたいな気合いの男役123の声のデカさが、いっそ爽快な回だったと思います。ちょっとしたトチリはあっても、知らない人や回数を観ていない人には代役だと気づかれない程度だったでしょう。これを美談にするべきではないし、基本的にスターありきの興行をやっている劇団での代役のあり方というものはもっときちんと考えていかないといけないのでしょうが、宙組公演が飛んで雪組公演の初日も定まらない今、月組がやり続けられるならやらないと…とふんばったことは、一定の評価はしたいと思います。その上で、一般社会もそうですが、「調子が悪ければ休む」が普通のことになり、ちゃんと補填、補償、補充されるシステムが作られていく世の中になるといいな、とも考えさせられました。
 スターのファンならもちろん心配だろうし代役にもいろいろもモヤるでしょうが、正直私は観られてラッキー、とか思いましたし、自分のチケットが飛ばなかったことも嬉しく感じてしまいました。申し訳ございません…



 ショルダータイトルが「東京詞歌集」と書いて「トウキョウアンソロジー」と読ませるショーは作・演出/栗田優香。
「東京というテーマに沿って集められた、それぞれに独立したストーリー性を持つ短編集のような作品」で、でも「各場面を完全に独立した存在にするのではなく、全編を貫く大筋を設定して」あるアンソロジー・ショーで、栗田先生の大劇場デビュー作です。指田先生も大劇デビューはショーで、と決まっているので、この流れは楽しみでもあります。てか今ショー作家がホントいないから、若い人はとりあえず二刀流でやってほしいです。
 こういうコンセプト・ショーは私は好き。説明過多、設定過多に感じる方もいたようですが、これはもう好みの問題でしょう。回数を観られなくて目が足りないままに終わった印象だったのは残念でしたが、これは自分のせいなので仕方ないです。
 楽曲に関しては昭和後期の「DOWN TOWN」が私はド世代なのでめっちゃウケましたが、以後の曲は全然知らなかったので、これはハマり具合に差が出たでしょうね。今のアラサーくらいがどんぴしゃなんだとか? 知ってて観た方がフィナーレなんかも楽しかったろうなあ、不徳の致すところです…でもバブル期を中詰めに持ってきて全員どピンクのお衣装で客席降りも、というのは正しい設計だと思うし、そのあとのぱるあみセンターの若手男役による平成ヒップホップにまたキタコレになるところまでがセットですよね(笑)。イヤこのテの場面、ジェンヌのヒップホップ度は年々上がっているんだけれど、そもそもの相性の悪さというか目指す先の違いはいかんともしがたいと思っているので…清く正しくないところに咲くものでしょう、ああいう楽曲って。あとそれとは別に後半だけでもいいからぱるの帽子は取るべきだったのでは…スターの顔を見えづらくしてナニが宝塚歌劇じゃ、それがヒップなんだぜ!とか言ってる場合かアホかいな。
 パレードの衣装が新調というかここで初の出番、というのもいいですよね。まあオープニングが江戸のとりどりの和装だからできたことかな。なのでラインナップもやや変則的でしたが、それはそれでアリでしょう。

 休演代役はショーもいろいろ激しかったので、記録として公式サイトのニュースから以下転載。

***

S1 骨董屋「序曲~問わず語りの唄」
 付喪神(女) 天紫 珠李→八重 ひめか
S2 「万華鏡百景色」
 付喪神(女) 天紫 珠李→八重 ひめか
S3 吉原遊郭~足抜け
 花魁 海乃 美月→天紫 珠李
 付喪神(女) 天紫 珠李→八重 ひめか
S5 鹿鳴館「美しく青きドナウ」
 令嬢明子 海乃 美月→彩 みちる
S6 「菊花火」
 明子(老年) 白雪 さち花→麗 泉里
S7 「銀座煉瓦通り」
 女給 麗 泉里→天愛 るりあ
 モガ 彩 みちる→きよら 羽龍
S11 闇市「大砲の歌」
 娼婦 S 海乃 美月→天紫 珠李
S12 「一瞬の邂逅」
 娼婦 S 海乃 美月→天紫 珠李
S13 「明るい諦念のブルースRep」
 娼婦 S 海乃 美月→天紫 珠李
S15 「FANTASY」
 City Girl(歌手) 彩 みちる→花妃 舞音
S16 「サファリ・ナイト」
 City Girl S 海乃 美月→彩 みちる
 City Girl(コーラス) 白雪 さち花→白河 りり
S17 「万華鏡百景色Rep」
 City Girl S 海乃 美月→彩 みちる
S20 スクランブル交差点「Tokyo Rendez-Vous」
 或る女 海乃 美月→彩 みちる
S21 「a ray of light」
 或る女 海乃 美月→彩 みちる
S22 「目抜き通り」
 フィナーレの女 S 海乃 美月→天紫 珠李
S23 「パレード」
 パレードの女 S 海乃 美月→天紫 珠李   

***

 花火師と花魁が輪廻転生して最後に結ばれる、というショーなのに、くらげちゃんパートをみちるとあまし氏で分け合う構成なので、やや「はて…?」という感じにはなっちゃっていたかな。あましは「地獄変」の良秀の娘の役も印象的なので、でもここはれいこちゃんノータッチ場面なので…まあでも逆に言えば普通のバラエティー・ショー感は増して、観やすくなっていたのかもしれません。
 とっぱしの花魁はあまし。綺麗でよかったです。しかし銀橋を走るのは怖かったろうな…
 鹿鳴館はみちる。このドレス姿はさすが可愛かったなー! そして老齢になってさち花だったところは泉里ちゃんでしたが、歌含めて手堅くて安心。
 銀座はみちるのモガがおはねになってぱると組んでてかーわーいーいー! 泉里ちゃんの女給はるりあたんになっていてこれもめっかわでした。
 闇市の娼婦はあましで、チャイナドレスのまあ似合うこと! 中詰めとっぱしのみちるの所にまのんが入ってぱると組み、身長差のすごいこと! 歌、可愛かったー!! この回、友会のおかげでほぼSS席の上手側3列目通路側というお席だったので、目の前であんよが拝めましたありがとう友会! 中詰めはみちる、鬘もよかった! ロケットを呼ばわり、ロケットセンターのあましが応える、胸アツ…!!
 渋谷はみちる。フィナーレはあまし。セリ上がりの出が綺麗で安心したのも束の間、銀橋に出るのに全身で震えているのが見えて、こっちまで泣きそうになりました。デュエダンは正直振りをするのが精一杯で、頭の中でカウントを取っているのがわかるような踊りでしたが、れいこちゃんがまったく笑みを絶やさずサポートしていたのが印象的でした。大階段でのラストの決めポーズで、あましが片足踏み外したのか体勢がかくんと崩れたのをれいこちゃんがにこやかな笑顔のままがっと抱き寄せていて、でもあましはもうずっと青い硬い顔してて、いいんだよよくがんばったよ偉いよ…とまた泣きそうになりました。パレードでの表情も固かったけれど、でもこの大羽根姿はファンは嬉しいだろうなあ、などと考えるとまた泣きそうになり、片やしれっといつもの位置でニコニコしているみちるの偉さにも頭が下がりました。
 代役当人だけでなく、組む相手の男役さんたちや群舞で周りを固める娘役さんたちもみんな大変でしょうが、どうか早く慣れて、笑顔で、楽しんで公演できるようになるといいな、と思います。そして休演している生徒さんたちも負担に思わず、じっくり治して、戻れるようなら早く戻ってまたがんばってくれるといいなと思います。どうぞみなさまくれぐれもご安全に…


 さてしかし。
 じゅっちゃんとおはねのチェンジ組替えが発表されたときには、なんだソレ意図がわからん、とか思ったものでしたが、その後にトップコンビの卒業発表があると、では次期はちなつとじゅっちゃんってことにしたの…?などと私はぼんやり考えていました。しかしさらにあの事態で、どうなるのか正直全然わからなくなりましたよね…
 カチャが降りてくるとかでなければまずちなっちゃんなんだと思うんだけれど、私はトップコンビの学年差はあまり大きくない方がいいと考えているので、やはりみちるかあましなのかなあ、とか。今回の代役は完全に予定どおりの代役なのであって、何かを意図したものではないと思うんですけれどね。でもこのふたりは他の新公ヒロイン経験者たちより確かにキャリアは抜けていると思うのですが、これくらいの実績でトップ娘役にならなかった生徒もこれまでザラにいるわけで、やや決め手に欠けるというか、劇団がそのポジションにつける準備・演出をしてきた感がないというか…な気もします。学年差はあるけどうたちを戻す、とかの方がまだわかる気がする…
 ファンの方は気が気でないでしょうが、私も静かに注視しているところではあります。まずは花が順当に発表されるのかな…?
 行く河の流れは絶えずして…いやむしろ、たゆたえども沈まず、の方がふさわしいのかな? とはいえ運動会とかやってる場合なのか、という感じもしてきましたが、劇団の努力に期待しています。生徒もスタッフも観客も、みんながハッピーに、健康的に楽しめる娯楽であることを、宝塚歌劇には求めたいのです。被害も加害もしたくない。そのための応援は、したいと私は考えています。







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2 コメント

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Unknown (でこかっぱ)
2023-11-10 05:30:41
ロシアン・ブルー、大好きでした。
ああ、れこうみで大野先生のスクリューボールコメディ見たかったです。
返信する
ご無沙汰しています! (でこかっぱさんへ)
2023-11-11 11:03:37
そうそう、『ロシブル』も冷戦下のお話でしたね。
でもあれはファンタジー要素の入れ方など含めて、
ラブコメとして、エンタメとして、宝塚歌劇として、
とてもよくできていた作品だと思います。
再演されてもいいのになあ…
大野先生のスマッシュヒットもまた観たいです。
ベタベタラブコメのれこうみってのも観てみたかったですよねえ…サヨナラ公演が良きものになりますよう祈りたいと思います。

●駒子●
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