駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

EMK『ベルサイユのばら』

2024年08月15日 | 観劇記/タイトルは行
 忠武アートセンター(韓国、ソウル)、2024年8月13日19時半。

 代々王室近衛隊を指揮してきた由緒正しいジャルジェ将軍家の末娘として生まれたオスカル(この日はチョン・ユジ)。ジャルジェ将軍(イ・ウスン)は家の名誉を守ろうと彼女を息子として育て、オスカルは祖国と王家に忠誠を尽くす近衛隊長となる。召使いのアンドレ(この日はキム・ソンシク)はオスカルに身分違いの恋をしているが、その気持ちを隠したままいつも彼女を守っている。パリのベルサイユ宮では連日華麗な共演が繰り広げられているが、町では民衆が相次ぐ凶作と増税に喘ぎ、絶望の中に生きていた…
 原作/池田理代子、脚本・作詞・演出/ワン・ヨンボム、作曲/イ・ソンジュン(ブランドン・リー)。EMKミュージカル、全2幕。

 以上のあらすじはプログラム(A4フルカラー、束が8ミリくらいあり、プリンシパルは扮装写真、アンサンブルはアー写ですがイメージが揃っているので新撮り? 稽古場写真とオスアン役者のコメントというオーソドックスな作りで12,000W、今の日本円で1,300円くらいなので、高騰している日本のプログラムからしたらかなりお手頃価格ですね…!)に唯一あった日本語を編集しましたが、フォントのせいかちょっと変な漢字があったり、句点がナカグロみたいな位置にあるのがなかなか趣き深いです。スタッフクレジットの筆頭はエグゼクティブ・プロデューサーとプロデューサーですが、割愛しました。ディレクター、というのが演出のことだろうと思ってこう書きましたが、違っていたらすみません…

  私は原作漫画とは小学校高学年のときに出会っていて、今でもボロボロのマーガレットコミックスを愛蔵しています。古い記事ですが、こちら。リアルタイム読者は私よりもう少しお姉さんたちだと思います。今回の雪組版もあまりにアレだったので、先日久々に再読しましたが、お若い読者で「絵がちょっと…」とかで未読の方が増えている、というのがなんとなくわからないでもない(特に前半とか…)、漫画としての古さは確かに感じました。意外にランボーなところとかあるしね…でもそれこそ若描きだからでもあって、24か5歳の若い女性が1年半の週刊連載で描き上げた凄みってものはあるし、やはり描かれている内容が、ストーリーが、ドラマが、とてもエポックメイキングだと思うし、私はやはり世紀の傑作だと考えています。なので漫画が至高なのであって、その舞台化がアレなのは仕方がない…のかもしれないが何故劣化する一方なんだ宝塚歌劇版!とやはり怒りに震えるのでした。宝塚版考察についてはこちらこちらこちらなど。一部重複がありますが、こちらなど、その後「その2」が書けていないのでは…(><)

 おそらく初期の契約がザルで、今さら原作者も集英社も口出しできないんだろうな、そしてここまできたら植Gはきっと死ぬまで脚本・演出を手放さないんだろうな、と思うと、もはや絶望しかありません。
 50年前当時、ファンからの「宝塚にこんな向いた素材があるよ」という声に素直に乗ってみて、初風諄がいたからかもしれないけれど、これはアントワネットの物語だからそこに当てて舞台化しよう、と決断した若き日の植田先生は、そら本当に慧眼だったと思うのです。そうしたら当たったし、オスカルに人気が出た。だから続演を、というのも、いい。そして安奈淳がいたからかもしれないけれど、ショーちゃんにオスカルばかりやらせるとスターとしての枠を狭めると判断して、次はアンドレをやらせた、という判断も素晴らしい。その成功で、その後のいろいろなキャラクター・フィーチャーと役替わり公演の道筋ができたと言っていいでしょう。
 ただ、脚本的には最初の3本が一番まともでした。あとはおかしくなる一方です。私が生で観ているのはノルユリ、タカハナの『2001』以降ですが、BOXまで買って全部見ていますし、その後もすべて観ていて、そして本当に毎回毎回、頭痛が痛いです…
 でも、当初の契約なのかなんなのか、おそらく国内では外部プロダクションでももう他の舞台化が難しいのだろうと思われていたところに、確か一昨年くらいでしたでしょうか? 韓国でのミュージカル化が発表されて、その手があったか!と小躍りする思いでした。実際にはまずはコンサートバージョンでの上演となり、その後にちゃんとしたミュージカル版での上演が発表されたので、そのころちょうど誕生日に合わせてソウル旅行を計画していたこともあり、なら誕生日に観るか!とチケッティングをがんばってみたのでした。
 チケット購入はインターパークというサイトから。韓国の舞台やコンサート・ライブなどのチケットの海外販売サイト…なのかな? 日本語ページもあります。この公演は4か月の長丁場で、ひと月分ごとにチケット販売があり、発売日の予告はSNSなどでされていました。国外分は韓国内分の翌日、だったのかな? ともあれその発売日、朝から待機…なんてことはしなくて、昼ごろにそろそろつないでみるか、という感じでおっかなびっくりサイトを触り、パスポートや住所なんかの登録に手間取りつつも、一階後方どセンター席が無事に買えました。140,000W、日本円で16,000円くらいでしょうか。今やフツーのお値段ですね。手数料が8,000Wかかりました。
 予約完了メールのプリントアウトと、パスポートと照合するからというのでパスポートも持って劇場に出向きました。劇場は外観はフツーのビルで、ロビーラウンジは二階。チケットカウンターに行くとTOHOシネマズの発券機みたいな機械を示され、予約番号を入力したらそれだけで無事に発券されました。
 もぎりは開演30分前に劇場扉前で行われ、ロビーにあるフォトスポットやキャストボード、グッズ売り場にはチケットがなくとも誰でも来られるのでした。これはいいですね。グッズ売り場にはなぜか人っ子ひとりいなくて、レジのお姉さんも暇そうで、「う、売っていただけます…?」みたいな感じでプログラムと、薔薇のイラストとフランス語タイトルが入ったゴブレット(18,000W)を記念に購入しました。他にピンバッジやキーチャーム、ポーチなどがありました。ところで今回の雪組版では公演バッグに英語タイトルが入っていたようですが、何故フランス語じゃないんだ劇団…?
 キャスト発表時に、オスカルが主役で、アンドレとベルナールが大きなお役であること、どうやらアントワネットとフェルゼンはいない(プリンシパルは他にポリニャック夫人、ロザリー、ジェローデル、マロン・グラッセ、ジャルジェ将軍とド・ゲメネ公爵、シャルロット)模様なのが話題となっていて、私もそこは残念に感じました。オスカルがどんなに魅力的なキャラクターであろうとも、「ベルサイユ宮に咲く大輪の薔薇」とはアントワネットのことであり、この物語のタイトルロールはアントワネットだと私は考えているからです。
 ただ、ではどう物語が切り取られ再構成されるのか、には興味がありましたし、韓ドラ歴20年程度の耳学問では聞き取れる台詞はたかが知れているでしょうが話は知っているんだから大丈夫だろうし、何より韓国ミュージカル俳優はみんなめっちゃ歌が上手いというじゃないですか! それを浴びたい! と思い、検索すれば公演評なども読めるでしょうしYouTubeなどにも動画がいろいろ上がっているようでしたが、あまり予習せずに行きました。
  新しいのか、客席はとても綺麗で、芸劇みたいな感じでしょうか。センターブロックは千鳥になっていて段差もまあまあありましたが、左前にとても背の高い男性が来たため(ちなみに男性ふたり組でした。家族連れも多く、なかなか幅広い客層という印象でした)、私は下手端を観るには伸び上がるか右手前に乗り出すかしかなく、後列の方に申し訳ありませんでした…また、私の隣はなぜか空席でした。逆サイドはアジュンマ3人組でした。後ろから二組くらい、日本語の会話が聞こえました。二階席はリピーターが多いのか、曲終わりの歓声は上から降ってくるようでした。
 プログラムにあるミューバカルナンバーはこんな感じ。これだけでもどの場面が取り上げられているのかは、なんとなくわかるかと思います。DeepL で翻訳したものを一部修正しましたが(私はこの作品において「ばら」を「バラ」とすることが何より嫌いなので…)、アンダースコアというのはどういう意味かよくわかりませんでした。

第1幕
01.誕生
02.パリの街並み
03.マダム・ド・ポリニャック
04.傾いた大地
05.税金の殻
06.このまま朝まで
07.黒騎士
08.ヴェルサイユのばら
08a.尋問室 Underscore
09.ロザリー・ラ・モリエール
10.セーヌ川の記憶
11.どうしてあなたは女なの?
12.仮面舞踏会 Underscore
13.私はオスカル
14.暗闇の果てに

第2幕
15.点滅するお金を見るだけで
16.点滅するお金を見るだけで Underscore
17.舞台事故 Underscore
18.秘密結社
19.あなたは私に与えるだけ
20.貴族ってなんだ
21.あなたなら
22.メヌエット
22a.敵 Underscore
23.私の住む世界
24.別れ
24a.衛兵隊
25.オスカルと踊る
26.毒杯
27.革命
28.私を包んだ風は私だけに吹いたか
29.私を包んだ風は私にだけ吹いたのか Rep.
30.カーテンコール

 また、いわゆるゲネプロが公開されたプレスコールがこちらにありました。かなりの尺があり、だいたいのノリがわかるかと思います。


 では、以下、すでにややあいまいになった記憶をもとにネタバレ全開で感想を語ります。このあと来日公演や輸入上演があるかもしれないので、ネタバレがお嫌な方はここまでで…ちなみに私はめっちゃおもしろく観ました。なんてったって本当に全員歌が上手い! 日本では劇団四季以外の舞台では必ずいるじゃないですか、声量が足りないとか音程が取れないとかな役者さんが…それがまったくありませんでした。ゴージャスな歌と音楽を存分に浴びて、とても楽しかったです。ナンバー数が多いこともあり、オペラチックではありましたが、振りが入るのでやはりミュージカル、かな? ただ、いわゆる「バスティーユ」みたいなダンスナンバーはありませんでした。
 お衣装も素敵でした(衣裳/ハン・ジョンギム)。ポリニャック夫人(この日はパク・へミ)のドレスが昔の少女漫画チックな、ややダサめな派手さなのが、ザッツ・ヴィラン!でよかったです。オスカルの軍服もどれも素敵でした。どれも歴史考証的にはアレなのかもしれませんが、舞台として観ていて目に楽しいほうがいいので、問題ないと思います。鬘が宝塚歌劇ほど良くない、みたいな話も耳にしましたが、ノーオペラで観る分には全然気にならず、綺麗でした。ジェローデル(この日はソン・ヨン)の髪がちょっと野暮ったかったかな…? てかこの方はとてもガタイが良くて声も野太く、口調もあまりノーブルでなかった気がして、ジェローデル好きの私としてはややハラハラしてしまいました…ただキャラの扱いはとても良くて、無駄に(笑。宝塚歌劇ならせいぜい四、五番手がやってカットされるようなエピソードが、むしろわざわざ増やされている印象)出番が多かったのにはニヤリとしました。愛されているキャラクターなんだなあ…!
 セットや映像もちゃんとしていましたが(装置/ソン・スクチム)、ものすごい!というほどではなかったかな…セリや盆がゴンゴン動く、みたいなこともなかったです。でも百合カーテンがないだけで御の字です(笑。ところでこの「御の字」の使い方は誤用なんだそうですね…)。ミラーボールもなかった気がしましたが、カーテンコールとかで回っていたのに私が気づいていないだけだったらすみません…
 1幕60分、20分の休憩をはさんで2幕70分の計2時間半で、最近の舞台としてはコンパクトだったのもとても良きでした。てかこの尺でここまで描けるんじゃん、観て学べよ植G!と心底思いましたね…サイドブロックの後列に空席がないことはなかったですが、売れてはいるんだと思いますし、好評でブラッシュアップされて再演され輸出されていくといいな、と思いました。その際は〇〇〇〇がない件に関しても是非ご考慮いただきたく…というかまたのちほど語りますが、この件の経緯についておくわしい方がいらしましたら、どうかご教示くださいませ…!

 開演ベルは、例の♪リンゴ~ン、ではありませんでした(笑)。オケピットがあって生オケで、指揮者にライトが当たり拍手できる時間があり、指揮者は女性でした(指揮/イ・ソニ)。
 スマホ切り要請などの注意喚起アナウンスがその日のオスカル役者の声でなされるようで、名乗りから始まってワクテカしました。シメが「用意はいいか、アンドレ!?」みたいなのにもきゅんとしました。てか韓国語だと「ペルサイユ」になるのがラブリーすぎます…ペルサイユエチャンミ!

 幕が開くと、夜会にさんざめく貴族たち。語り部のような感じでアンドレが出てきて、おそらく状況を語るようなくだりがあり、場面はすぐにジャルジェ家になって、マロン・グラッセ(この日はイム・ウニョン。役名は「乳母」でしたが、彼女には名前があるのよ…!)が赤ちゃんのおくるみを抱いて出てきて、ジャルジェ将軍に「イェップンアガシ…!」とか言うもんで、もうテンション上がりました!(笑。これは「綺麗なお嬢様」というような韓国語です)ジャルジェ将軍も「ノィェアドゥル(わが息子)」とか言うし…! すぐに時間が経過したようで、マロン・グラッセはオスカルにドレスを着せられないでいて、そこへ白い軍服に身を包んだオスカルが登場! 朗々と歌い出します…これは「わが名はオスカル」みたいなものか!? 国王らしき人物から叙勲されるような振りがありました。
 本当のことを言えば、オスカルはオーストリアからお輿入れになったアントワネットと同じ歳、同じ女性だからこそ特別に近衛隊に入れたのであって、その関係性が描かれないのは残念ですが…そのあと、ポリニャック夫人の大ナンバーがあるのですが、そこでアンサンブルが演じる、白いドレスの、台詞を言わないアントワネットがイメージ像のようにあえかにはかなく出てきて、オスカルが「ハジマン、ペア(ですが、陛下)…」と話しかけてポリニャックにさえぎられる、というくだりかありました。
 次がベルナール(この日はソ・ヨンテク)登場、だったかな? これがもう、強くて激しくてカッコよくて、そらこの革命は成功しますよ…!ってな感じなんですよ。ここだけレミゼみあったな…このあと出てくるパン屋をクビになるなるロザリー(この日はユ・ソリ)がまた、コゼットめいていましたからね…! でもそのあとむしろエポニーヌかな、みたいな思わぬ強さを発揮するんですけど(^^;)。
 ロザリーが若い貴族に絡まれて、ベルナールが助けて、「ベルナルシャトレ、シンブンキチャイムニダ」ってまんまやー! さらにすぐド・ゲメネ公爵(ソ・スングォン。ところでこの人は実在の人物なのでしょうか? プログラムにアンリ・サルヴァトーレとファーストネームが記載されていました。でもポリニャックは称号だけだな…)のピエール坊やへの発砲やら(隣の隣の席のアジュンマが素で小さく「あっ」って驚いていて、良きでした)、ロザリーがオスカルの馬車の前に「ナウリ…」って言いながら出て、オスカルがアンドレから借りたお金を渡すくだりやらがありました。ジャンヌはカット、まあ仕方ないかな…展開は早い印象でした。
 ベルナールは、母親の入水につきあわされるくだりの歌なんかもあって、貴族を憎む民衆側の代表としてオスカルに対峙し拮抗するライバルのような、大きなお役になっていました。アンドレも恋心をせつせつと歌ったりするけれど、辛抱役なので…「アイゴー、ハルモニ(ああ、おばあちゃん)…」とか言うのがまたカワイイ(笑)。くさくさしたオスカルが酒場で飲むくだりがあり、そこではアンドレが「チョンチョニマショ(ゆっくり飲め)」と言っていてホントおもしろすぎました。つぶれたオスカルをお姫様抱っこして、星空の下で歌うナンバーあり。これは宝塚版でもバージョンによってはある名シーンですよね…!
 その後ロザリーがベルサイユと間違えてジャルジェ家に侵入したようで、母親がポリニャック夫人の馬車に轢かれて「文句があったらいつでもベルサイユへいらっしゃい」と「チンチャオモニ、マルティヌカブリエル(本当のお母さんはマルティーヌ・ガブリエル)…」の回想があって、ロザリーはそのままジャルジェ家で暮らすようになりました。ドレス姿でですが、オスカルに剣の稽古をつけてもらうくだりもアリ。袖がほつれたオスカルの軍服を抱いて歌うナンバーもあり、おそらくは「おおオスカル、どうしてあなたは女性なの」ってなことを歌っているんだと思うんですけど、あっけらかんとあっかるい曲調で、これもかなり、ちょっと、おもしろかったです。というかこのロザリーは地声がしっかりしていてまったくカマトトめいたところがなく、全然ピンクの春風でもないのでした…この解釈は日本ではちょっと起きない気がします。庶民の女性としての強さなのか、韓ミュだからなのか…?(^^;)
 前後しますが黒い騎士のくだりがあって、黒い騎士を誘い出すための夜会にオスカルがドレス姿で参加するくだりがありました! ここでジェローデルが「サランハムニダ、ジンシムロ(愛しています、心から)…」とか言ってくるので、激しく萌えましたねー…! でもキスシーンはナシ。ドレスもオダリスクふうではなく、シルバーブルーの上品な、横にボート型に張り出すスタイルのドレスでしたが、とても美しかったです…! 今回はフェルゼンは出てこないんだけれど、やはりオスカルのこの女装()はこの物語の白眉のひとつだと思うのですよ、やらんでどーする…!!
 というか今回、オスカルはあたりまえですが女優さんが演じていて、アンドレやジェローデルたちリアル男性よりほっそりしているし背も低いです。声も女性としては低いのでしょうが、男声ではない。でも十分に凛々しいし素敵だったし、胸はつぶしていなかったようだけれどそれも自然でした。別に男役が演じなくてもいい役なんですよねオスカルって…ただ宝塚歌劇においては、ここを娘役にやらせてしまうといろいろな意味でいろいろな前提が崩れてまずいのだ、ということはわからないでもないです。
 黒い騎士が現れて、黒い騎士に偽装したアンドレと戦い、アンドレは目を負傷します。黒い騎士も逃がしてしまう。オスカルは「わが名はオスカル」のリプライズみたいなのを歌いあげながらまず髪飾りを外し、頭をふるうと結い上げた髪が落ちていつものヘアスタイルになって、ドレスもがっと脱ぎ捨てると中に白ブラウスに白パンツ白スターブーツを着ています。そのまま熱唱、かーっこいーい!
 でもこれが一幕ラストじゃなかったんですよね…一幕終盤、「おお、ここで切って休憩かな?」と思うような大盛り上がりが三回くらいありました(笑)。結局どこで終わったのか記憶がナイ…とにかくみんな歌が上手くて展開が早くて、台詞や歌詞はわからなくてもおもしろすぎたのでした。
 そうそう、『ドン・ジュアン』かな?みたいな、赤い薔薇をバックに薔薇の花びらが散る中をオスカルが歌う一曲もありました。これが「ベルサイユのばら」かな…? こういうところは、もしかしたらストーリー展開にはあまり関係ないナンバーなのかもしれず、残念ですがブラッシュアップの際に再考してもいい部分なのかもしれません。

 2幕は、何故か『フィガロの結婚』の劇中劇みたいなのから始まりました。アントワネットがプチ・トリアノンで『セビリアの理髪師』を仲間内で上演するくだりが原作漫画にありますが(戯曲で貴族が皮肉られている意味をわかっていない、とオスカルが怒る)、何故フィガロに変更されているのでしょう…? 別にオペラのフィガロの曲が使われていたようではありませんでした。しかも仮面をつけたオスカルが舞台に乱入して、役者たちとロケットを踊る…? うーん、謎。
 その後、黒い騎士捜索で庭園を歩くオスカルが、アントワネットとフェルゼンの逢引に遭遇するくだりアリ。フェルマリはここでも台詞がなく、オスカルはふたりを他の近衛兵たちに見つからないよう逃がすだけですが、フェルゼンへの恋みたいなターンはカットされているので、王妃を哀れに思う程度なのでしょうか…その後、アントワネットに耳打ちして注進するようなくだりアリ。
 また、原作とは順番が入れ替わっていますが、盛装のオスカルがアントワネットと舞踏会で踊るくだりもありました。私、ここ大好きなんですよね…! 宝塚版ではこれまで一度も取り上げられたことがなかったのでは? ノルユリではあってもよかったと思うんだけれど…
 でもこの舞踏会、展開が怒涛で、そもそもロザリーのお披露目だったんですよ。で、ロザリーが泣いているシャルロット(この日はユ・スンイン)と行き会い(「オンニガトワジュッケ(お姉ちゃんが助けてあげる)」「キョロン、シロエ…(結婚なんて嫌)」)、これがまた子役で泣かせるワケですよすごいわ韓ミュ…! そこへ娘を呼びに来たポリニャック夫人が現れ、母の仇!とロザリーが銃を向け、そこへオスアンがマルティーヌ・ガブリエルとはポリニャック夫人のことだ、と言って駆け込み、そこへシャルロットが投身自殺するのです…! 泣き崩れたポリニャック夫人はすぐにロザリーを娘として迎えようとし、しかしロザリーが「オモニトラガショッソヨ(母は亡くなりました)!」と拒絶する…いやぁ濃い、濃いよ早いよ展開が! ちょっとひとまとめすぎるよ!!(笑)
 その前後に、オスカルを襲った黒い騎士をロザリーが撃つくだりもありましたね。原作よりだいぶ腕のいい撃ち手なのでした(笑)。介抱されるベルナールが上半身裸で、コレは宝塚歌劇ではできないヤツ…!となりました。結局オスカルがロザリーをベルナールに託して逃がし(「ネガトンセンヤ、プタッケ(私の妹だ、頼む)…」!)、ジャルジェ将軍に叱られ、アンドレが庇って割って入るのはここだったかな? 「けれどそのまえにだんなさま、あなたをさしオスカルをつれてにげます」はなかったけど…というかアンドレはジャルジェ将軍を「チュインニム(ご主人様)」と呼んでいましたね。
 それともジャルジェ将軍が怒ったのは、オスカルが勝手に衛兵隊に異動したからかもしれません。
 前後を忘れましたが、オスカルの求婚者探しの舞踏会が開かれて、しかしオスカルはドレスではなく男性の盛装で現れる…のくだりがありました。原作漫画では軍服仕立てでしたが、今回は宮廷服ふうで、それもいいな!とときめきました。ご婦人方とバンバン踊ったあと、ふと行き会わせたアンドレにダンスの手を差し出すくだりもあり、これにもめっちゃときめきました! ここまでの中で、オスカルがシルエットのアンドレに歌いかけるようなナンバーがあったので、そのあたりでアンドレへの想いを自覚していたのかもしれませんが、歌詞がわからないのでちょっと追いきれませんでした…あと、ここでは単におかんむりの父親をさらに怒らせてやろうという茶目っ気だけだったのかもしれません。ともあれ、ワンフレーズだけでも踊ってもよかったのになあ、BL的にも萌えますよね…! でも懲りないジェローデルが現れてダンスに誘うので、オスカルは去ってしまう…という流れだったかと思います。衛兵隊士たちもタダ飯食いに乱入していました(笑)。
 それで残ったジェローデルが、アンドレと語るくだりがあったのかな? アンドレはもうオスカルの夜のワインを支度していて、なので熱くないショコラのくだりはなかったのですが、会話の感じからしてジェローデルはいつもオスカルのそばにいられるアンドレを純粋にうらやましがり、オスカルを彼に託していく感じだったのかもしれません。なんかくだけて床に座って語るんだけど、ジェローデルはそんなお行儀の悪いことはしないんじゃないかしらん…とは思いました。
 おそらくアンドレはその後、「どんなに愛しても身分のない男の愛は無能なのか!?」に当たるようなソロを歌い上げ、ワインに毒を入れます。けれど現れたオスカルが、原作漫画からするとだいぶ晴れやかにあっけらかんと「もうどこへも嫁がないぞ、一生」みたいなことを言って去るので、その場面はそのまま終わりました。そういえば無理チューや結核、肖像画のエピソードもありませんでしたね…まあこのあたりは宝塚歌劇版でも取り上げられたことがないと思いますが、重要な要素なのになあぁ…
 本当はそもそも、かつて不注意でアントワネットに怪我をさせたアンドレが、死刑になりそうなところをオスカルやフェルゼンに救われて…というくだりがあって、「おれはいつかおまえのために命をすてよう」というかつての誓いをアンドレがここで思い出して、それでオスカルが毒入りのワインを飲みかけるのを止めるんですよね。私はこのそもそもエピソードは、フェルゼンの良さを表現するためにもいいものなんじゃないかと考えていて、宝塚歌劇版に採用されるのをずっと待っているのですがね…馬じゃなくても、なんとでもなるでしょ?
 さて、これまた前後しているかと思いますが、衛兵隊の場面ではすぐオスカルが椅子に縛られているくだりになっていました。でもアンドレが助けに入るまでもなく、オスカルが自力で縄をぶっちぎって逃れ、叩き割った椅子の足で隊士たちをノシていて、アランはあっさり心酔していました(笑)。レイプまがいの恋のなんのという色っぽい要素はなかったように見えました。「おまえもかアラン…」はいいエピソードなんだけどなー…!
 そしてついにオスカルにパリ出動が命じられて、でも民衆の側に回ることになって、でもジェローデルが立ちふさがり、けれど道を譲り…ビンタとかしなかったよ正しいよ! ただ、で、これはいつなの12日なの13日なの今宵一夜はどうしたの!?と思っていたら、なんとアンドレがオスカルを庇ってあっさり撃たれてしまったんですよ…!! 橋はなくて、それはいいんだけどでも、「こん夜ひと晩をおまえと…」は!? ねえ、ないの!?!? そういえばここまで誰にもキスシーンがなかったけれど、レイティングとか何かそういう事情なの? 台詞では語られていたの?? ちょっとーーーー!!! 動揺しつつも舞台は進む…
 ただ、このアンドレはオスカルの腕の中で息絶えるんですよ…原作漫画とは違うけれど、その構図は美しい。よかったねアンドレ、とも思いました…でもやっぱり「愛しあっているなら、からだを重ねてみた」かったよね!?!?
 さらにそこから一日経っているのかどうかもよくわからないままに、どうやらすぐさまバスティーユ襲撃場面に突入したようで、今度はオスカルがあっさり撃たれるのでした…ああ、でもそうだその前に、ベルナールたちと並んでいざ進撃!というときに、オスカルが誰もいない虚空に向かって「用意はいいか、アンドレ」と言って、応えがなくて固まる…というくだりがあったんですよ。てかそれは原作漫画準拠なんだけれど、つまりあの開演アナウンスはネタバレしてたってことなのでは…!? このあたりから私はもう号泣でした。
 オスカルはロザリーの腕の中で、「ウルチマ(泣かないで)…」と言って絶命します。「おまえがたえた苦しみなら」や「フランス万歳」はなかった気がします。ロザリーの絶叫…ところでロザリーはオスカルを呼び捨てしてるんですよね、韓国語だとこういう世界観や関係性で「オスカルシ」と呼ぶのは変なのかな…? 白旗も上がらなかったような…でも涙でいろいろ見えていなかっただけだったらすみません。
 ラストシーンは、オスカルの亡骸をベルナールがお姫様抱っこして舞台奥に向かって進んでいき、ロザリーが付き従い、そこにゴースト?のアンドレが現れて、亡骸を受け取るのかなと思ったらそのままやはり付き添っていって、暗転、おしまい…でした。このアンドレが、スモークが焚かれるわけでも青いライトが当てられるわけでもなくて、ただまんま出てきたのでちょっとおもしろかったです。泣いていいんだか笑っていいんだか、感動してるんだかなんなんだか…しかもすぐパレードなんだコレが! てかオスカルはマジで宝塚以上の早着替えを裏でしてるだろう、って場面が何度かありましたよ…? ここからすぐスタオベで、あわてて合わせて立ちました。
 アンサンブルが何グループかに別れて挨拶をし、次にプリンシパルがひとりずつ順に出てお辞儀して、ポリニャック夫人のターンで劇中同様に厳しめに「シャルロット!」と呼びつけるとシャルロット子役が走り出てきて、でも仲良くハグして…また泣きました。そしてベルナール、アンドレ、オスカルの順で登場。最後の斉唱はなんの歌だったかな…もう思い出せません、すみません。ここでプリンシパルが立つセリが上がりましたが、一番高いセリにオスカルとアンドレが並んで立っていて、次の段にベルナールとロザリー、でした。まあフェルマリがいないなら、この四人の物語になりますよね。ただしベルナールとロザリーのラブのち夫婦、のターンはカットでした。
 ラインナップになると、センターのオスカルの上手隣はベルナールで、アンドレは下手隣でしたが、まあ普通は上下にそんなにこだわらないものなのかもしれません。でもアンドレの方が二番手役でありおいしかった…かは、やはり謎だったかな? ナンバーはたくさんあるんですけれど、ホント辛抱役ですし、しつこいですが今宵一夜がなかったので…なんでなの? 主役カップルが結ばれる場面はやはり必要なのでは…? このあたり、インタビューとかで何か事情や演出論などで言及されたものがあるようでしたら、どなたかご教示くださいませ…!
 なので総じて、オスアンのラブストーリーというよりはやはり、あくまでオスカルが主人公の、「我、いかにして革命に目覚め、生きたか」という物語になっていたかと思いました。だから、セックスの有無は関係ない、と判断されたのかもしれません。そこが最先端韓国フェミニズムミュージカルだったのかもしれません。昭和に育ったシスヘテロ女性としては、寂しいですけれどね…
 私個人としては、セックスそのものより、あのつながり、関係性をもってオスカルが自分とアンドレは夫婦になった、とみなしていることが、子供ながらに衝撃的だったのです。結婚が社会契約であることは私はもう理解していて、けれどその本質は、届を出すことにも式を挙げることにも同居することにも家族に紹介し合うことにもないのだ、ふたりがお互いを唯一無二の相手だと認め合い、「すべてを分かち合う」ことが大事なのだ、と理解したのです。永遠の誓い云々は、今まさにに朝ドラ『虎に翼』が扱っているところだけれど…たかだか百年も生きない身に永遠を語る資格などそもそもないのだ、としておきましょうか。
 ただやはり、オスカル主役でいくならまあこの形でこうまとめるしかないかもね、という感想も持ちました。今、日本で巡回中のベルばら展のメインビジュアルには、オスカルにエスコートされるアントワネットのイラストが使用されています。あれがこの物語の本質だ、と私は考えているからです。友情を育み、しかし袂を分かち、そしてともに革命に散ったふたりの女性の物語…その舞台化を、いつか観てみたい、と思うのでした。

 カーテンコールは特になく、あっさり終演して、観客もみんなあっさり退場していきました。宝塚以上の潔さ…!(笑)
 私はどこかで飲んでゆっくりつぶやいていきたかったのですが、帰り道にいいバーやカフェがなかったので、ホテルまで戻って下のコンビニでロゼのスパークリングワインとおつまみになるお菓子を買って、ひとっ風呂浴びてからゆっくり部屋飲みしました。てかソウルは東京よりもう2、3℃気温が高かったように思います。風はあったけど、深夜も早朝も別に全然涼しくありませんでした。普段はなるべく在宅勤務を増やして、炎天下の外出を避けているというのに、ガンガン観光した私も元気なものですよ…! いやぁもう終始汗だくでした。劇場は別にキンキンに冷えているという感じもなかったけれど、あのお衣装では役者さんたちも大変なことでしょう…!
 プログラムには、50年目の待望の再ミュージカル化!みたいなことを謳うページもあって、本来なら2、3年前の上演だったんだからこの節目になったのはたまたまだったわけですが、いいよね新作が出ていいタイミングだよ…!と感じ入りました。原作漫画にはそれに耐える強度がありますし、こういう新企画はホント大歓迎だと思うのです。アレ? 新作劇場用アニメも今年? 来年? あるんですよね。テレビアニメもまたいろいろ別物ながら傑作だったわけで、こちらも楽しみに待ちたいです。以前あったフランス人役者を起用した映画は…まあ、なかったことにしてもいいんじゃないですかね? 私は見たのかなあ、記憶にないなあ…
 今の韓国で、原作漫画はどれくらい読まれているのでしょうね? 今回の舞台をまっさらで観に来た観客だっているとは思いますし、それでわかる、伝わる内容になっていたのかどうかは、正直言って私にはわかりません。私は単なる原作厨なので…でも、新しい顧客が開拓できているなら何よりです。日韓の新たな架け橋のひとつにもなることでしょう。私はまた韓国ミュージカルを観にソウルまで来たい、と思いましたよ…! 韓国オリジナル作品ではなく、BWやWEのミ革命に散った二人の女性俳優の素晴らしい歌唱力で観るなら海を渡る価値がある、と思えました。そしてもう早晩、日本はいろいろなことで後れを取っていくのだろうな、とも思えました。原作素材として日本の漫画が活用されることはまだしばらくは続くかもしれないけれど、それも韓国発のウェブトゥーンとかが凌駕していくのかもしれませんしね…
 ホント、いろいろ考えさせられましたが、とりあえずは本当に楽しくておもしろくて大コーフンして、良き55歳の誕生日になりました! 大満足でした。引き続き漫画と舞台と旅行を愛して、楽しく元気に生きていきたい、と念じたことでございます。みなさま、こりずにおつきあいいただけたら嬉しいです…!!


※追記※
インスタに写真日記を上げました。








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