駒子の備忘録

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宝塚歌劇雪組『春麗の淡き光に/Joyful!!』

2009年12月07日 | 観劇記/タイトルさ行
 東京宝塚劇場、2003年4月8日マチネ。
 一条天皇の御代。都では「朱天童子」と名乗る盗賊が藤原北家にゆかりのある者ばかりを襲っていた。藤原北家の頭領・藤原兼家(汝鳥伶)は摂関政治で世を牛耳り、権勢を誇っていたのである。検非違使の野依知親(未来優希)は朱天童子の正体を藤原保輔(朝海ひかる)ではないかと疑っていた。彼は藤原北家に政権を奪われた南家出身であるため、北家に恨みを抱いているのではないかというのだが…作・演出/植田紳爾、作曲/吉田優子。朝海ひかる・舞風りらトップお披露目公演。
 イントロをどう書いても二番手の役名もヒロインの役名も出せない、こんな物語は駄目だろう…
「あっ、誰々さまだ!」
 と呼ばわられてジャーンと音楽が鳴って花道から登場、というのの繰り返しといい、決めポーズにカーテンかぶさって場面転換というのの繰り返しといい、あいかわらずの植田歌舞伎炸裂で、もうそれは様式美として割り切るとしても、このサヨナラ公演みたいな物語は駄目だろう。
 主人公が二番手役にこの世を託して去ってっちゃうんだぜ? ヒロイン置いて? 駄目だろう…
 せめて、ヒロインとはくっつけましょうよ。法師に女人は禁物なのかもしれませんが、そんなこと言ってたら宝塚歌劇にならないじゃない。若狭(舞風りら)にだけはあとで真相を耳打ちしてあげて、後を追って山に入らせればいいだけのことじゃないですか。
 あるいは、保昌(朝海ひかるの二役)も実は若狭を好きで、保輔と別れた若狭を彼が代わりに支えるのでした、でもいいです。頼信(壮一帆)のような感じで若狭を案じるご家来衆みたいなキャラを作るんでもいいです。
 とにかくヒロインを幸せにしてあげましょうよ。もちろん悲恋ものもいいですよ、でもせっかくのお披露目公演に、あまりに陰惨で喜び少ない物語ってどうなのよ…
 一応お披露目を考慮して、プロローグにチョンパで開けて華やかに踊る場を設けていますが、ここをもうちょっと削って、冒頭に、保輔と頼光(貴城けい)と若狭が一緒にいて仲むつまじく過ごしているシーンを入れたらよかったんじゃないでしょうか。主人公が血気盛んなタイプで親友である二番手はことなかれ主義者で、結果的にふたりが対立するはめになるという図式はよくあるパターンなのですが、今回もそれなのですから、冒頭で、ふたりの台詞で仲いいけれど考え方がちがうとか出しておけば話がわかり易かったと思うし、保輔と若狭の恋仲、頼光と若狭の兄妹愛もわかり易くなったと思うのですが。
 それと、いくら時代劇とはいえ台詞が難しすぎてわかりづらい。いくら昔の人でも普通人は話し言葉であんなに四文字熟語を使わないでしょう。活字として目で読ませて理解させるならまだしも、耳で聞かせて理解させる芝居の台詞はわかり易く書いてこそ、ですよ。わかり易くてかつ拡張高くゆかしい言葉を捜すのが脚本家の仕事でしょうが、植田先生!
 最初に知親がつかんでいたという保輔が朱天童子である証拠って<結局出てこなかったんだけど、なんだったんでしょうか。正体がばれたとたん保輔が解散だ死ぬと言い出すのは何故なんでしょう。これだけは聞きたいです…
 『ガラスの風景』のクレマン教授以上に知親は物語のすべてをさらっていってしまう役になってしまっていて、役者の熱演と妻・忍(愛耀子)役の好演もあって本当に独り舞台になってしまっているのですが、これも本当は駄目でしょう。でも、第13場の退場シーンでは観客の心からの拍手が本当に自然に起きていて、それは本当に重畳だったと思います。
 コムちゃんは二役を実に上手くこなしているのだけれど、どうしても表情が出せない役で、キャラクターとしての魅力に欠けて見えてしまって残念でしたし、マーちゃんの若狭もなんだかずっと嘆いているだけの役でこれまたヒロインとして魅力がない。カシゲちゃんはややいい感じでしたが…役者の問題ではなく純粋に脚本・演出の問題で、観ていて歯がゆい好演になってしまいました。
 虎熊童子の風早優が好演。

 音楽をテーマにしたダンシング・レビュー『Joyful!!』は作・演出/藤井大介、作曲/高橋城他。ゴスペル、クラシック、ジャズ、スパニッシュからロケット、パレードまで、喜ばしさ爆発で芝居の不完全燃焼を吹き飛ばすショーでした。
 だって笑顔がいいんですよ、みんな。
 特にコムちゃんは、さわやかで可愛くてでもカッコいいという、ちょっと今までのトップスターの誰とも似ていない不思議な持ち味のスターさんなので(中性的、というのともちがうし、単にやや小柄だってだけの問題でもないように思えるのです)、こんなふうにいろいろな面を見せてあげること、引き出してあげることがまずは正しい作品のあり方なんじゃないでしょうか。
 オケピットから登場するアイドルスターふうのポーズ、ウッドベースをエッチに抱いてサテンのグレーのスーツで登場するスマートさ(ヤンさんの振付、最高! 花組育ちのコムちゃんは確かに伝統を受け継いでいます!!)、スペイン椅子に座ったままセリ上がってくるキザさ、自分より背が高く細面で二枚目タイプの二番手と絡む妖しさ、お腹の出たお衣装の相手役を口説く色気、白い服でラインダンスに加わっちゃう元気さ、ピンクのフレアのある燕尾でデュエットダンスを踊る夢々しさ…全部この人の持っている魅力なのです。こういうのをもっともっと観たい!!!
 欲を言えばもうちょっと肩パッドを入れて方と胸板を作った方が凛々しいのでは…顔が小さいのでスタイルは良く見えますが背が高い方でないのは事実なので、下手するとものすごく少年っぽく、可愛らしすぎて見えてしまうときがあるので…まあ好みの問題もあるかもしれませんが。
 四番手、五番手として踊る壮一帆と音月桂に惚れました。特に壮くんは美人だわ!! それと、芝居では珍しく女役だった鬱憤か、第12場のナガさん(飛鳥裕)がキザりまくりでえらくカッコ良かったことが印象的でした。
 22日に再観劇の予定があるので楽しみです♪
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