駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『SPY×FAMILY』

2023年03月29日 | 観劇記/タイトルさ行
 帝国劇場、2023年3月27日13時。

 世界各国が水面下で熾烈な情報戦を繰り広げていた東西冷戦時代。隣り合う東国「オスタニア」と西国「ウェスタリス」では、十数年間にわたるかりそめの平和が保たれていた。西国の情報局対東課「WISE」所属の凄腕スパイであるコードネーム「黄昏」(この日は鈴木拡樹)は、高い諜報能力を駆使して東西両国間の危機を幾度も回避させてきた。そんなある日黄昏は、東西平和を脅かす危険人物の動向を探るため、さる極秘任務を命じられる。黄昏は精神科医ロイド・フォージャーに扮し、家族を作るために「妻」と「子供」を探すことになるが…
 原作/遠藤達哉、脚本・作詞・演出/G2、作曲・編曲・音楽監督/かみむら周平。「少年ジャンプ+」で連載中の大人気漫画をミュージカル化。全二幕。

 この日はヨル/唯月ふうか、アーニャ/井澤美遙、ユーリ/岡宮来夢でした。というかアーニャのことは全然わからなかったので別にして、他のダブルキャストで観たい組み合わせで行ける回を探したら確か二回くらいしかなかったんじゃなかったかな…それでド平日のマチネをお友達に頼んで、チケットを取りました。さっさと観てわあわあ言いたいし人の感想ツイートも読み漁りたいタイプの私にしては、遅い観劇になりました。
 しかしそろそろ学習しよう自分、こういう企画はファンこそが最も楽しいのだと…下手したらファンしか楽しくないのだと。ファンでなくてもおもしろいと思えるクオリティに仕上がっているものは稀なのだし、今回に関してはそもそもそんなことは目指してすらいなかったのだな、ということが窺えたので。私は原作漫画はアタマ3巻くらいまでは読んでいて、テレビアニメもアタマ数回は見ていましたが、まあそれだけで、もちろんおもしろいしよくできているし人気が出たのもわかるけど特にファンではない…みたいな感じで、単にまぁ様が出るというのでじゃあ観ておくか、と思った程度なのでそもそもお呼びでない観客だったのでしょう。しかし、何もない、とは聞いていましたが本当に何もなかった…単に漫画を舞台化しただけ、ミュージカル化しただけ。そこに、戦争の悲劇とか平和への願いとか、冷戦の意味や非情さとか、戦災孤児が偽物の家族を得て再生されていくとか、愛や信頼の大事さとか…が語られる、というようなことがいっさいありませんでした。テーマとかメッセージとか物語がないのです。原作漫画にないから、と言うならそれはそう、なのですが、この舞台作品としての意味が何もない。ただ原作漫画の事件、エピソードを再現しただけで、本当に単に役者を使って舞台で三次元化しただけの、ただそれだけの、純粋な2.5次元作品でした。それはもう潔いほどに。なのでハナからあくまでそういう狙いだったのだと思いますし、それがよかった、それでよかったというファンも多いのでしょう、とは思いました。私はそこに当てはまらない観客だったというだけのことです。ないものを期待して行ってない、ないと騒ぐ迷惑な客だったということだと思います。でも本当にいいのかそれで…
 こういうある種すっとんきょうな設定の作品世界って、ミュージカルの魔法と意外に相性が悪いものなのかもしれないなとも考えましたが、ストプレでなくミュージカルにしたのは何故なんでしょうかね…しかもミュージカル・パートはまぁ様始め、メインキャスト以外が担当していた気もしましたが、あくまで賑やかしということなのでしょうか。いや歌い踊るアーニャとか可愛かったけれども! でもなんか、主に二幕、ユーリとフィオナ(山口乃々華)のエピソードが連続で来て急にラブコメドラマを展開し出したときに、そこでまた上手い役者が絶妙に上手い歌とオーバーアクションで心情を晒して笑いを取るんですけど、もちろん私も笑ったんですけれど、でもそれはミュージカル効果の悪用という気がして、でもわかっていて意識的にされているんだろうなとも思ったので、そもそもミュージカルの人のはずのG2の仕事としてそれはどうなんだ…と私はけっこうモヤったんですよね。
 あとは、アーニャが本当に可愛かったしちゃんと達者で、本物の子供ってこんなに小さいんだなあとか、子役ちゃんってこんなに仕事ができるんだな、嘘の演技の演技ができるんだもんな…とか感心しましたし、小柄な女優さんにやらせるとかティーンを使うとかではない意味があるなとは感じたんですけれど、でもこれもテレビ業界で昔から言われる「子供と動物には勝てない」ってヤツなので、やはり製作姿勢としてどうなんだ…と私は思ってしまったのでした。ホントめんどくさい客ですみません。
 でもホント、お仕事としてこれでいいの…? それともこういうものを作っていられるうちが花なのか…??

 周りに黎明期からの刀ステ・ファンがいたのでそこからの出世株として名前は知っていた鈴木拡樹、私は初めて観たかな? 歌はダブルキャストの森崎ウィンの方が上手そうかな、と思いました。最初のスーツがあまりカッコ良く見えなくて、これは黄昏のものでこの時代の服装ということなのかもしれませんが、それでしょぼんとしてしまったというのもあります。ロイドになってからはちゃんとカッコ良かったと思うんですけれど。
 唯月ふうかは小柄でしたが(スタントの依里の方が背が高かった)、歌は上手くて達者でしたね。可愛らしくてよかったです。
 まぁ様はビジュアルが大勝利で、G2のミューズと呼ばれるのもわかるショースターっぷりでしたが歌はあいかわらず弱い…鈴木壮麻が無駄に上手くて再現率も高く、笑いを取っていて良きでした。フランキー(木内健人)もさすが間が良かったです。
 アンサンブルもまず人数が多いのが手厚くて、セットもいい感じで(美術/松生紘子)、帝国劇場で生オケで超リッチで大真面目でからっぽな2.5、贅沢で良きですよね。こういう企画が通って予算が出て採算が取れるのは、ある種まだ世の中が平和で豊かだということなのかもしれませんしね。
 チケット代もお高かったですが、小さいお子さんもよく見かけて、舞台への入り口になっているならそれも良きことです。笑い声もよく響いていて、ほっこりしました。これは掛け値なしに、子供の笑顔や笑い声は世の宝です。ただ、大の大人がこれに一緒になってただ笑ってるだけでいいのだろうか…と私は思ってしまった、というだけの話です。楽しかった方にはホント申し訳ない文句ですみません。イヤ楽しかったんですよ私も、でもただ楽しいだけだったので本当にびっくりしたのです。ただそれだけのことです、それをねちねちとホントすみません…







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