駒子の備忘録

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『カジロワ』初日雑感

2023年03月11日 | 日記
 宝塚歌劇宙組『カジノ・ロワイヤル』大劇場公演初日を日帰りで観てきました。ゆりかちゃん、かのちゃんのトップコンビ退団公演です。
 原作小説は大昔に読んだことがあると思うけど記憶ナシ。映画もショーン・コネリーのものをどれかテレビで見たことがあるはずですが、記憶ナシ。その後役者が替わってからのものを映画館で観たことは私はおそらくないはずです。なので冷戦下の英国情報部のスパイ、という設定程度の知識しかありません。むしろ『エロイカより愛をこめて』のチャールズ・ロレンスがそのパロディのなれの果て(笑)だよね、程度の知識と言ってもいい。でもダンディなスーパーヒーローとして人気があった時代がある…というのはわかります。その後、世のスパイ・エージェント像は『ミッション・インポッシブル』とかに移り変わっていった…のかな?
 まあ、「歌劇」の座談会やタカラヅカニュースでのゆりかちゃんとすっしぃさんのトークから、シビアでシリアスなドラマにはならないんだろうな、とは思っていたのですが…まあ古き良きスパイ・エンタメというかややトンチキなドタバタ・アクションという感じで、コミカルというよりは私は観ていてこっぱずかしすぎて何度も奥歯を噛みしめましたけど、これからこなれて下級生たちの小芝居も増えて緩急ついていくだろうし、ファンは楽しく通える公演になるのではないでしょうか。
 特にデルフィーヌはほとんど奇跡のような、出色の出来のヒロイン像だと思いました。とてもイケコが狙って書けたとは思えないんだけれど…ホントどうした!? いわゆるボンドガールではありません。そりゃボンドは出会いざまにキスしちゃうし、その後もコナかけるし、やがてふたりの心は通じ合って、短かったけど濃かったね楽しかったねなんて歌い合うのだけれど、最終的には彼女は自分の道を進むべく、ひとり颯爽と去っていくのです。ロマノフの末裔だけれど階級制度や専制政治に疑念を持っていて、五月革命などの学生たちの民主化デモ運動に熱心に参加していて、人々の幸福のために世界のために地球のために教育で底上げしたいと考えていて、お金の使い方も自分の身の振り方もきちんとわかっている、若く美しい女性。受け継いだ財産は基金にして、自分は一教師として働く、といういたって冷静な選択、判断、決断が独力でできて、誰にも頼らず、甘えず、自分の足で立てる女性…なかなか描けないものです。それをかのちゃんが本当に自然に、力みなく嫌味なく、そしてもちろん超絶キュートにチャーミングに演じていて、ヒッピーファッションからロシアふうの盛装までどれも似合っていて可愛く美しく、サイコーでした! このヒロインを生んだことだけでその他のしょーもなさに目をつぶってもいいよイケコ!!(笑)
 それにそれになんと言っても、サヨナラ仕様部分がさすがベテランのワザでさすが上手いです。これまでの感謝やこれからの希望みたいなことを、最後に役の台詞としてスターに言わせて客席に届けて、観客を泣かせる。そういうの、大事だと私は思う。あと、スターだからゴンドラ使うとか(笑)、そういうベタさも大事だと思うのでそういう点もよかったです。まあ正直私は回数増やさなくていいやとは思ったけど(オイ)、いいのですよファンが喜べば…
 あと(けっこう長所あるな!?)正直組ファンでないと「誰?」とか言う人もまだいるであろう次期トップ娘役春乃さくらちゃんが、ちゃんとすごく大きなお役をもらっていて、ちゃんときっちりこなしていたので私は満足です。イギリス外務省の職員で、その関係でボンドたちに協力し、プライベートではもえこ演じるフランス情報局の諜報部員ルネの恋人でもある女性ヴェスパー…聡明で機転も利いて美人でお洒落でお茶目で、イギリス人とは思えない(笑。失礼!)艶やかさで、とてもよかったと思いました。歌があってもよかったのになー! でも今後も任せて安心だと思います。別箱や新公を観ていないとホント「誰?」かもしれませんが、みなさまどうぞ春乃さくらを、春乃さくらをなにとぞよろしくお願いいたします…!(アンタが誰?な立ち位置からの物言いですみません…)
 ま、そういう美点は多々ありつつも、やはりもの足りないというかなんだかなーとは私はもちろん感じてしまいましたよ? 全体にもっと振りきって、スパイたちのカッコいいナンバーがバンバン並ぶショーみたいなものにしちゃってもよかったのでは、とも思いました。最後はガン・アクションでケリつけるんだとしても、そこまでのコンゲームとか駆け引きとか陰謀とかのドラマは、ちゃんと構成するにはアタマが要るので、まあイケコにはそんなものはなかったということだと思うのです。なのであるフリなんかしないでショーにしちゃえばよかったのに、と思ったわけですね。独裁とか世界征服を目論む悪者、なんてどうやっても今や失笑ものでしかないわけでさ…しかもそんなキキちゃん今までにもう何度か観てきましたやん我々。『アナスタシア』『シャーロック・ホームズ』『オーシャンズ11』それに『神々の土地』や『エリザベート』『カサブランカ』のパロディがちょいちょい…って、セルフパロをやるようになったら作家としてホント末期だぞイケコ!とは思うけれど、きっともう言っても詮ないことなのでしょう。お友達がタカスペをやってくれたんだね、というような優しい評価をしていたのですが、そう考えればまあいいのかも…? しかしやはりオリジナル脚本家としての起用はもうやめようよ劇団、大御所なんだし外部で海外輸入ものの演出に専念させてあげたらいいんじゃないですか? オリジナルの才能はあんまないの、もうわかりきってるじゃん…
 ずんちゃんやじゅっちゃんのお役も、もうヘタレならヘタレ、ギャグならギャグに振りきっちゃってもいいかもしれませんね。じゅっちゃんはともかくずんちゃんは、そういうずんちゃんも過去にもう何度も観てきましたよ我々…と言いたいところではありますが。なのでどっちかっつーともえこの方がおいしいようにも見える気もしました。
 ロマノフ兄弟のナニキョロはやはりおもろ要員でしたが(笑)、ひろこぶっきーとキャイキャイしていてまぶしてくよかったのでもうそれでけっこうです(笑)。だがフィナーレのもえこナニーロにはたぎったわ、やめて新たな扉を開けないで…!
 キヨちゃんの身体能力の無駄遣いもよかったです(笑)。あとは私がちょっと前から気になっている嵐乃真くんがなんとマナとシンメで目立つところに置いてもらっていたので、私はウホホ~イ♪でした。すごいスチールだったりっつも堂々1曲ナンバーがあって良き。そしてさらちゃんが! フィナーレでゆりかちゃんに最初に絡みましたよね!? たぎりました! 好きなんです。これからさらに役付き良くなるだろうなあ、頼もしいなあ、別箱ヒロインくらい来てもいいと思うのよー!
 フィナーレの構成もごくシンプルでしたが、デュエダンがベタに白のお衣装だったので私は満足です。なんか思い出しようにリフトが入っていたのには、なんかちょっと、いろいろ気にして配慮してんのかねーみたいなビミョウなキモチになりましたが…そのあとゆりかちゃんひとりターンになるんだけれど、正直ダンサーではないのでちょっと保っていなかった気はしました。まぁさまはさすがだったなあ…
 その前の男役群舞、キキちゃんセンターになってからすぐすっしぃさんタイムがちゃんとあって客席から大拍手、よかったです。逆にそれ以外の退団者ピックアップはなかった…かな?
 バレードもさくらちゃんがポジションを上げられていて良きでした。まあホントに歌える人なので、エトワールでもよかったかなとは思いましたけれどね。ラインナップもずんちゃんの隣で良き。じゅっちゃんはもちろんひろこさらちゃんぶっきーがだいぶ内側に入るようになっていて、これも良きでした。
 しかし博打って八百長ナシならホントに博打で儲かるわけないじゃん、てか儲けるのは胴元って決まってんのになんでみんなそこで稼ごうとするかなあ、男ってみんななんでこんなバカでギャンブルにハマるの?と素直に疑問に感じましたね…カジノ場面はこれまでのものと同じにならないよう、よく工夫されていたと思います(装置/松井るみ)。
 そうだあと、あの年月日の数字の並べ方は欧米ではあまりしないんじゃなかったかな…だから校閲を入れろと何度でも言ってきたのに劇団…!
 有名な台詞はいいところで使われていましたが、映画のテーマソングは権利が買えなかったのか登場しませんでした。一番よかったのはプロローグかな! この時代のラインのスーツを着たゆりかちゃんボンドが本当にカッコよくて、ここで元は取れていたとは思います。
 思えば『王家』の初日も『天河』の初日も観ましたよ、懐かしいですね…ゆりかちゃんは大きな背負い羽を背負って立っても自然体でいられるようになったそうです、すごいことですねえ。ご卒業は寂しいですが、また新たな宙組が生まれていくのだと思えばそれも楽しみです。どうぞ千秋楽までご安全に…!


 ついでに。
 東日本大震災から十二年が経ちましたね。
 なんだかんだ言ってその後も毎年この日は何かしらを観劇している気もしますが、何度も語っていますが私はあの日も宝塚デーでした。日記はこちらこちらなど。
 今も思い出して心が冷たくなるのは、節電で暗くなった銀座の街の景色です。あれには私は本当にしょんぼりしました…津波とかは目の当たりにしていないけれど、これは本当にその場所にいたので、本当に悲しかったのです。
 改めて、犠牲となった方々のご冥福をお祈りします。でも今朝方も揺れましたし、私が生きているうちに大きな地震は絶対に来るので、改めて備えの確認をしたいと思います。そして脱・原発を進めよう、耐久年数の計算法を変えて使い続けるとか駄目だよ、無理だよ。この国の、今の政府に正しく運転できるとは、管理できるとは思えない。アンダー・コントロールなんかじゃなかったってわかったじゃん。今度また災害時に何かあったら、それこそ地球規模でやらかすことになるかもしれないんです、無理ですよ全然…それで電力が足りないというなら規制してくれてもいい。とにかく原発に頼らない方に舵を切りましょうよ、その反省、改善はしましょうよさすがに。忘れっぽすぎるよ政府のおっさんたち…
 この先も楽しい観劇が、イヤまず生活が営めるように、微力ながら自分もがんばりたいと思います。








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