駒子の備忘録

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韓流侃々諤々neo 12『ピノキオ』

2024年08月11日 | 日記
 2014年SBS、全20話。BS Japanextの放送で全20話で見ましたが、時間的におそらくカットあり。

 第一話がちょっと変わっているというか、え?テレビの高校生クイズ番組の話? こういうの、韓国にもあるんだねえ…みたいな感じで、なんの話かさっぱりわからないようなところがありましたが、その後はなかなかおもしろかったです。萌え萌えで見ました。後半はちょっと失速したかな…
 簡単に言うと、デマとか偏向報道による被害、みたいなものをテーマにした、なかなか重い物語でした。それをちゃんとラブコメというかホームドラマに落とし込んでくるんだから、韓ドラってやっぱりすごいです。
 主人公はイ・ジョンソン演じるキ・ハミョン。モデルもやっている俳優さんだそうですが、私は初めて見たかな? ハミョンを名乗っていた時代はほぼ子役です。時系列で説明すると、彼の父親が消防士で、とある出火に出動して人命救出に奮闘するんだけれど、悪く報道されて、追いつめられた長男はテレビ局に訴えに出て逮捕され、母親は次男である彼と無理心中しようとして、彼だけが生き残り、ヒロインの祖父に助けられるのです。
 ヒロインは『相続者たち』でも見たパク・シネ演じるチェ・イナ。こういう庶民派ヒロインが絶妙にハマる女優さんですよね…! タイトルは彼女が、嘘をつくとしゃっくりが出るという「ピノキオ症候群」に罹っている、という設定から来ています。童話のピノキオは嘘をつくと鼻が伸びるんでしたっけ? それで周りにすぐバレるので嘘がつけない、ということでしたよね。しゃっくりかどうかはともかく、嘘をつくことに過剰にストレスがかかるような神経症みたいのものは実際にあるのかな?とか思ったのですが、ドラマの中ではイナは嘘だとわかっている話をしゃべるとしゃっくりが出る、というだけでなく、疑わしい、信じ切れないというだけの話をしてもしゃっくりが出ることになっていて、そんな嘘発見器みたいな機能はさすがに人間にはないだろう、とはちょっと思ってしまいました。というか人間は1時間も話せば、大小含めて嘘のひとつやふたつ出るものなのでは…
 それはともかく、イナの祖父はややまだら呆けみたいになっていて、それはイナの父親の兄である長男を子供のころに亡くしているショックのせいもあるようで、助けたハミョンを長男ダルポだと思い込み、記憶がないようだし家族もいないようなので引き取って、一家四人で暮らし始めるのです。イナの父も話を合わせて彼を「兄さん」と呼び、イナも彼を「伯父さん」と呼んで暮らす、のどかで愛ある家族です。イナとダルポは同じ歳で、幼馴染み兼同級生として育つわけです。韓ドラあるあるですね…!
 イナには離婚して家を出ていった母親がいて、彼女がほぼセカンドヒロインです。『キム・サブ』で私が萌え萌えだった、だいもんにしか見えないチン・ギョン演じるソン・チャオクです。家庭人には向かないタイプの職業婦人で、今やプライムタイムのニュース番組のアンカーウーマンを務める敏腕報道記者、有名人です。イナには母親への思慕があって、ずっと母親の携帯電話に近況メールを送っていたのですが、実は彼女はもうその電話を使っていなくて、イナのメールをずっと読んでいたのがキム・ヨングァン演じるソ・ボムジョでした。彼は文面からいつしかまだ見ぬイナに恋をしてしまい…というような関係性です。
 イナとダルポは報道記者を目指すことになり、同期にユン・ユレ(イ・ユビ)という女性も登場してきて、ひょんなことからダルポが自分のことを好きなのでは、と誤解するのですが、そこで四角関係になるというよりは、あくまで気のいい同僚、という感じで好もしかったです。
 また、イナを好きになりやはり報道記者を目指すボムジョは、実はデパートなどを手広く営む財閥の女社長のひとり息子で、よくあるケースなら悪役の恋敵になりそうなものですが、終止好青年だったのもよかったです。母親がビジネスのため、と法律ギリギリ、あるいは裏で悪いことをしているのを知って苦悩するところがまともだし、イナとダルポが惹かれあっていることを知ってからの言動も人としてちゃんとしていました。ここが気持ちよかったのは、この物語においてけっこう大きかったと思います。
 結局、ダルポの父親を偏向報道で悪者に仕立てたのはチャオクであり、イナはダルポにとって親の敵の娘になるという、これまた韓ドラあるあるの絶妙な構造です。チャオクは出世欲や功名心があるバリキャリで、真実よりもテレビ受けを狙うレポートをするタイプの記者なのでした。ここに、ダルポの兄が復讐を謀って…とか、兄弟の邂逅があって…とか、イナとダルポの恋にふたりは「親戚同士」なのだから、と父や祖父が反対したり…とかでドラマはテンポ良く進んでいくのでした。おもしろかったです!
 チャオクがある種の悪役の座を降りてからの後半は、そういう偏向報道には実業家や政府への忖度があって…とか金権政治の弊害が…みたいなことにもなっていくのですが、やや大味というかステロタイプでリアリティがそれほどなく、中身が薄い展開になっていってしまう印象はありました。そこまではドラマでも踏み込めない…ということなのかもしれません。でも偏向報道や報道被害についてドラマでテーマにするところだけでも、十分すごいよな、と思いました。もう十年も前の作品なわけですが、このテーマはまだまだ響く問題です。
 そんな中で、家族として幼馴染みとして惹かれ合ってきて、でも素直になれなくて…みたいな恋をじりじり進めていく主役ふたりがとても愛しいドラマでした。ラストは結婚式の衣装選び?みたいないちゃいちゃで終わるのですが、いじらしくすがすがしく、楽しく見ました。
 ボムジョの母親の女社長が、毎度のアボジオモニーズで(それでいうとイナの祖父もですが。あとチャオクの後輩のおじさん俳優とか、ホントめっちゃよく見る…!)、でもわりと貧乏オモニをやることが多い女優さんだと思うので、女手ひとつで息子を育て上げるためとはいえ、ビジネスや利権のためなら悪いことも悪びれずやる、という冷酷なビジネスウーマンを鮮やかに演じていて、感心しました。役者さんってホントにすごいなあ。だから、息子可愛さに自爆しちゃうような展開はちょっと残念でもあったんだけれど、ボムジョがいいヤツだったこともあって、いいバランスではあったかと思います。食べていくために必要以上の富は、悪さをしてでも得ていいものではやはりないよね…
 各話のサブタイトルは童話から来ているようでした。良き一本でした。












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