駒子の備忘録

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スティーヴン・キング『アンダー・ザ・ドーム』(文春文庫全4巻)

2014年03月23日 | 乱読記/書名あ行
 ある晴れた日、田舎町チェスターズミルは透明の障壁によって外部から遮断された。上方は高空に達し、下方は地下深くまでに及び、空気と水をわずかに通すのみの壁。2000人の町民は、脱出不能、破壊不能、原因不明の〈ドーム〉に幽閉されてしまった…

 この作家はこういうサスペンス・ホラー、パニック小説が抜群に上手い。楽しく読みました。
 まずたくさん登場人物が出るんだけど、この作家のこの手の小説の場合とにかく死人がたくさん出るので(^^;)感情移入すべき主人公格のキャラクターを見定めるまでは慎重にならなくてはいけません。それより先に悪役が確定したりしますからねー。
 しかし主人公格が見えてくると、ある程度パターンの枠に入ってきて、楽しくスリルを感じながら読めます。
 ただ…老いた、とは言わないけれど、やや想定内だったかな? パターンが見えるし、ほころびも見える、というか。
 まず主人公格、ヒーローポジションのバービーが元軍人というところが、まあいかにもキングというかアメリカの小説ではあります。絶対の信頼感をおいているんだよねえ。もちろんイラクの影とかが差していてそこもポイントになっているんだけれど…もちろん頼れるタフガイであり人道的で紳士的なナイスガイなのですが、やはりそもそも銃器を見かけない国の人間からするとちょっと怖いことではあります。
 ヒロインがジャーナリスト、かつ年上のジュリアっていうのはまあいいかな。でも最終的に事件を解決するのは彼女だっていうところはちょっとすごいですけれどね。
 というかバービーってヒーローのわりには牢に入れられている時間がけっこう長くて、実はあんまり活躍していません。彼が悪役レニー父子をきちんと倒すわけでもない。彼らは病その他で倒れるだけで、因果応報感とか勧善懲悪スカッと感はない。エンタメとしてはどうなのでしょう。
 ジュリアの活躍も、活躍と言っていいのかどうか…そういう意味ではこれはいじめの話なんですよね、すごいよな。

 そんなワケでヒーローがあまり活躍しないとか、悪役がきちんと報いを受けないとか、いろいろ問題はありますが、でもおもしろく読めたことには変わりはないです。
 犬の扱いは素敵だったな。超常現象の扱いというか、犬が霊魂(?)と会話できちゃう感じとかも良かった。とてもキングっぽいと思いました。
 実は未読の作品もまだまだたくさんあるので、やはりまだまだ楽しませてくれる作家ではあります。


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