駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『ダディ・ロング・レッグズ』

2017年11月19日 | 観劇記/タイトルた行
 シアタークリエ、2017年11月18日17時半。

 2012年の初演の感想はこちら、14年の再演の感想はこちら
 どちらもすごく良かったという記憶しかなくて、今回の三演の評判もすごく良くて、やっぱりまた観たくてチケットを工面して出かけてきました。
 何度もリピートしているわけではないのですが、リプライズなどもあるのでさすがに覚えていた歌も多く、「ああそうそう、こんなだった。ああここで泣いた、ここで笑った」と思い出しながら結局同じ反応をしたり…笑って泣いて、忙しい観劇でした。
 楽曲が追加されたり入れ替わったりしているそうですね。確かにジルーシャの成長物語の部分より、ふたりの恋物語の側面が強調されているように感じました。記憶より展開早いな?と(^^;)。でも時代の要請なのかもしれないし、リピーターが多くなってきたのである程度前提条件は省略してもいい、という判断だったのかもしれません。私はダディというかジャーヴィスの登場は遅くなっても、ジルーシャの成長やとまどいやときめきをゆっくりたっぷり描いて観客を彼女に同調させ、この世界に引き入れることに時間を割くのは悪いことではないと思っていますけれどね。
 でも別にあっさりただの甘いラブロマンスになってしまったわけでは当然なくて、ちゃんと真摯な人間同士のおつきあいの物語にこれはきちんと仕上がっているのでした。ジルーシャは成長し学校を終え作家としてひとり立ちして原稿料を手に入れ、ダディが出してくれた学費を返済する当てもできた。「♪チャリティ、誰が誰を」とジャーヴィスは歌いますが、たとえ善意からのものであってもお金の絡む慈善はやはり相手と対等になりえないものです。でもジルーシャはダディと対等なところまでやってきた。まだ婦人参政権のないこの時代においても! だからダディも、というかジャーヴィスも、彼女の愛を乞おうとするならまず対等にならなくてはならない。そして秘密を打ち明けなければならない。結婚に至るような愛には、対等であることと秘密がないことが必要です。
 お金はあって、仕事はできて、でも人づきあいが苦手で苦手なことはいろいろと避けて生きてきたジャーヴィスが、ジルーシャへの愛のためについに膝を屈すことに、観客は快哉を叫ぶのです。彼のためにも。自分が自分であることを引き受けること、それは苦しかろうが恥ずかしかろうが、必要なことだから。それができる強さを得て初めて、彼は幸せを手にできるのだから。ジルーシャはすでにその域にいます、だからジャーヴィスが今度はそこへ向かうのです。そして並び立ち、手を取り合い、同じ方向を向く。美しい…!
 素晴らしい実力者ふたりの、がっつり組み合ったふたりミュージカルで素晴らしい。セットも素敵、照明の効果も素晴らしい。演奏も素敵です。小品なのかもしれないけれど、長く愛される作品になっていってほしいと改めて思いました。ああ、本当によく泣きました…




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