駒子の備忘録

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早見和真『小説王』(小学館)

2016年08月05日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名は行
 出版不況、活字離れ…小説の役割は終わったのか? 三流編集者と売れない作家が、出版界に仕掛けた壮大なケンカ! 全国の書店の方々をザワつかせた問題作がついに刊行。

 幼なじみの編集者と小説家の魂のぶつかり合いを描いた、血湧き肉躍る物語でした。「あるある!」とか「そうなんだ!?」とか、業界人ならずとも、小説を愛読している人なら楽しめる、よくできたお仕事小説でもあると思います。「小説が俺を裏切っても、俺は小説を裏切らない」…そんな台詞が脳裏をよぎりましたよね。
 キャラクターが類型的すぎていなくて生き生きしていていいし、女性キャラクターもなかなかいい感じです。編集者の妻にああいう台詞を言わせることは、凡百の男性作家にはちょっとできないと思うなあ。感心しました。
 でもこの作品自体は、この作家が担当編集とのあれこれを元に書いたものではない…のかな? というのもこの本の帯やカバーに書かれたキャッチやあらすじは私にはちょっと的外れに思えたからです(普通はこういうものは担当編集者が書きます)。これじゃ売り逃すよ、もったいないよ。私だって眉にツバつけて読み始めたもん…
 あ、あと、作中作の文章は出さない方がよかったと思いました。歌手を主人公にした漫画で上手いものは歌詞を書いたりしないのと同じで、想像させておくだけでよかったんですよ。ここは私が担当編集だったらそう指摘して、作家と喧嘩してでも止めさせたな、と思いました。
 でも、騙されたと思って(?)読んでいただきたい1冊です。熱くなれます、おもしろかった!



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