駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇雪組『はばたけ黄金の翼よ/Music Revolution!』

2019年10月14日 | 観劇記/タイトルは行
 カルッツかわさき、2019年10月13日13時(初日)、17時。

 中世、北イタリア。湖の国イル・ラーゴの若き領主ヴィットリオ・アラドーロ(望海風斗)は、宿敵である隣国ボルツァーノの領主カンポ公を暗殺する。その後、ボルツァーノの宰相グリエルモ伯爵(久城あす)の策略で新カンポ公ジュリオ・デル・カンポ(永久輝せあ)の異母妹クラリーチェ(真彩希帆)と結婚することになったヴィットリオは、他の女たちとは違い、自分の道は自分で決めたいと語るクラリーチェに興味を持つ。だがヴィットリオの影とも呼ばれる腹心の部下ファルコ・ルッカ(朝美絢)は、クラリーチェの存在がヴィットリオとイル・ラーゴを滅ぼすことになると危ぶみ…
 原作/粕谷紀子、オリジナル脚本/阿古健、脚本・演出/小柳奈穂子、作曲・編曲/寺田瀧雄、青木朝子、編曲・録音音楽指揮/御﨑惠。1985年に当時の雪組トップスター麻実れいのサヨナラ公演として上演された舞台を潤色・新演出で34年ぶりに再演。

 台風19号の上陸で12日の公演が中止になり、この日も開演を2時間遅らせての上演になりました。なので結果的に初日公演を観劇することになりました。
 被害に遭われました方々にお見舞い申し上げます。
 私は無事でした。もともと心配性の父親があれこれ常に備えているのを見て育ったのでひとり暮らしを始めてからも食料の備蓄などしている方でしたが(単に無精で買い溜めしがちだとも言う)、震災以降さらに避難リュックその他の準備も自分なりにですが念入りにしてきたつもりです。結果的にはうちの立地や方角からは前回の台風より雨風は弱く感じましたし、去年の台風ではリビングの網戸が外れて寝室の室外機置き場に引っかかり、その室外機も位置が大きく変わっていて再設置に時間がかかったりしていろいろ大変だったのですが、そういった被害はまったくありませんでした。窓枠に養生テープを貼ったり桟に新聞紙を詰めたりもしたのですが、風向きの関係か隙間風の吹き込みなどもほとんど感じませんでした。停電や断水にもならず、気圧の関係かやたら眠かったので昼寝したりはしましたが、基本的には録画消化と読書でのんびり家に籠もっていました。テレビのニュースやツイッターは不安になりすぎない程度にちょいちょい覗いていて、ツイッターはやはり心の支えになりました。地域メールや防災アプリが知らせてくる警報類は過去最高数で怯えましたが、備えがある以上はヘタに近所の小学校の安普請の体育館に避難するより自宅の方が安全、と心に決めてじっとしていました。むしろ近くに川のある実家の方が心配でしたが、父親がしっかりしたLINEの返信をしてきたので安心できました。
 生徒さんたちは会場の近くの宿泊だったのでしょうか。雪組KAATは初日開いてすぐ翌日の公演が、そして星組は前楽が中止となってしまいました。ファンの心中は察しきれませんし、生徒もできるものならやりたいと思っていたことでしょうが、まずは安全第一で判断が下されてよかったです。私も公演中止と鉄道の計画運休との発表でいざよくあきらめられました。そうでなければやはり万全の支度をして自己責任で行くだけ行こうとしていたと思います。
 この日も、鉄道の運行開始が思いの外早く、スムーズに現地につけて助かりましたが、何時間かかってでも行こうと考えていたりしました。改めて、日々、あたりまえのように、定刻どおりに電車に乗れて定刻どおりに公演が観られていろいろものが買えて運んでもらえて…ということの奇跡に感謝します。それと同時に、全体にもっとバッファを儲けないといろいろ危ういだろう、とも改めて感じました。全国ツアーなんて特に、乗り打ちもけっこうあるようなスケジュールで組まれていますが、今までなんとかなっていたのが不思議なくらいなワケで、今後は今回のことを教訓に、もう少し余裕を見ていただければと思います。興業としては大変でしょうが、生徒のためにも、ファンのためにも手厚くしていった方が、長期的に見ていいに決まっていますからね。残念ながらまた休演者が出てしまいましたしね…
 そして私は当日、同じ回を観るお友達に声をかけてもらって開演前にお茶ができて終演後には呑めて、すごく楽しくて発散して、逆に、ああやはりここ数日はストレスかかっていたんだな緊張していたんだな、とわかりました。お互いの支度や顛末をおもしろおかしく語って、もちろん公演についての萌えポイントなんかもわあわあ語り合って本当にリフレッシュしましたし、被害がなかったからこそ笑い話にできるので、改めてありがたく感じました。
 全国ツアー、くれぐれも事故のないよう、ご安全に。すべての公演が、エンタメが、インフラが、日常生活が、いつもどおり、そしてより良く豊かに優しいものになっていきますように。微力ながら自分も何かしら努めたく思います。

 さて、では以下公演の感想を。完全ネタバレで語りますので、未見の方はご遠慮ください。もうご覧になった方、残念ながら観る予定がないという方にお読みいただければと思います。毎度のことですが2回観ただけの、ごく個人的に感想であることはお含みおきください。
 原作漫画は未読、初演もたーこさんがイチロさんを襲う場面(オイ)とキンキラプロローグの主題歌サビくらいしか知りません。てか『はばたけ~』と言えばこの場面がよく再生されますがほぼレイプやろ、という気もしていて、でも今回はそんなことはなかったので、やはりなーこたんの手がかなり細かく入っているのかな、と感じました。ブツブツザラザラでもいいから初演がまるっと見てみたいなー、スカステで放送されないのかなー。どう改変されているのかが知りたいです。原作漫画ともけっこう違うと聞きますよね、読んでみようかな…

 だいもんのヴィットリオ。ナウオンでは、のし上がり系とかではなく最初から嫡子で御曹司で今は一国の王で、というタイプの役は珍しく難しい、みたいなことを語っていましたが、その辣腕ぶりから来る傲慢さやワンマンぶり俺様ぶり、でも臣下たちを心酔させるカリスマ性、リーターシップみたいな魅力もたっぷりの、良き主人公像でした。意外に書き込みや説明がないキャラクターで、昔のお芝居にわりとありがちな、それで十分やろみたいな放りっぱなし感は感じますし、だいもんの歌が意外に少ないので、1曲生い立ちを語るようなバラードみたいなのがあってもいいのにな、とは個人的には思いました。「♪強くあれと父に教わって育った、王たるもの愛されても愛するな、愛は弱みだと、なのに今青い小鳥が飛んできて歌う…」みたいな、さ(笑)。ナウオンでだいもんとあーさが、ヴィットリオとファルコの友情の歌みたいなのがないので腹心で親友でみたいなことの表現が難しくて、みたいなことを話していたときにだいもんが即興で作詞作曲した歌がいかにもそれっぽかったわけですが(ホントこのひと宝塚ファンというよりただのオタク、しかもこちら側のオタクですよね…(笑))、主人公にもぜひ欲しいと思いました。ただ今回に関してはなくてももちろん背景は類推できるし演技として目に見えているもので一応十分ではあるとも思えますし、だいもんの美声はラストまで取っておくことであの歌での説得力を増す効果にしたのかもしれません。
 再演が決まったときにみんなが言ったという鬘に関しても、すごく素敵でした。プログラムではちょっともっさりして見えたけれど、舞台では全然そんなことはなかったです。大きなお衣装も着こなしていましたし、さすがでした。
 ただ全体に、これは出演者全員に言えることなんですが、もっともーっとたっぷり大芝居してもいいんだろうな、と思いました。もっと大仰さが欲しい、クラシカルさが欲しい。古臭い芝居をあえてやっているのだ、というギミックがあった方がいいと思うのです。でも普通に聞こえましたしなんなら早口に思えるときもありました。全ツは各会場の音響設備がいろいろだろうからまた大変なんでしょうけれど、だからこそさらにもっとゆっくりたっぷりしゃべった方がわかりやすいし雰囲気が出やすいだろうと思いました。
 ヴィットリオの本編での登場シーンのベタベタさとか、こういうお芝居だからこそ失笑することなく成立するので、今後も絶対にこういうもののときには受け継いでいってほしいと思います。なーこたんはニヤニヤしながら意識的に残したのではないかしらん。ファルコのこじらせソングの前奏、入り方、後ろの幕のしまり方とかもたまりませんでしたもん。もちろんあの超直接的な歌詞もね! いやーベタ大事です。
 一方、違う意味で「なーこたんたら!」と思ったのが「フッ、おもしれー女」ですよ! いやヴィットリオの台詞はこんなじゃないんですけれど、これ系の台詞を、つまり最近の(というかちょっと前の)少女漫画の流行りへの揶揄をぶっ込んでくるところですよ! この台詞、おそらく原作漫画にはないですよね!?
 つまり、ちょっと前の少女漫画では、学園一のチャラモテ男に才媛でもなんでもないごくごく普通の女の子であるヒロインが忖度せずつっかかったりなんかしたりして彼の興味を引き「おもしろいヤツだ」と認識されそこからラブが始まる…みたいなシチュエーションのものばかりだった、という皮肉を、あえてやってみせてるんだと私は思ったのです。さすがだいもんとはまた違う意味でのオタクだよねなーこたん…
 でもここより何より霧の十字路でほぼ一目惚れだったんだろうなと思うとホント微笑ましいですヴィットリオ…意志の強そうな女が新鮮で惹かれる、なんてやっぱり単なる後付けで、単にやっぱ顔が好みで可愛いから気になったんやろオイ、と言いたい(笑)。ボルツァーノの舞踏会で兄と再会して喜ぶクラリーチェにケッて顔して不機嫌になっちゃったり、騎士たちと次々踊るクラリーチェが楽しそうなのに妬いてダンスの相手に名乗り出ちゃうところとか、ホント可愛いったらなかったです。
 やっぱり相思相愛、いいですね! 『20世紀号に乗って』みたいなハチャメチャコメディももちろん楽しかったけれど、ド少女漫画のキュンキュンぶりはやはり王道のどストライクで、円熟期に入りつつあるだいきほでやってこそのいい案配のラブを感じました。今後どんどん芝居が深化していくんだろうなあ、いいなあ、梅田チケ落ちてこないかなあ…

 クラリーチェのきぃちゃん、可愛いカワイイ可愛い! イチロさんはもっと硬そうな印象だったけれど(今ならあみちゃんが本公演ヒロインやるようなもんだもんね、そりゃいろいろアレだよね)、きぃちゃんはさすがですよやわらかくてひたむきでしなやかで、かつカマトトにならない絶妙さ! 鬘もいい! お衣装もどれも素敵! 美声はもちろん、素晴らしいヒロインっぷりでした。個人的には特にファルコに首締められてるときの様子がホントにしんどそうで迫真で、あまりの上手さに舌巻きました(笑)。
 ただ、これはきぃちゃんのせいでは全然ないんだけれど、ジュリオに唆されてヴィットリオの浮気?現場を見てしまうくだりは、実際にあった方がわかりやすかったのではないでしょうか。カーテンの向こう、シルエットのふたり…程度でいいので。そしてショックを受けたクラリーチェがそこを立ち去ったあとか、もっとあとの全然別の場面ででもいいのだけれど、父に言われてヴィットリオの夜伽(笑)に来たビアンカ(彩みちる)をヴィットリオは実際には抱かなかったのだ…とした方がいいと思います。原作はいざ知らず、ここは宝塚歌劇として、また女性が望むラブロマンスのコードとして、ここでやる男なんざダメですよ。この時点でクラリーチェが心はいざ知らず身体だけはすでにヴィットリオに与えてしまっているのかどうかは謎ですが、それとは別にヴィットリオの気持ち自体はすでにクラリーチェに傾ききっているので、他の女を受け入れてちゃ駄目なんですよ。どんなプレイボーイだろうとヒロインと恋に落ちたら以後一途、は鉄則です。当時のこの国この社会この階級の男女間ではこれが普通、みたいなこととは別に、今見る観客に受け入れられるものにしなくてはならないのです。ヴィットリオとビアンカは寸止め、未遂じゃないとダメ。あとでジュリオが受け入れようと謝ろうとビアンカが謝ろうと受け入れようとダメ。ここでビアンカが「ヴィットリオさまは何もなさいませんでした」とか言ってもいいし、その前にヴィットリオがジュリオに「他の男の名を呼んで泣き叫ぶ女を抱く趣味はない」とかなんとか嘯いてもいい。とにかくここはクリアにしてほしかったです。
 あとラストの湖畔のやりとりも、この私が言うのもなんですが理屈っぽすぎる気がしました。ヴィットリオがズバリ、「俺はおまえを愛している、だからおまえの意思を尊重する、おまえの行くべき道はなんだ?」と問い、クラリーチェが「兄の言うままに嫁いできたけれど、今は自分で考えて自分で決めた、あなたのそばにいたい、あなたとともにはばたきたい」と応えればいいと思うのですよ。もちろんそれはそのあとの歌でちゃんと表現しているんだけれど、その前の出ていく云々がとにかくもう、荷物も持たずに「どこか遠く」に行くとか言ってる時点ですでにノープランでダメダメで、クラリーチェを自立した意志あるヒロインというより愚かな世間知らずの小娘に見せているだけだと思うので、カットした方がいいと思うのです。だいたい教皇の覚えもめでたくなっちゃってなおさら離婚なんかできないじゃん、無責任にも見えちゃうし…ホントここはど直球ベタベタでいいと思うんですよ、いくら現代の働く自立した女でも好きな男に物語の中でまで「好きにやってこい、俺はいつでもここでおまえを待っている」なんて言われたくないと思うのです。そりゃ冷たく聞こえるよしんどすぎるよストイックな生き様の強要だよ、なんならはばたきたくない羽を休めてぬくぬくしていたいのが本音なはずですよ(笑)。一瞬独立独歩オチになるの!? ヤダ!! と怯えましたもん、私…さあ結婚式だ!みたいな純粋ラブラブハッピーエンドでいいんですよ、ここには現代フェミニズムは要りませんよなーこたん…

 初演でもファルコがモサクさんなので二番手役で、ジュリオが三番手のかりんちょさんでしたが、どうしてどうしてジュリオの方がいい役だし大きくも見える気もしましたが、これはあーさとひとこのニンに合わせたのでしょうか…こういうあーさは『ひかりふる路』でこういうひとこは『ドン・ジュアン』で観ましたがしかし、いいものはいいのだからこの程度の繰り返しは問題ないのかなと思います。かつふたりとも進化していましたしね。
 ファルコはこれまた説明が少ないお役で、ヴィットリオの「影」を自他ともに任じる腹心でありともに育ってきた親友、です。乳兄弟なのかな? 主君を「光」たらしめるために自身は「影」に徹して、権謀術数駆使してあらゆる汚れ仕事を引き受ける家系の生まれ…オタク皆殺しの萌えですね! 俺が領主の息子の方だったら、みたいな嫉みはないんでしょうね。ただ自分がちゃんとした「影」であるためにもヴィットリオには「光」であってもらわなければならなくて、それであればこそ他の臣下たちとは違い自分だけがその孤高で絶対で唯一のものの唯一の相手であれる、という誇りで自分を満たしてきた人なのでしょうね。だからヴィットリオが誰かを本気で愛することが許せなかった…
 当時の少女漫画ではあるし、原作ではゲイっぽい描かれ方だったんでしょうか? でも私はあーさファルコを観ていて、ゲイというよりは単なる女嫌いか、はたまた宦官ではないにせよむしろ性的不能者っぽい空気を感じました。ヴィットリオを愛しているからやっているわけではない、というのが上手く出ている、という意味では正しいのかな。今っぽく変に女々しくゲイゲイしくBLっぽくやるのは違う気がするので、ちょうどいい案配だと思いました。初演ではヴィットリオを鞭打つのがファルコで、そこでこうした心情吐露もされていたそうですから、そのあたりがカットされている形になりますが、十分類推できるしいいのかな、という印象です。
 あとはホント美形! この美貌はホント武器ですよね。
 最後にジャンヌ(星南のぞみ)にペンダントを渡すのは…多少の想いはなくもないのかもしれないけれど、でもそれは罪だよ、綺麗にフッてやった方が女はさっさと次へ行いけるのにひどい男よのおファルコ…と思ったりもしました。ラストの十字路の場面は上手い演出で、憎いです。

 ひとこジュリオもビジュアル最強! コスチュームもの、もっとやればいいのになあ雪組!! そしてこの物語は、宰相に操られていた傀儡の御曹司が真に君主として目覚めるまでの成長物語、でもありましたね。ひとこはそれをすごく上手く体現していて感心しました。優しいんだけど甘ちゃんな感じとか、優柔不断で情けないギリギリな感じとかがすごくよかったです。この時代のこんな境遇の男が普通、腹違いの妹になんかあんな優しくないよ? 父の愛人にすぎなかった妹の母親に関してあんなふうに優しく妹にフォローしてあげるなんてなかなかないよ? おそらくここも愛なき政略結婚だったのであろうジュリオの母親ももう亡くなっているのでしょうね、家庭に恵まれず寂しく育ち、だから幼なじみのように育ったビアンカとほんわか愛情を育ててきたのかもしれません。はー萌える。
 でも冒頭、グリエルモに「策略」って言うのはおかしいよ、これはマイナスのニュアンスの言葉でしょう。「計略」か「政略」かなあ? ロレンツォ(綾凰華)なんかがグリエルモを策略家と評するのはもちろん正しいわけです。
 初演から改変されて鞭打ち担当(笑)になっていて、ここでビアンカのことを含め宰相の言いなりになっていることを揶揄されて激高しての行為、となっているので、ヴィットリオもジュリオも痛々しくてせつなくてシビれました。まあその前にさんざん拷問していることは事実で、臣下にも正気を心配されちゃってるくらいなんだけれど、その危うさもまたいいキャラだと思うのです。
 なのでビアンカは傷物とならずにジュリオの元に戻ってきたことにして、ふたりでがんばってボルツァーノを治めていってください…

 ファルコの妹ロドミア(朝月希和)、ひらめちゃん。大きな役で驚きました。柴田ロマンならありそうだけれど、油断していました。初演は歌姫タイプの別格娘役が演じていたのでしょうか?
 ひらめちゃんってホントは路線っぽい役の方が上手いタイプだと私は思っているのですが(なのでりさちゃんでもよかったと思うけれど、そうなると『PR×Prince』と同じになってしまう…)、組替えの餞別でもあるし、よかったと思います。
 ただ、これもひらめちゃんのせいではありませんが、ロドミアは未亡人か人妻にしないとダメじゃないですかね…いくらヴィットリオが王様で俺様でかつロドミアの方から迫ったんだとしても、嫁入り前の貴族の娘をやっちゃってポイってのは許されなかったろうと思うのです。あと腹心ファルコの妹だってのもホントは引っかかりあるはずやろ、と思う。未亡人(なので生娘ではない)とか人妻(なので浮気という形である)ならセーフな世界だと思うのですが…あと、ロドミアが世継ぎの剣を欲しがるのが、ヴィットリオの愛が欲しいというよりは一度やったんだから王妃の座をくれと言っているようにも聞こえかねないなと思ったので、そこはもう少していねいな台詞が必要かなと思いました。
 でも酒場での歌姫っぷりや男装してきたクラリーチェ相手のいかにも芝居っぽい芝居でのカバー、ベタベタだけど観客を泣かせる死に方、とてもとてもよかったです。

 ロレンツォのあやな、やはり華がありますよねー!
 親衛隊、というのは近衛兵みたいなものかと思うのだけれど、今だとファンクラブみたいなものと混同されかねないし(笑)、むしろスパイっぽくあちこち出かけさせられているようなので、単に「側近」「臣下」の方がわかりやすいかもしれません。
 途中、ボルツァーノでの舞踏会で騎馬試合に参加しに来た騎士かなんかのバイトをするんだけど、華がありすぎて目を引きすぎて「ロロロロロレンツォ寝返ったな!?」と思いましたマジで(笑)。ジーノ(彩海せら)しかお供に来ていないし…なのでロレンツォは留守を守っているとか国境で待機しているとかの台詞を足してほしいです。そうしたらバイトだな、と安心して観ていられるので(^^;)。
 ロドミアにおネツ(笑)のジーノとロドミア、ジャンヌと4人で歌う歌、可愛いですね。当時のこの世界観での男女観を上手く説明していました。そういう、要するに男尊女卑で女は政治の道具で…みたいな世界観と現代フェミニズムと一夫一婦のロマンチック・ラブ・イデオロギーとを上手く摺り合わせていたのはなーこたんの手腕かなと感じました。

 ジーノあみちゃん、あやなともどもちょっと『Pプリ』と似ちゃうイメージのお役だったかもしれませんが、やはり華があってチャーミング。ヴィットリオがファルコに裁きを下すあたりでの立ち方があまり良くなかったのがちょっと目立ちました。あやなはちゃんと動揺する芝居をしてなおかつ美しく立てていたので。でもこういうのも場数ですよね、伸び盛りだろうし期待しています。

 ボルツァーノ宰相グリエルモ伯爵の娘にしてジュリオの婚約者ビアンカ、みちる。これまた可愛い、上手い!
 さらにジャンヌ、りさちゃん。ヴィットリオの親衛隊ロレンツォの妹でファルコさまラブ。そしてロドミアとなんかユリユリしい。素晴らしい。
 私は顔と声が好きな娘役さんで、でもちょっと棒…とずっと思ってきましたが、むしろあまり路線っぽくない役の方がハマるのかもしれませんよね。今回はそれからしたら路線っぽい役ですが、そう大きくないところがちょうどよかったのかもしれません。
 てか柴田ロマンでなくてこんなに娘役に役が多い舞台は久々に観た気がします…! やはりあちこちに感情移入できて忙しく楽しく、芝居に厚みを感じさせてくれました。

 グリエルモのあすくん。最近こういう役どころを任されることが多くなってきたように思いますが、高笑いとかホント上手い憎たらしくてムカつきます大正解。教皇ニワニワもさすがで、あとは修道院長の白峰ゆりちゃんがいいお芝居をしていたのが印象的でした。あとどこでもかりあんの顔が好きすぎて惹かれました…
 
 恋! 政治! 戦争! 策略! の詰まった、ロマンチックな作品で、いい再演だったなと思いました。私は韓ドラなんかでも「政略結婚からのラブ」みたいな設定が鉄板で大好物なのですが、わかりづらくもなく、ベタで王道で、萌えまくりときめきまくりました。
 原作タイトルは『風のゆくえ』ですが、確かにそのままだと宝塚歌劇のタイトルとしてはやや地味かな。歌詞にちょいちょい入っていていい工夫だなと感じました。ヴィットリオの名字が金を意味するものであること、「愛することは捕らわれることだ」と教えられて誰も愛さず頑なに孤高であろうとしてきたヴィットリオが、クラリーチェを知り愛に目覚め、むしろより自由にはばたけるようになる物語です。よくできていました。
 全国ツアーとしてもいい公演だと思います。わかりやすい王道ロマンだし、簡素なセットで十分耐えました。各地でときめきの翼を広げてきていただきたいです!


 ダイナミック・ショーの作・演出は中村一徳。
 『エクレア』を観てしまうとやはりあちらの方が好みで、今年のナンバーワン・ショー(レビュー)はあちらだなと思ってしまいますが、ダンサブルなこのショーもやはり楽しかったです。
 私は本公演をそんなにリピートしていないので、どこがどう変わったとかにはくわしくないのですが、とりあえず冒頭、だいもんの周りにあーさ! ひとこ! あやな! あみちゃん! と次々現れゴレンジャー感を出すのがたまりませんでした。カチャのところをあーさがやって、ガウチョ場面はひまりばっか見てたんだな自分、と今さらに発見。今回はぶーけちゃんはどこでも可愛いなーと思いました。
 咲ちゃんのジャズはあやながセンター。初日は咲ちゃんの脚の長さってやっぱり異常とか、あの洒落た抜け感ってやっぱなかなか出せないんだなーとかいろいろ痛感したりもしましたが、二回目にはもうあやなから力みが取れていて、ジェンヌすごいな!?と震撼しました。あとあゆみちゃんやひーこ、ひらめがダンサーとしてピックアップされがちですが、りさちゃんもバリバリだね!? 見ていてとても気持ちがよかったです。
 中詰めは客席降りもあり、狩りに行くだいもんを本舞台でプンスカ待つきぃちゃんの図が可愛かったです。今後はご当地アドリブなんかやっていくのかなあ?
 そしてカノンはやっぱりひとこ! メンバーが減っても熱さは変わりませんでした。
 「Music is My Life」はだいもんに組替えのひらめ、ひとこが絡むくだりもあり、涙…
 そしてあみちるのそんな夜ってどんな夜だよ徹夜でマリオカートとかかなホラー映画見てキャアキャア言いつつポテチ食べまくりとかかなカワイイなオイ?からの、サーモンピンクの変わり燕尾のひとこ兄さんにバトンタッチ! オトナのキュートセクシー漂うサッチャナイへ…花組カラーが似合うよひとこ…(ToT)
 そしてオペラガン見だったかりあんのロケットA! テレがあるな振りきれここはブリッブリのきゅるんきゅるんでいいんだウィンクがっつり飛ばせ! もうじきダルマも卒業ですよ買われているんですよだからこそここは自信持ってやっとけ! とお手紙書きたくなりましたはーカワイイ、顔が好き。
 フィナーレの淑女のナンバーは全員鬘が本気で素晴らしくてやっぱり目が足りませんでした…「Tico Tico」でフィナーレに中詰めもう一回、みたいなのは最近のBのマイブームなんだと思うんですが全ツだとやや重かったかな…あーさに新場面とか作ってあげてもよかったかもしれません。デュエダンのカゲソロのブーケ、ブレスがやや気になりましたがこれも場数でしょう。この先にさらに期待!
 エトワールはひめかちゃん。しかしホントずっとこういう歌起用ですね、何が足りないの…?

 カテコではやはり通常の初日のご挨拶というよりは、前日の初日が中止されたお詫びや当日の開演時間の変更のお詫び、台風被害のお見舞いに徹した印象で、晴れやかさが少なく寂しかったですが、いつもとは違う思いで観劇しに来た気持ちが報われ癒やされるときでもありました。横浜出身だいもん、鎌倉出身あーさ始めご当地ジェンヌが嬉しそうにしていたのもよかったです。
 交通機関が復旧していないところも多々あるかもしれませんが、お気をつけて、全国に元気を振りまいてきていただきたいです。私は現実を忘れるためだけにエンタメに向かうようなことはあまりしませんが、今回は3時間の間だけでもほっとできる時間を、現実を忘れて楽しむ時間を与えられればそれがベストかと思います。がんばってきてくださいませ! 
 そして私は梅田のチャンスを窺おう…(笑)





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