駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

虫歯『2と車(ツーとカー)』(集英社EYES COMICS .Bloom)

2022年12月29日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名ま行
 来間に出会ったことで、二兎の人生は大きな転機を迎える。常識に縛られないギタリスト×人間嫌いのシンガーの、新解釈バンドBL。

天国 in the HELL』(改めて、どーいうタイトルなんだ)が良かった作家さんの新刊なので、手にしてみました。あと、何度でも言いますが私はバンドもの、音楽ものにヨワいので…
 芸術、才能、センス、嫉妬、憧れ、プライド、虚栄、観衆、欲望、成功、金銭、人気、マネジメント、栄光…みたいなものが愛憎に絡む人間関係のドラマかつラブストーリー、みたいなものに私はとにかく目がなくて、これもそんな物語です。
 ただ、パターンとしてはわりと据わりが悪いところもあるのですが。二兎の葛藤が何でそれはどう解決されるのかとかが意外と具体的にはボカされている、ないしごまかされているようにも思えるので。もちろんBLなのでそこが主眼ではないということなのかもしれませんが。
 まあBLとしても、フツー片方は白髪にしない?とかがあるのですが。あと個人的には来間みたいなタイプのキャラにまったく萌えないので、そこは残念でした。でもふたりとも、これまで女性とはほぼ経験がなかった、童貞同然自慰専門、みたいなキャラになっているのが、移行(笑)がナチュラルに思えてよかったかな。ホラ、「同性を好きになったんじゃない、キミだからスキなんだ」みたいなのって、今やサムいので…
 でもこういう、コミックス1巻になることを想定された長さの連載作品って、最後にくっついてセックスして終わり、ってのがほとんどなのは何故なの…? なのでそういうシーンがラストにちょっとだけあるだけなので、たとえばそれはすでにくっついているカップルのぐるぐる漫画だからかもしれないけど毎話ほぼ必ずやってみせる『こんなの、しらない』とかのサービス精神を見習ってほしい、とかはちょっと思いました(あれはTLだけど)。それとも一応紙の雑誌に掲載される作品だとこういうコードなのかなあ? ネット発だとまた違うのでしょうか。イヤ別に毎回濡れ場を見せろよと言いたいわけではないのですが、逆になんか最後にだけお約束のように、儀式のように、単なる決まりのようにサッと描くだけってのもなんか寂しくないか?というようなことが言いたいのです。私がたまたま観測できている範囲でのだけのことかもしれませんが…
 あとディルドの輪郭はちゃんと描いてペニスはボカスのはなんなんだ、とかはつっこみたいです。しょーもなくてすみませんが…
 音楽ものとしての表現はなかなかおもしろかったです。古くは『TO-Y』、『EXIT』(続き描いて、お願い…)なんかもそうだけど、歌詞はいっさい出てこない。音に関しては「ジャカジャカ」みたいな描き文字はあって、これもなしにする音楽ものが多いのでわりと意外でしたが、いいなと思ったのは星が飛ぶ表現。あのキラキラの、トゲトゲの、星のマークの記号を飛ばすことで音楽を、そのときめきを表現しているところが、好きです。漫画って色も音もないので(最近のフルカラーのウェブトゥーンとかはそのうち音もついて再生されるようになるのかもしれませんか)、そこで音楽をどう表現するか、というのは漫画家の腕の見せどころだと私は考えていて、私はこのジャンルの作品のそうした点も愛でてもいるのでした。
 ところでタイトルはとても洒落ていますが、実際にはこれは作中には出てこなくて、彼らのバンド名は単に「2と車(にとくるま)」なようです。不思議…ってかツーカーってナニ? ツーってトントンツーのツー? じゃあカーは何? 昔の携帯電話のメーカーだかブランド名がここから来ているのはもちろん知っていますが…ちょっと調べたら「つぅことだ(ということだ、の意)」「そうかぁ」で話が通じるから、という「つぅと言えばかぁ」説が…ホント?
 まだまだ知らないことが世の中にはたくさんあるものですねえ。来年もいろんな作品との出会いに恵まれたいものです。




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