作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv17827/
脚本家の原田英雄(風間杜夫)は、離婚し、仕事場として使用していたマンションの一室で生活するようになる。寝起きするようになった初めて、そのマンションのほとんどの部屋は事務所として使用されており、住んでいるのは自分と、もう一部屋だけらしいと知る。
そんな部屋に旧知のプロデューサー間宮(永島敏行)が訪ねて来て「離婚されたのだから奥さんに近づかせてもらう」と宣言され、原田はショックを受ける。その晩、もう一部屋の住人と思われる女性(名取裕子)がシャンパンを持って訪ねて来るが、間宮の話で気分が悪かったため、女性を追い返してしまう。
数日後、ふらりと生まれ育った浅草へと足を向けた原田は、そこで30年近く前に亡くなったはずの両親と出会う。その直後に、ケイと名乗る女性とマンションのロビーで再会したのを機に、深い仲になる。
懐かしさのあまり、たびたび浅草の両親のアパートを訪ねる原田だが、周囲が心配するほどにやつれて行く。しかし、原田自身が鏡を見ても、以前と変わらない自分がそこに映っているだけだった。ケイに「本当に見えないの?」と驚かれ、もう両親に会ってはいけないと強く止められるが、再び、浅草へと原田は向かうのだった……。
山田太一著の同名原作小説を映画化。
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山田太一が亡くなりましたね、、、。彼の書いたドラマリストをwikiで見たところ、ちゃんと見たのは「ふぞろいの林檎たち」だけ。しかもこれパート4まであったんですね。3までは知っているけど、ちゃんと見たのは1だけかな。4はオンエアしていたことさえ知らなかった。あと、大河ドラマの「獅子の時代」(1980年)は最初の方は見ていた記憶が。
彼のドラマは、セリフ回しが独特過ぎて、ちょっと苦手だったのもあり、あまり見たいと思えなかったのだけれど、先日、追悼企画でNHKが「今朝の秋」というドラマを放映していたので録画して見てみました。1987年オンエアだったようだけど、もちろん、知らなかった、、、。感想は、……あんましピンと来なかった。主演は、笠智衆。縁側で、加藤嘉と並んで座って喋っているシーンがあるんだけど、何とも言えない雰囲気でした、、、、ごーん。
それはともかく。本作は、4月にアンドリュー・ヘイ監督によってリメイクされた「異人たち」が公開されるため、ちょっと見ておこうかな、と思った次第。ジェイミー・ベルが出るし。ついでに原作も読みました(1日で読めます)。
◆良い映画です、、、が
終盤までは、かなり原作に忠実に作られた、しかも大林宣彦監督作にしては実に味わい深い真っ当な映画だったのだけれど、、、肝心のオチがっっっ!!(後述)
というわけで、あのオチさえなく、原作に沿ったものにしてくれていたら、多分、の数はあと2個くらい増えたかもしれません。本当に、そこまでは良い映画だったのです、、、嗚呼。
主人公の、ちょっとくたびれた脚本家・原田を演じるには風間杜夫は渋みが足りない感じもしなくもないけど、まあ許容範囲。彼は演技が上手いのか上手くないのか、、、イマイチ分からない。
んで、原田が邂逅する亡き両親を、片岡鶴太郎と秋吉久美子が演じているのだが、この2人が実に素晴らしい。何か、本当に下町にこんな夫婦いそう、、、な感じ。
鶴太郎氏は、本作での演技が好評で、本格的に俳優業に転じたとのこと。確かに彼は演技巧者だと思うなぁ。大分前に、大河ドラマで北条高時演じていたんだけど、すごく面白くて上手だった。めったにTVに出ている人を褒めない母親が「この人上手やなぁ」と感心していたのには驚いたけど。でも、ホントに良い演技をしていた、本作でも。
秋吉久美子も、まだ若いお母さんのままで可愛らしさもありつつ、落ち着かない夫をどーんと迎える肝っ玉な感じもあり、おっさんになった息子に別れを告げられて涙するところは、こちらも泣けてしまった。
……という具合に、なかなか良い人間ドラマになっていたのに、、、、!!! やはり大林監督、やってくれちゃったよ、、、ガーン。
~~以下ネタバレです~~
◆大林監督の本領発揮
原作では、名取裕子演ずるケイも、実は異界の人だってのがオチなんだが、その描写はさりげなくグロテスクで、怖ろしいというよりは、私は何とも言えない失望を覚えたのだった。……あ、小説に対してではなく、原田の置かれた境遇に、、、ね。
離婚で、自覚している以上に精神的にダメージを受けていた原田が、亡き両親と邂逅したり、ステキな女性と新たに恋愛関係を築いたりして、どうにか立ち直りつつあったと思っていたら、それらは全部、この世ならぬものだった、、、なんて、あまりに残酷ではないか。それで、すごく落ち込んでしまったのよ。とはいえ原作の読後感は悪くなく(それはラストの原田の言うセリフが良いからなんだけど)、この辺は、さすが手練れの脚本家・山田太一だなぁ、、、と感じた次第。
……それなのに。それらをぶち壊すような終盤の展開は、ズッコケもいいとこで、ガックシを通り越して爆笑しながら見てしまった。なんじゃこりゃ、、、状態。
詳細は書かないけど、早い話が、思いっ切りB級(いやC級かな)ホラーになっていた、ってことです。どんな風にB級かというと、名取裕子が宙に浮いたり、明らかに染料と分かる血のシャワーが飛び散りまくったり、それを浴びた風間杜夫と永島敏行が全身真っ赤っかになったり、、、と風情の欠片もないシーンでござんした。なんちゅうことしてくれんだ、大林監督は。
あと、周りが引くほどやつれ行く原田、、、なんだが、風間杜夫の特殊メイクがあまりにも、、、で、これも、不謹慎ながら、ぷぷっと笑ってしまいました。いや、今のメイク技術と比べて、という意味ではなく、あまりにもやり過ぎというか。私が監督なら、風間杜夫に5キロくらい減量してもらうかな、、、と思った。もともと細めの人だから、5キロ痩せれば、かなり頬もコケてやつれた感じになるだろうし。そこでちょっとメイクしてヤバさを出せば十分だったんじゃないのかしらん。あれじゃ、お化け屋敷のお化けみたいだよ、、、。
いやホントに、そこまでがすごくイイ雰囲気で来たのに、何か突然違う映画になったみたいでひっくり返りそうになりました。
原作の描写どおりにしていれば、静かに怖い、、、大人の映画になったと思うのに、残念。
◆異界の人
本作がどんな風にリメイクされるのか分からないが、原作を読んで感じたのは、死者との邂逅などという甘いノスタルジーではなかった。
12歳で両親を亡くした原田にとって、両親への思いは言葉にできないものがあるだろう。小6なんて、まだまだ親に甘えたい年齢だ。でも、彼は親を亡くしてから泣いたことがないというくらい、自分を子供ながらに律して生きて来て、そのまま大人になったわけで、離婚して心が弱っていたときに、ふと魔が差したのだと思う。
心が弱っているときって、本当に肉体的にダメージが大きい。肉体的というのは、まさに身体的な部分と、頭の働きの方と両方である。健康なときには考えもしないような思考に陥ることがあるのだ。私にも経験が有るのでよく分かる。きっと、原田はそういう状態だったのではないか。
原田が亡き両親と邂逅したのは、ケイが原田に追い返されて自殺した直後である。思うに、亡き両親は、ケイから原田を守ろうとしたのかも知れない。原田があそこまでやつれたのは、生気を吸い取られていたのであり、それは、亡き両親と会っていたからではなく、ケイとしばしばセックスしていたからだろう。だからと言って、両親は何をできるわけでもないが、原田自身の潜在意識が、両親を見たのだと思えば、何となく腑に落ちる。
……というような考察も、本作の終盤では何の意味も持たなくなるのだが、まあ、あのB級ホラーチックな展開も、面白いと言えば面白いので、映画は映画として楽しめばよいのである。
ちなみに、山田太一は、本作の終盤について「とんでもないことになっていた」と言っていたそうだが、それはそれで受け入れていたそうな。まあ、彼はプロだからその辺は十分承知しているのだろう。本作の脚色は、市川森一だが、ご本人が脚色しなかったのも分かる気がする。きっと、あのB級ホラー展開は、大林監督の趣味だろう、、、と思うことにしている。
リメイク版も楽しみだ。ジェイミーは鶴太郎氏の役ですな。
亡き両親の暮らすアパートが風情があって素敵。
「異人たちとの夏」は初見でしたか?
(原作は読まれた??)
私はこの作品、テレビ放送を何度か観ているのですが、いずれも途中までや、途中からと言った感じでまともに観てないような気が…してます。(もしかしたら前編見てるかも??記憶があいまい('ω')ノ)
ですが、すねこすりさんのレビューで終盤の展開も全然ピンとこなかったのでやっぱ観てないのかな??見たほうがよい??
世間の評価はけっこういいですよね。
この作品に似てると思われる「地下鉄に(メトロ)に乗って」がありますが、それはご覧になったことがありますか??(こちらは浅田次郎原作)
アンドリュー・ヘイの「異人たち」の予告を見る限り邦画のテイストはあまりなさげですね。
どんな作品になってるんでしょうね。
(ジェイミー・ベルも出るってしりませんでした!しかも鶴太郎役?!)
はい、初めて見ました〜。原作読んでから見ました(^^)
テレビでも何度もオンエアしていたのですね。
私はまったくの初見でした。
ホントにあの終盤が残念ですけど、なかなか良かったです。
リメイク版はジェイミーが出るので絶対見ますが、その前にオリジナルを見ておきたかったんです。
メトロに乗って…て、堤真一出てるやつでしたっけ?
似たような話なんですか? 見てみようかな。
予告編のジェイミー見たんですけど、誰かに似てるなぁ、と思いながら、誰か思い出せなくてモヤモヤしてます(´∀`)
光る君へ、全くの少女漫画展開ですけど、面白いです♪