映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

リスボンに誘われて(2012年)

2014-10-06 | 【り】



 偶然にある本を手にして読んだことから、その本の著者に惹きつけられた高校教師のライムントは、走り出した電車に飛び乗り、著者に迫る旅に出る。今は亡き著者の壮絶な過去に触れ、心揺さぶられたライムントは、自らの人生を振り返る、、、。

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 ジェレミー・アイアンズ主演で、シャーロット・ランプリングもご出演、とあれば、まあ、見ないわけにはいかないよな、ということで、劇場まで行ってまいりました。サービスデーだったにしては、割と空いていましたねぇ。大ヒット!満席続出!と広告に出ていた割に、普通の入りでした。

 なんつっても、かなりの豪華キャストです。ヨーロッパの実力派を揃えたり、って感じです。ですが、、、ジェレミー・アイアンズ、すごい老け様です。まだ70歳になっていないのに、すごい爺さんになってしまっていて、かなりの衝撃・・・。

 美しいリスボンの街並みを惜しげもなくバックに、ライムントが偶然手にした本「言葉の金細工師」の著者の過去に迫ります。この著者アマデウの過去が明かされていく過程の描き方が、回想シーンを多用している割にはすっきりと簡潔にされており、また、アマデウと彼を取り巻く人物たちの描写も過不足なく、非常に秀逸だと思います。

 アマデウは、将来を約束された裕福な医者であったのに、レジスタンスに身を投じ、激しい恋にも落ち、友情も壊れ・・・という青春絵巻が展開され、それを、40年経った現在から振り返るのですが、アマデウの周囲の人間たちの現在を演じている役者さんと、若い頃を演じる役者さんが、皆さん、雰囲気がかなり似ていて上手いキャスティングだなあと、そういう点でも感心します。邦画だとゼンゼン似ても似つかぬ役者が演じていることも少なくない中、こういう所も素晴らしいと思いましたね。

 ただ、ちょっとだけ難を言えば、良い映画だったなぁ~、で終わっちゃうところですね。それだけでも十分ではありますが、すごくもったいないような気もします。どうしてそう感じるのか・・・。考えてみましたが、良くも悪くも「お上品」なのかな、と。セリフで説明されるところも多いし、登場人物がみんな割と「常識的」な行動をしているのです。冒頭、電車に飛び乗ってしまうライムントを除いては・・・。良い意味での裏切りがないのですね。先が読める、というのとはちょっと違って、想定内で話が進んで行くのです。

 本作の監督、よく見たら、リーアム・ニーソン主演の『レ・ミゼラブル』の監督さんと知って、ちょっと納得しました。あの『レ・ミゼラブル』もなかなか良い作品だけど、ちょっと食い足りないというか、グッと来なかったのですね。本作と鑑賞後感が驚くほど似ています。

 あとはまあ、ラストシーンですかねぇ、ちょっと気に入らない。著者の実像に迫る旅を終え、ライムントは、アマデウの人生と自分の来し方を比べる訳です。「オレの人生、取るに足りないんじゃないか・・・」ってやつです。思わせぶりに本作はエンドマークとなりますが、こういう、ある人の劇的な人生の一幕と、自分の平凡な人生を比べて、自分の人生に価値を見出せなくなるって、あまりに陳腐なんじゃないでしょうか。

 ライムントが30代くらいの若者なら、まあ、百歩譲ってまだ許せます。がしかし、人生の夕暮れ時を迎えている爺さんです、彼。人生とは何か、生きるとはどういうことか、、、そんなこと、嫌っていうほど考えてきたはずです。

 そもそも、ライムントのそれまでの人物像と矛盾すると思うのです。確かに今の彼は、妻に逃げられ、ちょっと世捨て人っぽい。しかし、これまで教育者として生きてきて、おまけに「言葉の金細工師」という本には、今まで自分が考えてきたこと全部が書かれている、ということで旅への衝動に繋がっているはず。つまり、彼は、自分とこれまできちんと向き合ってきた人間なのです。自問自答しながら、きちんと生きてきた人、、、じゃなかったの?

 それが、ここへきて、アマデウの人生を通して自分の人生を見つめるとは、どうにも解せない展開です。そんな薄っぺらな爺さんだったのかよ、って。まあ、そんなことは百も承知な彼だけれど、ちょっとだけ感傷的になっちまった、ってことにしておきますか。

 、、、と、ケチをつけたけれど、見て損はないと思います、もちろん。

 ・・・それにしても、ポルトガルの歴史なんて全然知らないので、独裁政治がつい最近まであったこと、今も決して豊かといえない現実があることなど、初めて知ったことも多々・・・。パンフを読んで、へぇー、と思うこともたくさんありまして、これは是非とも原作も読んでみなくては、と早速、図書館で予約いたしました。


すべて人生に軽重なし




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