映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

リンドグレーン(2018年)

2020-02-13 | 【り】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv68583/


以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 スウェーデン南部スモーランド地方にある教会の土地で農業を営む信仰に厚い家庭に生まれ、自然の中で兄弟姉妹と共に伸び伸びと育ったアストリッド(アルバ・アウグスト)。

 やがて思春期を迎え、率直で自由奔放なアストリッドはより広い世界や社会へ目が向きはじめ、教会の教えや倫理観、保守的な田舎のしきたりや男女の扱いの違いに息苦しさを覚えていった。

 文才を見込まれ地方新聞社で働くようになった彼女は才能を開花させはじめるが、その矢先に予期せぬ方向に人生が進んでいく。

=====ここまで。

 「長くつ下のピッピ」「ロッタちゃん」などで有名な児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの、作家になる前の波乱に満ちた半生を描いた映画。 
 

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 公開しているのは知っていたんだけれど、岩波ホールはサービスデーがない(まあ、あの劇場のコンセプトだからそこは納得しているが)ので、1日の映画の日を待って見に行って参りました。


◆アルバ・アウグスト

 リンドグレーンの本は、小学生の頃に「長くつ下のピッピ」を、ドラマを見た後に図書館で借りて読んだことを覚えているんだが、内容は覚えていない。気に入っていたドラマも、ほぼ忘れている。同じく小学生の頃に放映していた「大草原の小さな家」は割と断片的にではあるが覚えているのに、ピッピの方は、ピッピの姿や格好がうっすら記憶にあるくらいで、この違いは一体何??

 だから、特別リンドグレーン作品に思い入れがあったわけではないが、数年前に見た『なまいきチョルベンと水夫さん』はかなり気に入ってしまって、劇場で見た後DVDまで買ってしまったくらい。あと、岩波ホールの前に掲示されていた本作の看板のスチールがすごく魅力的で、見たいな~、と思わせてくれた。

 、、、というわけで、見に行った次第。その前に午前十時の映画祭で『アラビアのロレンス』を見てヘロヘロになっていたのだけれど、あまり期待していなかったからか、想像以上の感動作で得した気分。

 何しろ、主役のアストリッドを演じたアルバ・アウグストが本当に素晴らしい。映画監督ビレ・アウグストの娘さん。母上も女優さんとのことで、まあ、サラブレッドですね。サラブレッドだからといって、生まれついて才能があるとは限らないところが世の常なんだけれども、このアルバ嬢は、天性のものがあるように感じた。16歳から24歳くらいまでを演じるんだけれど、当時25歳だったとは思えないくらい、10代の少女がハマっていた。

 そういう見た目のことよりも、表現力の確かさが、もう凄いとしか言いようがない。新聞社の社長ブロムベルイと不倫関係に陥るところとか、妊娠して親とも軋轢が生じ戸惑い続けるところとか、何より、どうにか無事に出産できてホッとするのも束の間、息子を手元に置いておけなくなって生木を裂かれるような苦しみにあえぐところか、、、、本当にいろんな側面を表情豊かに演じていて、ただただ圧倒されてしまった。

 この演技でいろんな賞をもらったそうだが、そりゃそーだろう、、、と納得。これは、末恐ろしい俳優の誕生だ。


◆同級生のお父さんと、、、。

 それにしても、アストリッドがハマった不倫の相手であるブロムベルイなんだが、この人、アストリッドの同級生のお父さんなんだよね。ハッキリ言って冴えないおっさん。まあ、アストリッドのことは本気で愛していたみたいなんだが、それでもなぁ、、、。今の日本だったら犯罪だもんね。ただ、この場合、アストリッドもおっさんのこと本当に好きで、どちらかというと彼女の方が積極的だった、、、というふうに本作では描かれている。実際はどうだか分からんが、おっさんに迫るアストリッドは、実にストレートで、ある意味爽快でさえある。あんな風にされたら、おっさんは不可抗力で即陥落だわね。普通だったら、そんなおっさん、スケベ爺ィとか罵ってやりたくなるだろうが、ブロムベルイに対してはそういう感じにならなかった。

 ただまあ、やっぱり、この親子みたいなカップルってのは、どうしたってちょっとムリがあるわけで、そもそもアストリッドが妊娠したことはおおっぴらに出来ないから、ってんで、隣国のデンマークでの出産を余儀なくされる。さらに、ブロムベルイは妻と離婚できないどころか、アストリッドとのことが露見したせいで姦通罪で起訴され、下手すりゃ刑務所行き!!という事態にまで追い込まれる。だから、アストリッドは判決が出るまで息子を施設に預けざるを得なくなる、、、。

 結局、刑務所行きは免れるものの、2人が一緒になることはなかったのは、まあ、道理かなと感じた。アストリッドは、両親(特に母親)の反対などから、赤ん坊をなかなか引き取ることも出来ず、どうにか職を得て息子と一緒に暮らせるようになった頃には、2歳半になっていた息子は施設の里親を“ママ”と呼び、アストリッドを拒絶する、、、。

 ……こんな出来事が、アストリッドが児童文学作家としてデビューする以前にあったのか、と驚いた。本作は、息子と心を通わせるようになったところで終わっており、アストリッドとピッピやチョルベンがすんなり私の頭の中ではつながらないままだが、生まれたばかりの実の息子との2年半にも及ぶ空白は、私の想像を超える爪痕をアストリッドの心に遺したのだろうということくらいはうっすら分かる。


◆その他もろもろ

 アストリッドの母親ハンナは、信心深くて保守的な人間として描かれており、アストリッドの不倫や出産には終始冷たい姿勢を崩さなかった。それでも、彼女なりにアストリッドを心配し、愛しているのは伝わるのだが、この母娘の間にはずっとわだかまりがあったように思う。このまま終わってしまうのか、と思って見ていたら、終盤、思いがけないシーンがあり、ハンナの意外な一面が描かれる。そのシーンは、実にさりげなく、でも、印象的で、この展開だけでも、本作は秀逸だと言えると思う。

 そのハンナを演じたマリア・ボネヴィーがとても美しくて、母親と言うより、少し歳の離れた姉、、、って感じだった。ビレ・アウグスト監督の『エルサレム』(1996)では主役を演じているらしいので、また機会があったら是非見たい。

 アストリッドが息子を預けた施設の里親マリーを演じていたトリーネ・ディアホムは、もうホントに女神のよう。温厚で優しくて寛大で、、、って私にないものばかり持っている素晴らしい女性。こんな人、実在するんだ、、、と唖然としてしまった。

 監督のペアニレ・フィシャー・クリステンセンは女性で、リンドグレーン作品を読んで大人になったというお方。これまでにもいくつか作品を撮っているみたいだけど、今後も楽しみな監督さんだ。

 アルバ・アウグストの父親であるビレ・アウグストの監督作品というと、『レ・ミゼラブル』(1998)、『リスボンに誘われて』(2013)くらいなんだが、『愛と精霊の家』(1993)とか『ペレ』(1987)とか話題作も撮っているのよね。『ペレ』ってパルムドール獲ってるのね、、、知らなかった。今度見てみようかな。
 

 

 

 

 

 

 

2歳半の「息子ラッセを演じた子役の坊やの百日咳の症状は完璧」       

                                ーーby細谷亮太氏(パンフより)

 

 

 

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