映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年)

2021-08-01 | 【ふ】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv72951/

 

以下、公式HPよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 30歳を目前にしたキャシー(キャリー・マリガン)は、ある事件によって医大を中退し、今やカフェの店員として平凡な毎日を送っている。その一方、夜ごとバーで泥酔したフリをして、お持ち帰りオトコたちに裁きを下していた。

 ある日、大学時代のクラスメートで現在は小児科医となったライアン(ボー・バーナム)がカフェを訪れる。この偶然の再会こそが、キャシーに恋ごころを目覚めさせ、同時に地獄のような悪夢へと連れ戻すことになる……。

=====ここまで。


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 無症状感染者が、きっと街中にたくさんいるんだろうなぁ、、、と、映画を劇場に見に行くのも気が引ける昨今。とりあえず、新宿・渋谷は行く気がしないけれども、平日の銀座や日本橋なら、まあいいか、、、と、根拠のない予測に基づき、本作と、午前十時の『シャイニング』をハシゴで見て参りました。

 『シャイニング』はまた後日感想を書くとして、まずは本作の感想から。


~~以下ネタバレバレなので、よろしくお願いします。~~


◆キャシーの行動について

 キャリー・マリガンが割と好きなのと、彼女のヘンテコなコスプレ画像に惹かれて見に行った次第。予備知識はほぼなく、彼女が何やら復讐する話らしい、、、程度。

 で、見終わった直後は、正直なところ、頭の中が混沌とした感じだった。内容がかなりヘヴィなのに、語り口は軽やか、色合いもポップ。実際、笑えるシーンも多く、思わず“ぷっ”となってしまったのは1度や2度ではなかった。この内容と見た目のギャップについて、私の場合、脳内補正するのにかなり時間を要したのだと思う。

 上記あらすじにある「ある事件」とは、キャリー・マリガン演ずるキャシーの大親友ニーナが泥酔してしまい周囲の男子学生たちに暴行された事件のことで、ニーナは事件後の学校の対応やら周囲の反応やらに絶望し、自殺してしまい、キャシーは10年経ってもそれらのことを引きずっている。それ故、キャシーは、夜な夜な泥酔した振りをして、下心の塊と化した男を釣り、男がいざコトを起こそうという段になって、素面になって男を萎えさせる、という実に危険かつみみっちい復讐劇に身を投じているのだ。

 私が一番引っ掛かったのは、キャシーのこの行動。いくら大親友を亡くしたとはいえ、自身を危険にさらしてまで10年経ってもそんなことをするなんて、、、と思ったのだよ。

 でも、見終わって時間が経つにつれ、私がキャシーでも、大親友がそんな目に遭い、社会から二次被害を受け、自死してしまったとしたら、その後、平然と事件以前の環境に戻っていくのは難しいかも知れないと思うに至った。ニーナに乱暴した男たちは、同じ大学の学生たちで、ニーナを絶望させたのはその大学のお偉方や同級生たちなのだ。加害者たちがウヨウヨしている環境に、被害者の大親友であった自分の身を置くことの難しさは、想像を絶する。

 本作を見ているときから感じたが、キャシーは復讐をしている自覚はあったろうが、それと同時に、釣った男にまかり間違って殺されても仕方がない=最悪死んでもイイ、、、くらいに思っていたのではないか。危険でみみっちい復讐の真似事を繰り返すことで、10年前にニーナを救えなかった自分に継続的に制裁を加えていたんじゃないかね。だから、死という結果を恐れていなかったのではないか。

 けれど、ライアンという存在が現れたことで、キャシーは生きることに意味が出来てしまう。だから、ライアンときちんと付き合い始めると、復讐の真似事はしなくなる。その代わり、もっと直截的な、真の復讐行為に出るのだ。

 真の復讐とは、ニーナを直截的に傷つけた人々をちょっと脅して抗議し、「忘れてないぞ」と印象づけることと、キャシー自身の気持ちに区切りをつけることだった。一人、また一人と復讐を成し遂げ(といっても、まあ実害はほぼないものばかりなんだが)、第三の復讐まで終えたところで、キャシー自身は「もう終わりにしてもいいか、、、」と思った様子だった。

~~以下、結末に触れています~~

 が、キャシーに生きる意味を与えてくれたライアン自身が、ニーナを男たちが乱暴した現場にいたことが分かり、再び、死んでもイイに思考回路が戻ってしまったのだ、多分。でなければ、終盤の怒濤の展開はちょっとあり得ない。

 そして、そのように(キャシーが死んでもイイと思っていたこと)考えれば、本作は非常に腑に落ちるものとなる。これをシリアス一辺倒で描いたら、重すぎて見ていられないが、ポップな見た目にすることで、エンタメとして仕上がっているし、多くの人が見ることとなる映画になった。

 監督のエメラルド・フェネルは、長編は初めてというが、デビュー作でこれだけの意欲作を撮ったというのは驚き。脚本でオスカーをゲットしたというのも納得。次作が期待されるが、プレッシャーも大きくなりそう。まあ、そんなものを軽々と超えちゃいそうな感じもあるけれど。


◆キーワードは“朦朧”

 で。本作の大事な主旨だけれども、「泥酔した女をヤッてイイ」or「泥酔した女はヤラれてもしょーがない」という万国共通(?)の不文律である。

 日本でも、デートレイプドラッグによる性犯罪が問題になっているが、クスリだろうが酒だろうが、それで意識が朦朧としている女性を犯して、犯す方は気持ちイイんですかね?? って前から疑問に思っていたんだが、本作を見て少し分かった気がする。朦朧としているからこそヤリ甲斐があるんだな、と。完全に意識がないのではなく、“朦朧”がミソなんだと。

 完全に意識がなければ人形とヤッているのと同じでつまらんし、素面では激しく抵抗されるからメンドクサイけど、“朦朧”だとフニャフニャしてるけど動いているし抵抗もむしろ合意と受け取れるくらいの「イヤよイヤよも好きのうち」と脳内変換できるレベルであるから、断然ヤリ甲斐があるのだね。 

 それが証拠に、キャシーが突然素面に戻ると、釣られた男たちの顔には一様に恐怖が浮かぶのだ。「酔ってなかったの??」「酔ってたんじゃないの??」と言って。

 ネットの感想を拾い読みすると、案の定「大人の女性が泥酔すればレイプされるかもと想像するのは大人として当然。それができないで被害女性には問題がないと決め付けるのはおかしい」とか、これに似た感想を書いている人はいるんだよね。

 まあ、これについては書き出すと長くなるからやめておくけど、極端な話、裸同然の格好で泥酔してそこに寝ている女性がいても、レイプしちゃあかんのですよ。人権侵害で犯罪なんです、それは。レイプした方が悪いんです、100%。どんな格好で泥酔していようと、レイプされてもしょうがない人間なんていないんですよ、ってこと。分からないのかな、ホントに。


◆ラストとかもろもろ、、、

 また、本作は、傍観者を厳しく批判する映画でもある。ライアンは実行者ではなく、傍観者だった。キャシーにその証拠を突き付けられたとき、ライアンは奇しくも「僕は何もやってない!」と言う。それを聞いたキャシーの絶望感は察するに余りある。だからこその、あのラストの展開になるのだよね。

 結局、あのラストは、キャシーの「死んでもイイ」が、「もう死んでやる」になった、ってことなんじゃないか。ライアンの件が致命的だったのだと思う。これからの人生に希望を見出しかけたところでの奈落。そりゃ、生きていたくなくなるだろう、という気がする。あのラストには賛否あるようで、否定派は「死んじゃった、、、」という受け止めなんだが、「死んでやった」んだよ、キャシーの真意は。

 キャリー・マリガンは、人生を半分放棄したやつれた感じがよく出ていて、それでいて可愛いという、不思議な雰囲気をうまく出していた。途中、ライアンとラブラブな感じになるところはまたガラッと雰囲気が変わり、そして、ラストへ向けて、、、、と、コロコロと変わるのが演じるのも大変だったろう。

 ライアンも、ずーーっと面白くてイイ人で素敵だったのに、傍観者であったとバレた後は豹変、まったくの卑劣漢に見えるという、演じたボー・バーナムが素晴らしい。コメディ出身と聞いて納得。

 何かの感想で「復讐劇は嫌い」と書いたが、やっぱり、復讐は虚しいよ。キャシーが事件のことを引きずって、忘れないのは、自分の意思でもあるし、忘れようとする必要はない。けれど、陳腐なのは百も承知だが、ニーナの母親が言っていたように、キャシーには彼女自身の人生を生きて欲しかった。キャシーの両親の気持ちを思うと、いたたまれない。

 最後の最後でちゃぶ台返しなことを書いてしまいましたが、まあ、偽らざる本音です。

 

 

 

 

 

 

 

タイトルは、プロミシング・ヤング・マンとして無罪放免された加害者に対するアンチテーゼです。
  

 

 

 

 

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2 コメント

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ヤングマンのほうが好き (松たけ子)
2021-08-02 21:43:08
すねこすりさん、こんばんは!
毎日暑いですね~。お互い無事に夏を乗り越えられますように!
この映画、アカデミー賞受賞やノミネートで観たい!とずっと思ってました。こっちではいつ公開されるのかしらん。すねこすりさんのレビュウ拝読で、ますます観たくなりました!
デートレイプとか最低最悪ですわ。日本でもスーパーフリー事件とか、卑劣極まりないケダモノたちには嫌悪感を覚えずにいられません。何でそこまでしてヤりたいの。もう病気ですよね。性犯罪者はみんな去勢!
キャリーマリガンは地味にいい仕事続けてますよね。いい女優!華麗なるギャツビーのヒロインは、ん?だったような?
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ヒデキ・カンゲキ☆ (すねこすり)
2021-08-02 22:49:18
たけ子さん、こんばんは。
広島では地震があったとか、、、? コロナに水害に地震に五輪、、、。呪われた列島ですね。
さて、この映画、面白かったですヨ。
内容の深刻度に比して、笑えるシーンも多くて。
ホントに、性犯罪者を去勢できたらどんなに良いか、、、。
スーフリ事件、、、ありましたねー。元気が良くて結構、とかなんとか言った政治家もいたっけ。
華麗なるギャツビー、彼女出ていたんですか? 知らなかった。
今度見てみます!
たけ子さんも、暑さとかウイルスとか気を付けてくださいね。
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