映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

天才作家の妻 -40年目の真実-(2017年)

2019-02-19 | 【て】



 上記リンクからあらすじのコピペです。

=====ここから。

 アメリカ・コネチカット州。現代文学の巨匠ジョゼフ・キャッスルマン(ジョナサン・プライス)と妻ジョーン(グレン・クローズ)のもとに、スウェーデンからノーベル文学賞受賞の吉報が届く。友人や教え子らを自宅に招いたジョゼフは、スピーチで最愛の妻に感謝の言葉を告げる。満面の笑みを浮かべて寄り添うふたりは、誰の目にも理想的なおしどり夫婦に見えた……。

 授賞式に出席するため、ふたりはストックホルムを訪れる。旅に同行した息子デビッド(マックス・アイアンズ)は駆け出しの作家で、父に対し劣等感を抱いている。

 そんななか、ひとりホテルのロビーに出たジョーンは、記者ナサニエル(クリスチャン・スレーター)から声をかけられる。ジョゼフの伝記本を書こうとしている彼は、夫妻の過去を事細かに調べていた。ふたりが大学で教授と学生という関係で出会い情熱的な恋に落ちたこと。既に妻子があったジョゼフをジョーンが奪い取る形で結ばれたこと。作家としては二流だったジョゼフがジョーンとの結婚後に次々と傑作を送り出してきたこと……。そしてナサニエルは、自信ありげに核心に迫る質問を投げかける。

 「“影”として彼の伝説作りをすることに、うんざりしているのでは?」

 実は若い頃から豊かな文才に恵まれていたジョーンだったが、出版界に根づいた女性蔑視の風潮に失望し作家になる夢を諦めた過去があった。そしてジョゼフとの結婚後、ジョーンは彼の“影”として、自らの才能を捧げ、世界的な作家の成功を支え続けてきたのだ。

 そして授賞式当日。複雑な感情をひた隠し、華やかに正装した夫妻は、人生最高の晴れ舞台が待ち受けるノーベル賞授賞式の会場へと向かう……。

=====ここまで。

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 先日、インドに行く飛行機の中で見ました。劇場に行こうかと思っていたのだけど、機内鑑賞で十分だった、、、。


◆女なんだから。女のくせに、、、

 作家になることを夢見る若きジョーンに「女流作家は認められない時代だから諦めろ」みたいなことを言うのは、エリザベス・マクガヴァン演じる評論家だか文学者だか、あるいは編集者だったか、、、あんましよく覚えていないが、とにかく、その女性の一言がジョーンの夢を粉砕したのである。

 本気で作家になりたければ、それくらいで諦めるな、という意見もあるだろうが、時は1950年代である。そんな正論は「寝言は寝て言え」に近い時代なのだ。賢いジョーンだからこそ、そこは身に沁みて悟ったのだと思われる。

 この映画を見ていて、母親が昔話していたことを思い出していた。ある著名な日本画家の妻は、結婚前は夫に引けを取らない才能を持つ画家だったが、結婚して夫を画家として大成させるために自分は筆を折った、、、ということを、「偉い人やろ、夫のために(嘆息)」と、さも美談として私に言って聞かせたのである。母親は娘に「(勉強で)誰にも負けるな」と尻を叩く一方で、優秀な男に尽くす女を理想像の一つとして娘に押し付けるという、何とも矛盾する教育をしていたのである。そういう母親自身が、夫(私の父親)に自己犠牲を払って尽くしている場面は、娘の私はただの一度だって見たことがない。でも母親には自分が夫に尽くさないのには正当な理由があるのだ。「自分が尽くすだけの値打ちのない男だから」……娘の私から言わせてもらえば、父親の方がよほど自己犠牲を払って我慢していた夫婦だったと思うが。

 ……それはともかく、そんな風に、夫のために自己犠牲を強いられた女性は多いだろう。それを自己犠牲と認識していたかいないかは分からないが、ジョーンはしていたのだ。最初は、自覚はなかったかも知れない。しかし、どこかで割り切れない思いはずっと抱えていただろう。アタリマエだ。

 才能があるのに“女なんだから”という理由で、“女のくせに”と出る杭は打たれ、その才能の芽を摘まれた女性は、歴史を辿ればきっと枚挙に遑がないに違いない。

 そして、それは21世紀においてもまだまだ岩盤リアルである。大体、“女流”作家という言葉自体が、えらく失礼な言葉ではないか。男流作家という言葉がある? 女流=傍流という意味なのでは? こういうことを書くと、すぐにフェミだ何だとアレルギー反応を示す人々がいるけど、そういう人々に限ってフェミをイメージでしか捉えていないからタチが悪い。まあ、フェミにもツッコミ所満載な脇の甘さがあるのは認めるけれど。


◆ジョーンという女性をどう見るか。

 じゃあ、私はこの作品を見て、ジョーンに共感したのか、、、というと、実はそうでもなかった。

 途中まではね、まあ、嗚呼、、、と思って見ていたのだけれど、終盤、夫のノーベル賞授賞式でブチ切れるところで着いていけなくなってしまった。なぜそこでキレる?? それは恐らく、夫が、気恥ずかしくなるような歯の浮きまくった妻を称えるスピーチをしたからだろう。しかし、それまで理性的だったジョーンが、あの場でキレるというのは、ううむ、映画としての見せ場なのは分かるが、あまり賢いとは思えない行動ではないか。

 もちろん、あの場でキレるのが一番夫にダメージを与えることになる。だから、そういうシナリオにしたのだと思う。けれども、ジョーンのキャラから言って、あれはないだろう。あんなことをするくらいなら、とっくにジョーンは夫に見切りを付けていたのでは?

 もっというと、私は、ジョーンが40年もあの夫婦関係を維持してきたことの方が違和感を覚えた。なぜなら、あまりにも夫に魅力がないから。小説家としての才能もイマイチ、女癖は悪い、不健康で自己管理も出来ない、見栄っ張りで傲慢、、、と、良いところが見当たらない男なのだ。それでも、ジョーンは彼を愛してきたというのなら、何もあんな場面でブチ切れることはないだろう、、、と。

 夫婦というのは、良くも悪くも“割れ鍋に綴じ蓋”なのである。40年も持続した関係なら、どっちもどっちのはずだ。妻だけが上等で、夫だけがゲスという関係は成立し得ない。もしそうなら、とっくに破綻しているはずだ。

 ……と書いてきて思ったのだが、いや、あそこでブチ切れるようなレベルの妻だから、あの夫と40年も夫婦でいられた、、、のかも知れないなぁ。夫婦が産み出した文学作品はハイレベルだったかも知れないが、当の夫婦自体は低レベルだったのかも。……うん、それなら納得だ。

 
◆その他もろもろ

 グレン・クローズは、ものすごい貫禄あるオバサンになっていてビックリ。もう、御年72歳だそうで。オスカー最有力と言われているようだけど、果たして受賞なるでしょうか。ちょっと作品自体が地味でイマイチだから、ビミョーな感じではあるけど。まあ、ノミネート何度もされていながら、まだ受賞したことがないようなので、是非、受賞して欲しいですけど。割と好きなので、彼女。

 ジョーンの若かりし頃を演じていたのは、グレン・クローズの実の娘アニー・スターク。道理で似ているわけだ。見た目が違和感がないなぁ、と思いながら見ていたら案の定。演技も悪くなかったし、決して親の七光りなんてのじゃないと思う。

 夫の若い頃を演じていたのがハリー・ロイドというイギリス人俳優だけど、まあ、これがホントにヤな野郎で。こんな男の何が良くてジョーンは惚れたのか、、、。分からん。趣味悪い。

 現在の夫役は、ジョナサン・プライス。『未来世紀ブラジル』は映画自体も私は全然ダメだったし、ジョナサン・プライスもあまり良い印象はない。本作でも、どうにもいけ好かない役で、相変わらず印象悪いまま。彼に罪はないけど、すんません。

 夫婦につきまとうジャーナリスト役・ナサニエルをクリスチャン・スレーターが好演。『薔薇の名前』の頃の面影ナシ。

 先日、NHKのクロ現で、川端康成と三島由紀夫の自殺を取り上げていて、2人の自殺とノーベル賞を関連付けていた。2人ともノーベル賞が喉から手が出るほど欲しかったらしい。川端は受賞し、三島は候補に挙がっていながら受賞しなかった。そして2人とも自死した。……ノーベル賞って、凡人からするとあまりにも想像できないものだけど、もらって幸せになれるモノじゃなさそうだよね。昨日も、NHKスペシャルで、ノーベル賞を若くして受賞した田中耕一さんのその後についてオンエアしていたけど、苦悩の16年とか言っていたものね。前から、なんであんな高齢者にばかりあげるんだろうとナゾだったけれど、やはり、人生の花道を飾るべく死にそうな爺さん・婆さんにあげるのがその人のためだ、ってノーベル財団側は分かっているのね。

 あと、本作は、ジェンダーの側面からも批評されているけれど、私は上記に書いたとおり、ジョーンがあんまし上等な女性に思えないので、そういう視点で語る値打ちのある話にも思えない。ただ、この映画は、男性ウケはあまり良くないのではないかな、という気はする。なんたって、当の夫がジョーンがブチ切れたショックで、心臓発作で授賞式直後に死んでしまうのだからね。しかも、その後、帰国する機内でのジョーンの表情が、、、、。あれで、世の殿方はちょっと憤慨するんじゃないかしら。まあ、あのシーンをどう見るか、受け止め方はイロイロでしょうけど。

 







ノーベル賞受賞者には専属カメラマンが着くんだ~!!




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2 コメント

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源田の妻になりたい (松たけ子)
2019-02-19 22:31:54
すねこすりさん、こんばんは!
この作品のレビュウ、期待してました!ありがとうございます(^^♪
フェミフェミすぎる映画は苦手なのですが、グレン・クローズがついにオスカー受賞と評判の演技は、この目で早く確かめたいので、観に行こうと思います(^^♪
グレン・クローズといえば、やはり「危険な情事」「危険な関係」の危険シリーズ?で演じた狂女・毒女が強烈ですが、「ガープの世界」のママがいちばん好き。娘さんも女優になってたんですね。
ノーベル賞も、オバマさんとかボブ・デュランとか謎な受賞者や、トランプさんや北の将軍さまの名前が出てくるなど、わけのわからない人選で何だか昔ほどスゴい賞とは思えなくなってるのは私だけ?
インド旅行記、楽しみにしてます😊
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妻はつらいよ、、、。 (すねこすり)
2019-02-20 23:27:10
たけ子さん、こんばんは~!
グレン・クローズは、さすがの存在感&演技で、彼女が主演でなければ、それほど注目されなかった映画だと思います。
なので、是非、オスカー獲ってもらいたいです。
たけ子さんのレビューも楽しみにしています!!
そうそう、危険シリーズ! 懐かしぃ~~。
でも、私も、グレン・クローズといえば、やっぱり『ガープの世界』です。原作も衝撃的だったけど、あの映画の彼女も、凄かった、、、。。
ノーベル賞も、特に平和賞は政治臭がプンプンしますから、あんまし有り難くないですね。北の将軍様とトランプ氏が共同受賞なんて、個人的にはマンガみたいでとっても面白いと思いますけど。
こんなこと書くと、真面目な人に怒られちゃいそうですね
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