映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

チャイルド44 森に消えた子供たち(2015年)

2015-07-18 | 【ち】



 スターリン政権下のソ連、孤児のレオは大人になり、秘密警察MGBの捜査官(トム・ハーディ)というエリートになっていた。ある日、レオの親友の子ども(男児)が線路脇で遺体で発見される。「殺人は資本主義の弊害。楽園(ソ連のこと)にこの種の犯罪は存在しない」という当局の公式見解により、その一件は事故死扱いされるが、親友は「これは殺人だ!」とレオに訴える。親友の話を聞き、レオの中でも疑問が生じ、捜査に着手する。

 しかし、そんなある日、レオの妻ライーザにスパイ容疑がかかる・・・。レオは妻をかばい、僻地への左遷に甘んじる。が、その左遷先で、また男児殺害事件に遭遇し、いよいよレオは真実を求めて動き出す。そして、同時に当局に追い詰められて行く、、、。

 終始、薄暗い画面で、話の内容も実に暗いが、最後まで目が離せない展開。

 
☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜


 原作は読んでおりません。予備知識もあんまりなく見に行きましたが、なかなか面白かったです。タイトルの44人の連続殺害事件を当て込んで見に行くと、肩すかしを喰らうでしょう。本作は、そこがメインフォーカスではありませんでした。

 では、何を描いている映画なのか。メインフォーカスその1は、夫婦愛でしょう。そして、その2はスターリン時代というまさにその時代。その3、その4はなくて、その5くらいに連続殺人事件の真相、といったところでしょうか。

 本作は、ソ連が舞台なのにセリフは全部英語なんですが、まあ、それはよくあることなんで目を瞑るとして、役者さんたちの喋る英語が揃いも揃って「ロシア語っぽい英語」なのです。ちょっと英語か何語か分からないところも多々あります。どうやらこれは、ソ連の話だからってことで、こういう演出にしたらしいのですが、英語圏ではこれがもの凄い不評だったらしいです。そらそーだよなぁ。日本語ネイティブの人間が、日本語を中国語っぽく話してたら、バカっぽく見えるもんなぁ。この演出は、ものすごーく疑問です。トム・ハーディがなんかへんちくりんな英語をボソボソ喋るシーンが一杯あるんだけど、とてもヘンでした。

 そういう余計な演出が鼻にはついたけれども、その他は概ねとてもよく出来ている作品だと思います。何より、レオとライーザという夫婦が実によく描けています。一旦は破綻しかけた夫婦だけれど、夫の真の愛情を見せつけられた妻は、夫とともに危機を乗り越える道を選びます。この流れが、見ている者にもとても説得力があり、感動的です。

 レオは、ちょっと粗野な男だけれど、根は優しく器も大きなイイ男です。トム・ハーディはこの役のためにかなり体重増やしたんですかねぇ。顔が変わって見えました。本来イケメンのはずなんですが、、、。ロシアつながりで、ちょっとヒョードルっぽいなぁと思っちゃいましたが。でも、やはりところどころケヴィン・コスナー似の表情も見られ、おぉ、やっぱしトム・ハーディなんだ、と再認識しました。レオにはハマリ役だったのではないでしょうか。夫がこれほどまでに命懸けで自分を守ってくれる男だと見せつけられたら、妻の心が動かないはずありませんわ。もともと、心底嫌ってたんでなければ、惚れちゃうでしょ、そりゃ。

 そして、何といっても、これでもかと徹頭徹尾、悪し様に描かれるスターリン時代のソ連というお国。もう、“親の仇”みたいに容赦がないのです。しかも、大飢饉が起こっていたという、、、。実際にこんなだったのか、これよりひどかったのかは分からないけど、もうとにかく、こんな社会に生まれてきただけで不幸としか言いようがない描かれ様です。これじゃ、ロシアが本作を上映中止にするのも納得です。

 でもでも、パンフを見ると、これらの描写はあながち過剰なデフォルメではなさそうだってんだから、それの方が怖い。今のロシアも相当な独裁国家に見えるんだけど、多少はあの頃よりはマシなんでしょうか。指導者にカリスマ性や、即決性や、明解さを求めると、その成れの果ては、こうなのだと言われているみたいで、背筋がゾッとなりました。

 で、タイトルにもなった、44人の連続殺人事件ですが、真相はというと、知ってしまえば割とあっけないものです。が、ここがクセモノというか、この犯人は医師であり、軍医として国家に貢献したにもかかわらず、あらぬ疑いを掛けられ不遇に追いやられた挙句の犯行ということらしい。そして、大飢饉という背景と、被害者の内臓が切り取られていたことから、この辺は見る人の解釈によるけど、カニバリを想像させます。

 自由のない社会、慢性的な食糧不足、人権蹂躙が当たり前の日々、、、こんな国に生まれたいですか? 私だったら、多分、結婚しても子ども作りませんね。まあ、子ども産まないと、それだけで犯罪者扱いされるんでしょうけれど、こういう国では。でも、我が子をそんな世界に送り出す方がもっとイヤです。

 それにしても、ヴァンサン・カッセル、いつのまにこんなに歳とっちゃったんでしょう。なんか、水分が抜けちゃったみたいな風貌で、少なからずショック。別に好きでも何でもないですが。モニカ・ヴェルッチとの離婚が堪えたんでしょうか。・・・あと、レオを執拗に嫌らしく追い詰める元レオの部下であるワシーリーを演じていたジョエル・キナマンがなかなかイイ感じでした。インテリ系のサイコパスとか演じさせたらハマりそう。・・・そうそう、ゲイリー・オールドマンも相変わらず存在感あるイイ味出していました。が、なんというか、本作に限ってですが、どことなくスターリンに似ているように思えたのですが、、、。気のせいかしら。

 というわけで、原作が「このミス」に選ばれたからってんで、ミステリー映画とかサスペンス映画を期待していくと、多分ガッカリします。これは、飽くまでヒューマニズム映画です。ラストが甘いのがちょっと、、、ですけれども、エンタメとしてもなかなか良いのではないでしょうか。






夫婦愛を描いた映画ですよ。




 ★★ランキング参加中★★

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 窓 ベッドルームの女(1987年) | トップ | ボヴァリー夫人(1949年) »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
トム・ハーディ祭! (松たけ子)
2015-07-27 00:43:19
こんばんは!毎日暑いですね~…
お!もうご覧になったのですね!いいなあ~。ド田舎は公開が遅いからホントいやになります。
今年は怒涛のトム・ハーディ映画公開ですが、このチャイルド44も楽しみな一本です♪トム・ハーディ、太ってもやっぱイケメンみたいですね。ゴリマッチョなトム・ハーディが好きです。
夫婦愛映画、というのが意外です!いまの若い子、ソ連とか言っても分かんない子が結構いるんですよ~。ゴルビー氏は今もご健在なのでしょうか。ソ連とか北朝鮮とかじゃなく日本に生まれてホントよかった!
イザベル・ユペール版のボヴァリー夫人のレビュウ、楽しみにしてます♪
返信する
昔、ソ連という国がありましたとさ。 (松たけ子さま(すねこすり))
2015-07-28 00:38:14
たけ子さん、律儀にReコメしていただき、恐縮です。
決して、ムリなさいませんよう、、、。

ゴルビーは、亡くなったというニュースを聞いたような気もしたのでググって見たら、まだご健在のようです(by Wiki)。でも、何年か前にTVで見たら、別人のような風貌になっていて驚いた記憶があります。隔世の感がありましたね、、、。

独裁者ってタイヘンだなー、と思うんですけどね。あっちこっち睨みきかせなきゃいけないことあり過ぎで。それを補って余りあるうま味があるってことなんでしょうけど、下々のものには想像もつきませんわ。

たけ子さんは、イザベル・ユペール版ボヴァリー夫人ご覧になりました? 
返信する

コメントを投稿

【ち】」カテゴリの最新記事