映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

二重生活(2016年)

2017-04-03 | 【に】



 大学院生の白石珠(門脇麦)は、同棲相手でゲームデザイナー(?)の鈴木卓也(菅田将暉)との倦怠感漂う生活をする一方、修士論文に行き詰まって(?)いた。

 ある日、指導教官である篠原弘(リリー・フランキー)から、ソフィ・カルの「文学的・哲学的尾行」を実践し、それを修論にしてみてはどうか、と提案を受ける。興味を持った珠は、尾行対象として、自宅アパートの向かいの豪邸に住む出版社の名編集者でイケメンの対象者A(長谷川博己)を、ただ通りがかりに見かけただけの理由で選んで、尾行を開始する。

 すると、対象者Aは、理想の夫という近所の評判とは裏腹に不倫していることを珠は知ってしまう。そして、対象者A自身にも尾行がバレる。

 ……果たして、珠の修論は仕上がるのか!!


 
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 昨年、少し気になっていた映画。劇場に行こうかどうしようかと思っている間に終映してしまったので、DVDを借りてみた次第。まあ、劇場まで行ってたら金返せレベルでしたね、多分。

 
◆あれは尾行ではなく、ただ後ろをついて歩いているだけである。
 
 なんか、珠さんが尾行するに至るまでの経緯があまりにも???で、序盤で気持ち的に挫折。「文学的・哲学的尾行」とやらがどんなものか全く存じませんが、作中でも何やら一節を読み上げているシーンがあったような気がしますが、意味不明、、、。

 でもまあ、本作の主題は、動機よりも尾行とその結果よね、と気を取り直し先を続ける。

 なんとも珠さんの尾行のお粗末なこと、、、。あんなの、思いっきり気付かれるでしょ、ってなもんです。まあ、奥行きは出しにくいのは分かるけど、だったら、もっと珠さんと対象者Aを離して撮れよ、と思う。あれじゃあ、せいぜい3メートルくらいしか離れていないようにしか見えない。しかも、物陰に隠れるとかほとんどしない。ただ、後をついて歩いているだけ。あれで気付かないなら、尾行されている方に何か問題があるとしか思えない。

 しかも、珠さんは、対象者Aの入ったカフェとかにもずんずん自分も入っていき、目と鼻の先の席に座る。目が合いそうになると、思いっきり不自然な感じで目を逸らし、前髪をいじったり本を読んでいるふりをしたりする。、、、見ていて、こっちが恥ずかしくなるくらいの稚拙な演出。もうちょっと何とかならんのか!!

 あんなにド下手な尾行なら、すぐに対象者Aに気付かれる展開にするんなら分かる。でも、なかなか気付かれないんだ、これが。

 その対象者Aは、昼間っからビルの谷間で浮気相手の女とセックス。その後、シレっと娘へのプレゼントにケーキなんぞを買って帰宅。別の日は浮気相手の女とホテルにしけ込み、出て来たら、オサレなフレンチレストランでその女と痴話げんかをおっぱじめる。しかも、そのレストランには珠さんも潜入する。対象者Aから丸見えな席に座る珠さん。

 ……とまあ、こんな具合に、尾行シーンにヒヤヒヤもドキドキもほとんどなく、見ていてバカバカしくなってくる。いくらフィクションだからって、もう少しマシな見せ方考えろっての。リアリティとかどーでも良いっていうんなら、こんな中途半端な映画作ってんじゃねーよ、と思う。


◆二重生活?

 正直、最後まで見終わっての感想は、結局何だったのか、この映画は、、、、である。

 珠さんは、修論で何やら結論めいたことを書いていたけれど、見ている者に何か伝わってくるものがそこにあるわけでなく、ものすご~く上っ面な文章がナレーションで読まれているだけ。あんなんで修士とれる大学院ってどんなん? 哲学ってあんなんなんですか? おいおい~~。

 ……とまあ、そんなマジメなツッコミは野暮ですね。

 尾行する珠さんの一挙手一投足をしつこく撮影するというこの映画。その趣向はまあ、分からんでもないというか、映像作家的にそそられるんだろうなぁ、とは思うけど、映画としてはこれだけじゃねぇ、、、。インスタントコーヒーにお湯を入れないで、「飲め」ってカップを出された気分だ。飲めるかこんなもん!!

 長谷川博己演じる浮気男は、まあ、ものすごく類型的だわね。一見エリートで幸せな家庭のパパ、でも浮気男。こんな男の尾行して何が面白いのさ、と思う。映画だったら、もっとぶっ飛んだキャラの尾行させてよ。大体、エリートである必要なんぞないだろう。昼間っからぶらぶらしてるやけにオシャレな男で、家族は普通に暮らしているみたいだけど、家はゴミ屋敷で、シャレ男の尾行したら、実は……!!!みたいなのとか。エリートの化けの皮でも何でもないでしょ、浮気男なんてさー。掃いて捨てるほど転がっているネタを今更やってどーする?

 浮気男の人物造形も、冷たくて、利己的で、妻が自殺未遂したらあっさり浮気女と別れて、、、とか、ゼンゼン魅力なし男。ううむ、、、なんでこんなつまらない設定を敢えて選んだのか。

 尾行をする意味が分からん、と思いながら見ていたら、対象者Aの尾行が強制終了してしまった後、篠原教授が「対象を変えて続けろ」といって、珠さんが教授自身を尾行し始めた辺りから、ますます???となり、珠さんの尾行から見える教授の生活と、実際の教授の生活実態は、全く異なるものだった、というところへ至って、鈍い私は、ようやく気付いたのであった。なーんだ、客体と主体ね、、、ガクッ。

 エリートで良きパパVS浮気男、妻と仲の良い夫VS派遣妻を雇って親を看取った男、修論に励む院生VS尾行にのめり込む女、、、、これって二重生活っていうのか? これはただの二面性であって、そんなの人間ならアタリマエのことじゃん。

 そんだけのことを描くのに、このもったいぶった描き方は、一体、、、。それとも何かもっと見るべきものがあったのかなぁ。ゼンゼン響かなかったんですけど、私には。

 リリーさんと西田尚美さんの偽装夫婦が、本当の夫婦より幸せそう、という感想を見たけれど、ある意味そんなのはアタリマエで、西田さんはオシゴトなんですからね。そして、まあ、本作はきっとそこが言いたいのかも、と思いました。つまり、現実はそんな絵に描いた様な単細胞なもんじゃない、ってこと。、、、ま、これは深読みですけどね。

 原作を読んでいないけれど、いずれにせよ、原作はきっともう少し奥が深い話なんだと思いたい。


◆その他もろもろ 
 
 門脇麦さん、何かのドラマでチラッと見た気がしますが、まともに見たのは本作が初だと思う。んーー、正直なところ、あまり上手いのかどうか、分からなかった。ほとんど笑わない役だったし、院生なのもあって、かなり暗~~い人というイメージになっちゃったかも。でも、違う役ではゼンゼン違う側面を見せてくれそうな感じもする。もうすぐ始まる舞台「フェードル」を見る予定なので、一応楽しみ。

 長谷川博己は、最近めっぽうご活躍だけど、私はあんまし好きじゃない。このツルッとした感じの、爬虫類的な肌触り感を想像させる雰囲気がどうもダメである。本作の様に、自己チューで冷酷な男はお似合いです。彼の出演作は漱石を演じたドラマを含めて数本しか見ていないけれど、割と、何の役を演じても長谷川博己な感じがする。漱石ドラマも、尾野真千子さんに完全に喰われてしまっていたし、、、。彼のファンの方すみません、、、。

 リリーさんは、私は俳優として決して嫌いじゃないけれど、本作でのリリーさんは、ただのキモいオッサンにしか見えなかった、、、。すんません。

 ううむ、何か、雰囲気は悪くないのに、完全に雰囲気映画で終わっちゃっている気がする。マズイのは、シナリオと演出だと思われる。ちょっと調べたら、この監督さん、NHKドラマ「戦後70年 一番電車が走った」の脚本・演出も手がけていたのですね。このドラマは見たけれど、正直、素材は良いのにドラマはイマイチ、と思ったのでした。やはり、この監督さんの感性は、私には合わないようです。








期待外れでした、、、ごーん




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