






グルジア(現ジョージア)の画家ニコ・ピロスマニの半生を描いた作品。あらすじは、、、書き様がありません、悪しからず。
1978年に日本で公開され、今回、グルジア語オリジナル版がデジタルリマスターされ、初公開時と同じ岩波ホールにて再上映されることに。
余談ですが、貧しい画家と女優の悲恋を歌ったとされるあの“100万本のバラ”の歌のモデルが、このピロスマニだそうです。
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初日の初回に行ったので、冒頭、支配人・岩波さんのご挨拶がありました。初日はこういうのがあるので良いですね。客層は、ハッキリ言って年齢高め。同い年の映画友と2人で行ったんだけど、私たちより若者と思しき方の姿がほとんど見当たりませんでした、、、。しかもかなりの人。初公開時にご覧になった方々が、リバイバル上映でいらしたんでしょうかね、、、。ま、余談ですが。
しかし、、、なんかもう、画家の映画でハッピーなのって思い当たらないですけれども、本作も例外でなく、どツボな不幸映画です。
ピロスマニ(本名はニコロズ・ピロスマナシュヴィリ)は、周囲からは“ニカラ”と呼ばれていて、彼は画家として一定の尊敬は集めてはいるのですが、何しろ、人間として不器用というか、正直すぎるというか、とにかく何かと上手く行かずに、どんどん孤独への道を歩んで行ってしまうのです。
冒頭からして不穏さ全開。聖書の一節が読まれている声をバックに、美少女が病気なのかベッドに横たわり、奥の部屋には女性が3人座っており、一人は「姉同然に接して来たのに、、、」と言って、よよと泣いている。どうやら、この女性は、ピロスマニの義姉らしく、ピロスマニはこの家の養子だったということらしい。その義姉にラブレター書いちゃったんですね、彼は。で、家を追い出される。
その後はまあ、あれがあってこれがあって、歌のモデルになった女優さんが歌って踊っているシーンもあり、その間、ピロスマニはどんどん風貌がやつれて老い、病的になって行き、終盤は穴倉のようなすまいで孤独に絵を描いて暮らしているところへ、馬車に乗った男がお迎えにやってくる、、、でエンドマークです。
、、、え? これで終わり? 的な、バッサリ感。ひゃー、ちょ、ちょっと待ってよ、つまりあのお迎えは、本当の意味でのお迎えだったのか? ピロスマニは死んじゃったんですか? と思っている間に、エンドロールもなく劇場は明るくなってしまいました。古い映画にはこういう、バサッと終わるの、割とある気がしますが、、、。ものすごい置いてけぼり感、、、。
彼の絵もふんだんに出てきまして、私の好きな感じの絵ではないけれど、面白い絵が多いなと思いました。特に、途中で、ピロスマニが友人と一緒に始めた乳製品のお店の看板に掲げられていた黒い牛と白い牛の対になった絵とか。砂漠みたいなところにぽつねんと立っているお店の建物に、その牛の2枚の絵が、入り口を挟んで向かい合って掛かっているのが、絵的にとても印象に残ります。
ピロスマニ、良く言えばすごいマイペースなんですよ。というか、これは正確に言えば、ただの自分勝手。商い中に、店を飛び出していったかと思うと、干し草を買い込んできて地面に敷くと、そこに寝転がったりとか。、、、は? な描写が一杯。
かと思うと、ピロスマニを支持していると思われる大男が店に入ってきて、ピロスマニを侮辱するようなことを言う人にブチ切れたかと思うと、いきなり店のテーブルをひっくり返すとか。、、、え、何で???そこで急にテーブル返し、、、?みたいな。
説明シーンが一切ないので、予備知識がないと、ちょっと分かりづらいところは多々あるかなぁ、と思います。
が、なんというか、作品全体を覆うどよよ~~んとした空気感と、ピロスマニの個性的でユーモアさえ感じる絵が、うまい具合にギャップを醸し出し、おまけに書いてきたように意味不明な唐突な展開のシーンが時折はさまれると、何だか、好奇心だけで最後まで見せられてしまいました。面白い、というのとは違うんだけど、何と言うか、“何なん、このピロスマニって人!!”という、おかしな感じに支配されました。
まぁ、画家ってやっぱり、ちょっとヘンでないとなれないし、続かないんでしょうね。あらゆる方面の感覚がバランス良く育っていたら、画家になんてなれないんじゃないかしらん。どこか、尖がっているから人と違うものを見たり感じたりでき、それを絵に表現できるのだと思うので。そうしてみると、安定と平凡の上に成り立つ一般的な幸せ、なんてのは彼らの対極にあるわけで、どうしたって不幸映画にならざるを得ないんだよなぁ、、、と妙に納得したのでした。
結婚式のシーンがあるんですが、そこで老人がその体からは想像もつかない朗々とした声で歌を歌いだします。それに続いて奏でられる音楽はグルジア伝統のポリフォニーだそうです。この宴会のシーンが一番、平常心で見られたかな。後は、??か、!!の連続でございました。
画家映画は不幸映画。
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