





大戦前夜の1939年11月のある晩、ヒットラーはミュンヘンのとあるビアホールで演説していた。その頃、ドイツとスイスの国境であるドイツ人男性がドイツ兵に見つかる。男性はゲオルク・エルザー。地図や何かの設計図を持っており明らかに不審者であることから捕えられ、尋問を受けることに。
尋問を受けるエルザーはしきりに時計を気にする。そして、9時20分。エルザーは一瞬の恍惚にも似た表情を浮かべ、ミュンヘンのビアホールでは大爆発が起きる。しかし、その13分前に、ヒットラーはビアホールを去っていた。この爆発を仕掛けたのは、エルザーで、ヒットラーが13分早く立ち去ったのは、悪天候による予定変更のためだったが、こうしてエルザーの完璧に計算されたはずのヒットラー暗殺計画は、あっけなく失敗に終わる。
エルザーは一介の時計職人。共産党員でもないノンポリ音楽愛好家のプレイボーイ。彼がなぜ、、、?
邦題のセンスが悪過ぎる。作品の趣旨がゼンゼン違う。原題の『Elser』が作品を素直に語っていると思います。
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多分、この邦題のせいで、もっと違う内容を期待して見に来た人も多いと思いますね。私も新聞で紹介記事を読んでいたけれど、もう少し、暗殺計画にもフォーカスした話かと思っていました。
だからといって、それで作品にガッカリしたということは全然ありません。むしろ、こういう作品は好き。本作は、この暗殺計画をたった一人で計画実行したゲオルク・エルザーという男性にフォーカスし、彼がどういう経緯でそこに行きついたのかを辿る、かなり地味な作品です。
なので、『ワルキューレ』みたいのを期待して見に行くと、かなりハズレ感を受けるかも知れません。
本作自体はそんなことはないのだけど、エルザーをドイツでは英雄扱いする向きもあるそうです。しかも、ドイツの戦況が悪化する以前の戦前~開戦直後に起きた暗殺未遂事件、ということで、エルザーにはヒットラーやナチスの本質を見抜く鋭い眼力があった、という評価だそうです。
まあ、それは一面的には理解できなくもないけど、所詮は暗殺計画であり、私としては、正直、エルザーの行動を賞賛する気にはゼンゼンなれません。確かに、この暗殺計画が成功して、ヒットラーが1939年に死亡していたら、歴史は大きく変わっていたでしょう。もしかすると、ホロコーストの拡大も防げたかも知れない、とか。、、、でも、それは飽くまで仮定の話でしかなく、結果が吉と出たか凶と出たか、誰にも分からないことです。
なので、本作は、事実を淡々と、エルザーの目線で、、、というより、私的にはエルザーを尋問した刑事警察局長のネーベの目線もかなり入っていたように感じましたが、、、、とにかく、かなり抑制的な描写がされていて、真摯に作られた作品だと思います。
その割に



実際のエルザー氏は、スッキリ、シャープな感じのするかなりの美男子です。これで、職人、ノンポリ、音楽に長けていたとなれば、女性にモテモテ

実際よりイケメン過ぎるってことは実話モノにはよくあるけど、実際よりイマイチってのは、、、ちょっとねぇ。少なくとも不特定多数の人々が鑑賞するものなんだから、やっぱりドラマ性を盛り上げる意味でも、ビジュアルにはもう少し拘ってほしいよなぁ、と思っちゃう。
そして、エルザですが、、、。エルザーの元婚約者のエルザ。なんかややこしい。この人、エルザーと出会ったとき、子持ちの人妻なんですね。まあ、それは別にイイんですけど、そのダンナってのが、まぁ、もうホントにサイアクな男で、、、吐き気がするほど

というわけで、本質とは別の所で思いっ切り好みでなくなっちゃったのですが、作品の中身について言えば、エルザーがどうしてあんな大それたことをしでかしたのか、という明確なものは、当然と言えば当然だけど、描かれてはいません。でも、私は、だからむしろリアリティを感じたというか、、、。彼は、ノンポリだったからこそ、シニカルで、ヒットラーやナチスの胡散臭さ、危うさを感じたんだと思う。映画小屋で人々がナチスのプロパガンダ映画を見て熱狂している姿に、、、理屈じゃない何か、を肌で感じたのでしょう。理屈的にも十分危ないですけれども、もう、生理的に許せないものがあったのではないか、と私には感じられました。こんだけ、身近な人々を不幸にしていく社会っておかしい、という単純な思いも当然あったでしょうし。
そして、彼は、ノンポリだからこそ、○○主義を掲げた可動性の悪さもよく分かっていたんでしょう。集団ほど厄介なものはない、と。個の力など知れているけれど、可動性は高い。自分さえ決断すればよいのですから。そして、彼には、ヒットラー暗殺しか方法が思い浮かばなかったんでしょう。冒頭、賞賛できないとは書きましたが、私が彼でも、やはり結論はそこに行きつくような気がします。
でもまあ、信念を持っての行動、というのなら、イスラム過激派の自爆テロだって、別の側面から見れば同じことです。そう、彼のやったことはテロです。だから、やっぱり賞賛する気にはなれないし、私だったら、彼のように実行する行動力もなかったでしょう。
恐らく、ヒットラーやナチスに対してエルザーと同じ見方をしていたドイツ人は他にもたくさんいたはずです。しかし、多勢に無勢、なす術ナシだったのでしょうか。歴史を知る現代人はこれらのことから学ばないといけませんよね、、、。
ナチス及びヒットラーにしてみれば、こんな大爆発を、一市民がたった一人で実行できるはずはないと思い込み(ある意味、当然だと思う)、徹底的にエルザーを拷問にかけ自白させようとするわけですが、この拷問シーンが短いんですけど、私はほとんど正視できませんでした。これは、恐らく実際の拷問に比べればほんの序の口だと思いますが、それでも凄惨極まりないです。グロいのが苦手な方、ご用心。
エルザーをトーマス・クレッチマンが演じたら良かったのになぁ
(ちょっと年齢が上過ぎるか)

(ちょっと年齢が上過ぎるか)
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