映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

築城せよ!(2009年)

2015-11-20 | 【ち】



 21世紀の愛知県豊田市猿投町に、なぜか武将たち3人が突如現れる。彼らは、遡ること400年前の戦国時代、猿投城を築いている途中に無念の死を遂げた武将たちの怨霊が、現代人の体を借りて現れたのだった。

 殿様・恩大寺隼人将は、うだつの上がらない町役場の役人・石崎祐一(片岡愛之助2役)に、恩大寺の家臣・猿渡勘鉄斎は大工・井原勘助(阿藤快2役)に、家来・権太夫はホームレス(?)の男・ゴンに、それぞれ憑依した。しかし、彼らには時間がない。すると、殿はゴンが段ボールハウスで暮らしているのを目にし、「何じゃこれは!」と段ボールに目を付ける。そして、段ボールで城を作ることを思い付く。

 かくして、現代に生きる猿投町民を巻き込んでの築城が始まるのであった、、、ごーん。
 
 
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 大分前に、ネットで本作の存在を知り、げげっ!! となりました。なぜって、猿投は、私が大昔の一時期を過ごした隣町だったのでございます。猿投温泉が舞台と聞き、しかも戦国武将が出てくるとなれば、そりゃぁ、あーた、きっと猿投山も、猿投神社も出てくるだろう! こりゃ、見なくっちゃ、と思ったものの、まぁ、正直見るのが怖かった、ってのもありまして長らくレンタルリストの下位に沈ませていたのでございました。

 まずは、ガッカリした点を。

その1:猿投山も猿投神社も出てこないじゃん、、、ガックシ
 いやぁ、これはかなりガックシ度が高いです。正確には知らないのですが、猿投神社は日本武尊の双子の兄だかが祀られている、それなりの神社ですし、猿投山はその日本武尊の双子の兄だかが葬られた山だそうで、地元ではどちらも結構崇められていたのです。あの辺りの人々は、初詣と言えば猿投神社、遠足と言えば猿投山、みたいに、とてもとても土着のものなのに、それが本作ではかすってもいないってのは、ちょっとねぇ、、、。戦国時代なら、もうどちらもあったわけで、現代人よりはよほどその存在は大きかったはずなのに。城からの眺めをCGにするんなら、猿投山を入れないでどーするよ、、、と言いたい。もうちょっと地元の地理を研究していただきたかったですねぇ、、、。

その2:三河弁がほとんど出てこないんですけど!!!
 こりゃ、ガッカリいうより怒りだわ。猿投で生まれて育った殿さまが、家来まで、何で標準語喋っとんの? たわけぇ~。ウソ演ったらかんわ。馬場町長も、猿投の人間でしょう? ぜーんぜん三河弁話しとらんがや。おかしいでかんわ。愛工大の学生も、何気取っとるの、標準語なんか喋ってまって。ちゃんと三河弁でやらなかんじゃん!! ぜーんぜんリアリティなんありゃせんわ!!!

その3:あの猿投玉って何?
 私には柿に見えたんですけれども、あの辺の名産品として、あまり柿は順位は高くないと思うのですが、、、。梨か桃なら分かるんですけど。何で柿なんでしょーか? 、、、謎。

 ……というわけで、いきなり文句を並べ立てましたが、映画としては、結構面白かったですよ。ヘタにその場所をよく知っているもんだから、つい文句が言いたくなるだけで、知らなければ上記3つのことはゼンゼン気にならないことです。

 過疎の村という設定ですが、過疎っていうほど過疎じゃないと思いますけれど、、、。まあ、私は、もう少なくとも10年は足を踏み入れていない地なので、今現在の状況は分かりませんが、本作の制作年は2009年でしょ? 私が知っているのは2005年くらいまでなんで、4年後にいきなり過疎になっているとは思えないんですよねぇ、、、。

 なぜなら、あそこは「豊田市」だからです。そう、企業城下町。トヨタのおかげで豊田市は超お金持ちなんですよ。だから、過疎で困っている、というのはあり得ない、、、と思うんですけれど。確かに、高齢化は進んでいるでしょう。しかし、それは猿投だけの問題じゃありませんからねぇ。“ド”のつく田舎であることは間違いないですが、あの辺一帯は(トヨタ)車社会。田舎だろうが、ド田舎だろうが、ゼンゼン問題ないのですよ。

 ……と、またまた地元のリアルな話をしてしまいました、、、。

 本作の成功(?)のポイントは、殿に愛之助さんを起用したことですね。昨今お騒がせの君ですが、さすが歌舞伎役者、殿に憑依されてからの演技は堂に入っていました。「築城せよ~~!」と軍配を掲げたシーンは、素晴らしかったです。本物のトノに見えましたもん。段ボールに目を付け、近隣に段ボール探しに殿自ら行くのですが、ある場所で山積みの段ボールを見つけた殿のセリフ「このダンボ、どれくらい集められる」(だったかな、正確じゃありません)の、「ダンボ」が笑えました。愛之助氏が大真面目に言っているのが余計に可笑しい。

 そして、脇を芸達者が固めたのも良かったです。敵役の馬場は江守徹さんでなかなかピッタリ。彼、お歳のせいでしょうか、ちょっと滑舌悪いです。今の大河ドラマでも感じますので、多分、さしもの江守氏も寄る年波には勝てぬ、ということでしょうか。それはそれで味わいがありますが、かつての姿を知っているとつい比べてしまって寂しいです。

 さらに、阿藤快さんです、、、。本作を見た翌日に急死されてしまい、ものすごく驚きました。つい最近も、「下町ロケット」に出ていたし、確かちょっと前には「ケータイ大喜利」にも出ていたような。本作でも、アクの強い家臣を大真面目に演じていらっしゃいました。悪役が上手い役者は素晴らしいと常々思っているんですが、阿藤さんは悪役がよく似合って、でも善人演じたら本当に善人に見えて、、、惜しい人がいなくなってしまわれました。

 あと、ストーリー的にも、なかなかよく出来ていると思います。馬場町長も、ちゃんとご先祖が殿とつながりがあったり、建築史が専門の大学教授を戦国時代の人間と現代人をつなぐ存在にしていたり、、、上手いなぁと思います。

 何より段ボールで、本当に城を作ったってんですから、凄いです。メイキングも見ましたけど、かなり大変だったようで。そらそーだよなぁ。

 まあ、そこかしこで低予算作品というのは隠せませんけれども、アイデア次第で面白い映画は作れるんだ、ということを実践して見せてくれた意欲作だと思います。もう少し、地元をよく知る人間も納得できる、猿投の描き方をしてくれていれば、あと2つくらいを献上したのですが、、、。





“猿投”は足助と並んで愛知県でも田舎の代名詞です。
でも良いところよ




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コメント
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