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上越秋山紀行 下 33 七、八日目 小出村より帰庵、秋山言葉の類 1

(散歩道にスイセンが咲き出した)

土手のスイセンはすっかり人の手を離れて、土手の草刈りが終った後に、茎を出して花を付ける。

名古屋のかなくん一家が帰郷してきた。さっそく、まーくん三兄妹がやってきて、大賑わいになった。

「上越秋山紀行 下」の解読を続ける。

やゝ秋山の地元を離れ、見玉村に至り、再ひ不動尊拝礼し、頃日(近頃)、宿りし瑠璃山正法院に笠を脱ぎ、中食を用う。法印の留守に力なく爰元(ここもと)を立ち、元、来たりし道は記すに及ばず。

黄昏近く妻有の庄、小出村、狩人市郎右(衛)門が家に舎(やど)る。主の夜話に、この村、圓右衛門と申す者、親と一集(一緒)に壮年の時、樵(きこり)する。往く先に、大樹の中茫々たるの中に、大木横たわり、圓右衛門親、踏みまたがんとするに、俄かに草木鳴動し、木にはあらで大蛇の頭上るを、斧振り揚げ、既に真二つにせんとするを、圓右衛門その手にすがり、携えたる斧奪ひ取り、無難にして宿へ帰り、親は悪気吹かけしやらん、心神悩み乱れて、命終る。今なお圓右衛門は存生してあるとなん。
※ 葎(むぐら)- 生い茂って薮のようになる、つる草の総称。

また眼下の清津川向えにカクマ村と云うあり。先代孫兵衛と申す勇猛のもの、大蛇を殺し、代々子孫に崇る事あれども、この市郎右衛門は山に猟し、川に漁(あさ)る事、昼夜の差別なけれども、やゝ五十の齢に及ぶまで、奇なる事に逢わずと。

この程、秋田の狩人輩が申すに符合せりと思いぬ。この夜は馴れぬ長途に草臥(くたび)れて、いと早く臥し。翌日は旦(あした)より、露時雨も七、八日の内に始めて降り。また元の十二峠越して、無事に帰庵を祝う。
※ 露時雨(つゆしぐれ)- 露が一面におりて時雨にぬれたようになること。また、草木においた露が、時雨の降りかかるようにこぼれること。

    秋山言葉の類
一 行く事を、いかず。来る事を、こず
一 呑む事を、のまず。喰う事を、くわず
一 処により極(ご)く下賤のもの、自分の女房を、かゝさと申す。
一 先方の女房の事を、かゝどのと申す。
一 拙と申すを、うらと云う。
一 拾う事を、ふるうと申す。
一 きをと唱えるは、取わけ、大赤沢、小赤沢、上の原、和山
などなり。譬えるは、茸をつのこ。煙管筒を、ちせる。来なっ
たと申すを、ちなつた。またきせるを、けせると申す所あり。
一 こう往くわいのうを、こういくいもうと云う。或はこう往く
を、こういきすとも云う。
一 味噌を、めそと云う。傘を、おしつほりと云う。傘は秋山
中になし。里にては雨の降る時は、おしつほりなど云う。頭巾
を、てっぺんと云う。

(この項続く)
もう少しで秋山紀行も読み終える。何とか年内に読み終えることが出来そうである。
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