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「遠国御名代勤方留」の解読 9


笹本稜平著「山狩」

笹本稜平という作家が昨年11月に死去した。享年70歳であった。かつて山好きだった自分が、10年ほど前に図書館で見つけた、山岳、警察小説ともいうジャンルの作家で、愛読してきた。作家活動は20年ほどだったが、自分は23冊の著書を読んでいる。その23冊目がこの本で、氏はこの本の上梓を見ないで急死したとネットで知った。近頃は、自分より年若の人が亡くなることによく出くわす。それだけ年取ったのだから仕方がないのだが、やはりつらいところがある。

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「遠国御名代勤方留」の続き、7Pの4行目より。

一 揃(そろい)之上、相伺候由ニ而、田中龍之助申聞候。今日者羽目之間御列坐ニ候。
尤、言上相須まし候与申上候様、大炊頭殿御差圖之由、かつ言上書も
差上候様、直(ちょく)ニ、御臺様 御簾中様江之言上書、并宮方
両傳奏江之御使書付ホも、其席ニて差上候様、御差圖有之候
旨、申聞候。且又 大納言様江之言上書ハ、西丸江、相濟次第罷出、
能登守殿登 城無之故、御見廻り御老中江可申上旨、被仰聞(おおせきかされ)候由申達、
承知之趣相答候。
一 大炊頭殿、丹阿弥を以、 御本丸相濟候へハ、早々西丸江相廻候様被仰渡、畏(かしこまり)候趣申上候。
一 西丸江内通(うちとおり)罷出候ニ付、御小人目付之義、御目付江申達候事。
但、今日者、外相廻り候ニ付、不申達(もうしたっさず)候。
一 御目付荒川常次郎、之書付見セ候。
※ 寄せ(よせ)➜ 子細。わけ。

【 読み下した文】

一 揃いの上、相伺い候由にて、田中龍之助申し聞き候。今日は羽目の間御列坐に候。
もっとも、言上相済まし候と申上候様、大炊頭殿御差図の由、かつ言上書も
差し上げ候様、直(ちょく)に、御台様、御簾中様への言上書、並び、宮方
両伝奏への御使書付なども、其席にて差し上げ候様、御差図これ有り候
旨、申し聞き候。且又、大納言様への言上書は、西丸へ、相済次第罷り出で、
能登守殿登城これ無き故、御見廻り御老中へ申し上ぐべき旨、仰せ聞かされ候由、申し達し、承知の趣相答え候。
一 大炊頭殿、丹阿弥を以って、御本丸相済み候えば、早々西丸へ相廻り候様、仰せ渡され、畏(かしこ)まり候趣、申し上げ候。
一 西丸へ内通り罷り出で候に付、御小人目付の義、御目付へ申し達し候事。
  但し、今日は、外相廻り候に付、申し達さず候。
一 御目付荒川常次郎、寄せの書付見せ候。

(7Pの15行目まで、以下つづく)

読書:「山狩」 笹本稜平 著

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