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「竹下村誌稿」を読む 120 質侶庄 7

(庭のミヤコワスレ)

昨日、解読出来なかった一文字、ふとカナではないかと思い付き、変体仮名に当てはめてみて、「緒」という文字に行き当たった。これは「を」の変体仮名であった。これで、5月の第一回の分は漸く解読が終った。どこかで静岡に届けて教材の解答としてコピーを頼もうと思う。続いて、その先の解読を進めている。今のところ、2文字がどうにも判らない。これも何日かかかるかもしれない。

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「竹下村誌稿」の解読を続ける。

而してその違勅の内容はこれを窺うに由なしといえども、九月十七日に至り、鎌倉に到着せし院宣、左の如し。

十七日、戊辰去月廿七日、院宣到来、民部卿経房執達さるゝ所なり。条々の内、兼信所領、遠江国雙侶(しとろ)庄事、御旨に応じ、今日御請文献じらる、云々。これ光範朝臣所望により、地頭職を去り進ぜらるべきの由、自余、両条は、先日これより言上せられ、勅答として、云々。
※ 民部卿経房(みんぶきょうつねふさ)- 吉田経房。平安時代末期から鎌倉時代初期の公卿。権右中弁・藤原光房の子。
※ 執達(しったつ)- 上位の者の意向・命令などを下位の者に伝えること。通達。
※ 自余(じよ)- このほか。そのほか。
※ 勅答(ちょくとう)- 天子が臣下に答えること。また、その答え。


院宣云う。(東大寺料麻苧の事、日吉社千僧経並び装束の事、の二条略す)
※ 麻苧(あさお)- 麻の繊維を原料として作った糸。麻糸。
※ 千僧経(せんそうきょう)- 千僧読経。多くの僧を招いて経を読ませること。


円勝寺領、遠江国雙侶(しとろ)庄地頭の事。
(くだん)の御堂、待賢門院御創め、殊に他寺に准じず思し召し、連々仏聖、以下欠如し、年貢に対捍し、聞食(きこしおす)に便ぜず。兼信、流罪にされ訖(おわ)んぬ。その替り、地頭を補(ほ)せざるは、旁(かたがた)(うべ)なるべき事か。
※ 連々(れんれん)- 続いていて絶えることのないさま。

※ 仏聖(ぶっしょう)- 仏前に供える米飯。仏供。
※ 対捍(たいかん)- 中世において,国司や荘園領主の課役・年貢徴収に対し,地頭や名主などが反抗して従わないこと。
※ 聞食(きこしおす)- 召しあがる、お飲みになる。
※ 旁(かたがた)- いずれにしても。どっちみち。
※ 宜(うべ)- 本当に。もっともなことに。なるほど。


   以前条々、この旨を以って仰せ遣わすべきの由、内々
   御気色候なり。仍って上啓くだんの如し。
    八月廿七日                右大辨定長
         謹上  民 部 卿 殿

※ 気色(きしょく)- 意向。意志。
※ 上啓(じょうけい)- 啓上。目上の人に申し上げること。
※ 右大辨(うだいべん)- 律令制で、太政官右弁官局の長。従四位上相当。


読書:「走れ、千吉 小料理のどか屋人情帖18」 倉阪鬼一郎 著
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