平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「家忠日記 二」を読む 18
午後、空を見ると、特徴的な雲に覆われていた。層積雲にも高積雲にも見える。
家忠さんは、毎日のように、夜昼なく空を眺めている。仕事がら天気が気になるからだろう。けれども、天気以外にも見えるものも多い。天正8年9月1日も箒星を見つけている。
「家忠日記 ニ」の解読を続ける。
天正八年(1580)辰九月
九月小
一日 戊辰 星光り長き箒星の小さき出で候。酉時より雨降り。
同二日 己巳 土用に入り。(今川)氏真衆、蒲原助五郎殿、越され候。
同三日 庚午 会下へ参り候。
同四日 辛未
同五日 壬申 初めて今夜、水鳥着け候。
土呂出田九三郎と浜松衆、左橋甚五郎犬公事にて、浜松へ人を下し候。
※ 左橋甚五郎 - 家康に警戒されて、逐電する。(鴎外の小説「佐橋甚五郎」)
同六日 癸酉 高野聖越され候。
※ 高野聖(こうやひじり)- 地方伝道のために、高野山から派遣された回国の僧。
同七日 甲戌
同八日 乙亥 卯刻より巳時まで雨降り。
同九日 丙子 岡崎三城坊越され候。
同十日 丁丑 卯刻より巳時まで雨降り。
同十一日戊寅 夜雨する。祈祷候。鳥屋にてはいたか留り候。
※ 鳥屋(とや)- タカの羽が夏の末ごろから抜けて、冬までに生えかわること。その時機に、鳥小屋に籠るところからいう。
同十二日己卯
同十三日庚辰
同十四日辛巳 申刻より夜まで雨降り。
同十五日壬午 大坊に月次連歌候。
庭の色 時雨(しぐれ)て山や うす紅葉
同十六日癸未
同十七日甲申 ‥‥
林にて水鳥着き候。
同十八日乙酉 卯刻雨、夜まで降る。
吉田左衛門尉所より、来る廿二日に、
浜松まで陣立て候えの由、申し来り候。
同十九日丙戌 鳥屋(とや)にて、またはいたかうで候。
同廿日 丁亥 吉田左衛門尉所より、来る廿二日の陣、延び候由、申し来り候。
同廿一日戊子 三光院じゅえんふる舞い候。
同廿二日己丑
同廿三日庚寅 水野惣兵衛殿、刈谷へ領、上様(信長)より下され候て、入城候。
普請に人を遣し候。
※ 水野惣兵衛 - 織豊時代の武将。水野忠政の九男。徳川家康の家臣。天正8年、織田信長に属し、兄水野信元の旧領、三河刈谷城を与えられた。のち秀吉家臣をへて家康に帰属。
同廿四日辛卯 点取の誂諧の発句。
折る袖の 藁も朽ち葉の 袷(あわせ)哉 家忠
※ 誂諧(ちょうかい)- 俳諧の連歌のこと。点数を付ける連歌の会。
同廿五日壬辰
同廿六日癸巳
同廿七日甲午 九月尽しの連歌候。
発句 勘解由
神やもる 移ろわぬ筆は 井垣かな
※ やもる - 静める。
※ 井垣(いがき)- 鳥居などについている、「井」の字形の垣。
同廿八日乙未 酉刻より雨降り。
上坂と云う連歌士、岡崎山岡半左にて興行。
紅葉して 藤が名を変えよ 初さくら 上坂
同廿九日丙申 申刻まで雨降り。
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