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延享四年道中御触書(1) - 掛川古文書講座

(延享四年道中御触書のテキスト)

掛川古文書講座で、先月と今月の2回に渡って、延享四年に出された道中御触れ書を読んだ。当時、道中を行き来する旅人の横暴が、宿や助郷の村々を疲弊させていた。そのままでは東海道の宿駅制度の存立にかかわるので、道中奉行から定めを守るように出された御触書である。読み進めれば、その事情も段々分ってくる。

延享四丁卯(ひのとう)年三月八日、仰せ出され候、道中御触れ書写し、同六月十九日届き申候。

      覚え
一 旅人の内、定めを破り、無法成る儀これ有り候わば、触れ書の趣を以って相改め、若し相用いざり候わば、その所の領主、役人へ達し、役人その段旅人へ申聞かせ、その上にて、異議及び候わば、差し留め置き、江戸表へ訴え候様仕るべき事。

一 御代官所の儀も、右の趣に准じ取り計い申すべき事。

一 町人へ家符を借し渡し、武家の荷物に致させ候儀、これ有る由、相聞こえ候。自今堅く無用たるべく候事。

一 近年宿々悪党の者これ有り、飛脚の者どもへ賃銭ねだり取り、旅人の泊々へ
相越し、酒手などねだり取り候由、自今右躰の者これ有るに於いては、その所に捕え置き、御科御代官、私領は領主、地頭ヘ、早々申し出ずべき事。

一 人馬賃銭の儀、御朱印並び御用の外は、相払うべき事の條、宿々日〆帳に委細記し置き、宿中はもちろん助郷村々へも勘定相立て候様に、問屋常々相心得べき事。
※ 日〆帳(ひじめちょう)- 日締帳。近世の商業帳簿の一、日計表。

一 泊休之儀、前広に日限り相極め候わば、勿論差掛り約束いたし候分、縦(たとい)軽き旅人たりとも、異変これ無き様、本陣、旅籠屋、急度相心得申すべき事。
※ 前広に(まえびろに)- 前もって。あらかじめ。かねて。
※ 差掛り(さしかかり)- ちょうどその場所に至り着く。


一 この度相触れ候上は、宿々の者ども、旅人へ対し非儀を申し懸け、賃銭入用多くこれを取り候か、または、旅人を滞らせ候儀これ有り候わば、急度申し付くべき事。
                             以上。
 延享四卯年(1747)三月

右の通り、相触れらるべく候。


      定め
一 御用にて道中往来の面々、御朱印人馬の外、添人馬多く相立て候由、相聞き候。前々も申し達し候通り、無用添人馬出させ候儀、堅く停止(ちょうじ)たるべく候。

一 御朱印員数の外に、入るべき人馬の分は、御定めの賃銭、相違なく、急度相払わせ申さるべき事。

一 御用に付いて往来の面々、或は在番、或は諸大名、すべて道中往送の輩、
人馬割りの役人これ有るべき事に候間、御朱印人馬、並び、入るべき賃人馬など相立てさせ、賃人馬の分は賃銭相違なくこれを払い候様に、人馬割り役の者、問屋場に相残り、委細吟味を遂げ候様に、申し付けらるべく候。その外の家来または雇いの者ども、私(ひそか)に人馬、駕籠、出し候様に申し掛け候とも、役人の断りこれ無く候わば、一切差し出しまじき由、宿々問屋場にて右断り候の様に申し付けらるべく候。道中の者どもにも、右の通り心得べき旨、申し渡し候事。
※ 在番(ざいばん)- 江戸幕府で、役人が交替制で二条城・大坂城・駿府城などの勤務に当たったこと。

                            (つづく)
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