わいはまいね 能面三昧

写真付きで趣味の能面製作を紹介するブログ

彩色だ3

2008年03月01日 | 日記・エッセイ・コラム

Blog180 彩色の第3弾。もっとも、黒髭とほぼ並行して作業をやっていたから、同じような時期である。これは彩色前の木彫りの状態で、数年前に作っていた「しかみ」という能面だ。

これまで能面を彫るときは、材料の都合が付けば出来るだけ複数の同じものを作るようにしている。一個だけでは失敗もあるし何かの都合で破損することもある。だから、彩色でも複数の面に施すことになるから、色が変わったり表情が変わったりする。

Blog181 下地塗りが終わって顔の表面の色をあれこれ考えて作り、塗ったところの図である。これも見本はホームページから引用したもので、実は本当は「赤黒い」「どす黒い赤」色なのだ。この色はどちらかと言えば紫っぽく出来あがっでしまった。

「どす黒い赤」だから、赤色に黒(実際は墨)を混ぜてみたが、胡分(白)に混ぜたことでピンクっぽい色になってしまう。更に焦げ茶や茶色、朱色などを混ぜ合わせたところ、おかしな色になってしまった。それが上の色だ。本当は「柿色」が欲しかったが、それが出来ずに苦労した結果、見本とは別の色合いになったのだ。

Blog182一日考えてやり直すことにした。一度上塗りを紙ヤスリで全部取ってしまった。それで改めて白い胡分を用意し、それに慎重に色を作っていく。最初は赤を混ぜオレンジを混ぜ様子を見るが、どうしてもピンク系になってしまう。茶色や焦げ茶も入れてみるが、どす黒い赤や、せめて柿色にもならない。

上記の面が左右で色が違うのは、試した色を塗っているから。どう見ても「赤黒い」とは言えないし、見本とも大きな隔たりがあり、満足できないものの、やたらに色を作るわけにも行かない。というのも、彩色の材料に限りがあり、何度も試すほど多くは持っていないのだ。

本には「ベンガラ」「朱」を使うとなっているが、ベンガラはないし、他の色も水彩絵の具を代用しているのだ。元になる胡分や他の材料などは当地では売っていない。絵の具は売っているが、その外、筆にしても「面相筆」「ぼかし筆」「岩絵の具」「にかわ」等、画材そのものを取り扱っている店がないから、無くなったら先生に追加注文するか関東の街に出かけて買ってこなければならない。

Blog183  それでも、手持ちの画材を駆使してなんとか完成にこぎ着けることになる。それがこの写真だ。眉毛や髭などは、よく見ると「黒髭」とほぼ同じ描き方のようだ。前の写真と比べたら、だいぶ赤みが出てきているが、本当はこんな色ではない。眼球や歯は金泥を塗って錦石で磨いたところ。これは、般若の手法だから知っていた。

赤くなったのは、試しに朱色(粉末を水、又は膠で溶かしたもの)をぼかし網を使って振りかけたのだが、その時は赤くなったものの乾燥したら元の粉末になって、こすったら剥げてしまったのだ。それでも、表面が梨地肌のため、隙間に入り込んだ朱が残ったことで、赤みが出ていた。更にその上に古色を出す「夜叉の実」の液をぼかし網で振りかけて、いくらか赤みを固定させた状態である。

Blog185 こちらは若干色味が違うが、まあ似たような手法で「憤怒の表情」を表したものである。これも見本の色とは大きく違っていたが、もうどうしようもないし、素人には比べる面がないから、「こんな色かな」ということで終わるかも知れないという期待を持って、完成させてしまった。

ここ2週間ほどは、前の「黒髭」と今回の「しかみ」4面を彩色するために、毎日数時間を費やして作業をしていた。これで、手持ちの岩絵の具(岩彩)も多くがなくなってしまったので、次の面に彩色することは出来なくなった。あとは足りなくなった色を補充できるまで作業は中止である。

来年度も4月以降の「能面教室」に通う予定なので、その時に先生に色や材料の補充を御願いしてみることにしたい。次回の新規作成課題もすでに決まっており、今の生徒も全員が留まるようなので、まだまだ楽しみは続くのだ。

ちなみに次回に作成する能面は「乙(おと)」。おたふくとも言われる、あの面だ。私はすでに前の先生が担当していた時に作っているので、2度目の作成になる。

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彩色だ2

2008年03月01日 | 日記・エッセイ・コラム

Blog176 さて、前回の投稿からすでに半月も経っている。この間、ぼーっとしていたのかと言えばまったくそんなことはない。この2週間は毎日、切磋琢磨ではないが、忙しい事をしていた。

それは、次の能面に彩色を始めたことである。前回の最後にも書いたが、「賢徳」が終わった後は「黒髭」と書いたことで、それを始めたのだ。写真は黒髭である。木彫りの状態から目止めの「とのこ」を塗ったところ(左)と下地胡分を塗ったところ(右)だ。

眼はこだわりで「真鍮板」を細工している。般若の眼と同様の要領だから、一応体験しているので手順は分かっているが、合わせるのに苦労をした。

Blog177 白い胡分の上に地肌となる色を混ぜ合わせ、それらしい色の胡分を新たに作り塗っていく。今回も梨地肌にするつもりだったから、色の付いた胡分を筆に付けて、筆の先で叩き付けるようにしながら彩色をしていく。

それが乾燥したところ。作った色と乾燥した色が違うので、乾燥した時を想像しながら色作りをするのが本当だ。が、素人の悲しさか、それが出来ない。かなり濃いめに作らなければ、どうしても白っぽくなってしまうので、注意が必要だ。

Blog178 更に顔の表面に髭や眉毛などを書き込んでいくと、このようになった。左右の面の色が違うのは、見本の色に合わせるために上塗りなどをしているから。

見本の色は、能面の作者が公開しているホームページなどを参考にしており、それに似せようとして試行錯誤をするから、複数の色が出来てしまう。塗った上で乾燥させたら、上のようになってしまった。これを更に上塗りをするわけにも行かず、妥協してしまった結果である。何と言っても写真しか見ることが出来ないので、やむを得ないのだ。

Blog179 さて、出来上がった「黒髭」だ。真鍮板の眼も、金色の歯もきれいに出来上がっている。見本は当然の事ながらすばらしいものだが、自分の作ったこの黒髭も、素人としてはまずまずと思う。見本を紹介しないのは、あまりにも差が有りすぎるので、情けないから見せられない。

眉毛や髭は細い毛相筆で一本一本書くのが正解である。が、それは非常に難しいのだ。一筆で書き始めから書き終わりまで描くのが正しいのだが、とてもそんなことは出来ない。

筆で、同じ太さで凹凸のある立体面に線を引く事が並大抵ではないことは、やってみるとよく分かる。しかも、一本の線の太さは0.何ミリという世界だ。毎日書いていれば手が覚えてくると言うこともあるだろうが、何と言っても初めての経験なのだ。うまくいくわけはない。

ということで、それらも承知の上で適当なところで妥協した結果が、最後の写真である。著名と言わずとも、上手な出来の能面を見た経験者なら笑うかも知れないが、まあ自我自賛で良いのではないかな・・という感想を持って、「黒髭」2面が完成した。

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