「若乙2」のところにも書いたが、例の堅い材料である「けやき」を使った能面を、試しに彫ってみることにした。対象としたお面は「小面(こおもて)」である。女面であり、最初に学習するお面の一つでもあることで、初心者でも比較的簡単に彫ることができる入門用のお面である。
上の写真を手本にして彫っていく。愁いを含んだ若い女性のお面であり、入門用とは言え、能面彫りの技術的な基本がすべて入っている能面だ。
これは2011年8月の作品。その後にも一個、彫っているが、今回の作品は6年ぶりの小面になる。なお、最初に小面を彫ったのは2001年5月なので、ここから数えたらなんと16年も経っていることになる。いやー頑張っているね。
上の写真は22日だが、ここまで行くのにはすでに丸一日が経っている。従って、作業開始は21日頃かな。切り取った表面に、丸のこぎりの刃の跡が残っている。摩擦熱で焦げた状態だ。こんな事は、これまで20年近く使ってきたヒバ、あるいは檜などでは起きなかった状態だ。このケヤキはそれほど堅いという表れでもあろう。この状態にまで切り取ること自体が、大変な作業なのだ。さて、この跡、うまい具合に作業が出来るのかな。
タダでもらった材料の関係で、高さ(暑さ)が65mmしか取れなかったから、足りない部分には余った材料で補ったところ。ちょうど鼻の部分だ。また、周囲の丸い部分をのこぎりで切るのも大変だったよ。
上は24日だが、更に周囲をちょっとだけ図面に沿って彫ってみた。もちろん材料が堅いのは同じだから、これの作業も大変。のこぎりはまだしも、一般的な叩きノミで叩いても、これまでの青森ヒバとはちがい、とにかく堅い。「気持ちよく彫っていける」などにはほど遠い作業環境で、腕はしびれるし時間はかかる・・・など、とにかく大変な作業である事は間違いない。無理をしないように・・・
25日の結果。上の写真と比べてもかなり気合いが入っていることが分かる。この段階ではノミだけで、まだ彫刻刀は使っていないが、実は彫刻刀でも厳しい作業が予想されるのだ。とにかく、能面彫りを紹介している参考書にも「けやき」「なら」材は余り堅くて重いものは避けた方が良いでしょう」と紹介されているほどだ。
ということで、今のところは気合いを入れつつ、慎重に彫っているものの、彫刻刀を使った細かい細工に入ったら、にっちもさっちも行かなくなるかも知れない。もっとも、その状態になれば作業は中断し。苦労して製材した材料も捨ててしまうことになるかも知れない。
と言うところでした。