我が家に「香」の道具がある。香炉は3個ほどしかないが、まあ安いもので、その辺に売っているような代物だ。
だいぶ前になるが、一時、香に凝ったことがある。名古屋の近くの小牧市に勉強に行っていた頃、休みになると名古屋まで出かけて、香の専門店に行き、いろいろと眺めていたものだ。さすがに専門店であり、香に関するあらゆるものがあったのを覚えている。
香炉もピンからキリまであり、100万円なんてのもある。青磁の香炉などは、いかにも品があり、かつ高価であるが、美術品と思えばそんなものか・・と思えてしまう。香木もこれまたピンからキリまであり、数グラムで数十万円などという、とんでもないものもある。
「香」はそのとおり「香り」を楽しむものだ。香道と言うのがあって、その中ではいろいろ作法もあるらしい。臭いをかぐのではなく「香りを聞く」と言われる。香道も「茶道」「華道」などと同じ「○○道」の仲間に入るみたい。
この歴史は古く、平安時代にさかのぼると記憶している。当時は風呂などはなかったから、体から発するにおいを消すために、香を使った・・・と言う話で、特に女性の間ではやったらしい。かの紫式部や清少納言なども使ったと、何かの本に書いてあった。(本当か?)
香も、香炉だけあればいいというものではなく、その外にの何かしらの道具が必要だ。これは名前は忘れたが、手元にある道具の一つ。金属の箸のようなものは、炭をつかむ道具。へらのようなものは、灰を整える道具。鳥の羽は、灰が付いた香炉をきれいにする道具だ。もう少し種類があるが、最低このぐらいは必要なのだ。このほかにも、雲母でできた「銀葉」、これは香木を乗せる板だ。当然香木も必要になる。これがないと香にならない。
写真は、香の準備が出来た状態である。香炉には十分な香灰があり、灰の中には火のついた炭が埋め込まれている。そこに細い穴を開け、炭の熱を灰の上に導く。灰の上には「銀葉」が置いてあり、更にその上に香木が置いてある。しばらくすると、香木が熱せられ、蒸発した香木の精がほのかに広がってくる・・・と言う仕掛けだ。
香木はたくさんの種類があり、それぞれの香りは当然違う。白檀はよく知られた香木だ。伽羅も知名度が高いが値段も高い。「沈香」はよく言われ一般的に売られている。だから私も沈香を使っている。最近やらなくなったので、いたと言う方が良いかな。これは10グラム(15mm四方の薄い板状の香木片が数枚入っている)で3000円から5000円位で趣味の範囲に入る。
形状も、板状のものからのこくず状のものもあり 、更には線状のものもある。いわゆる「線香」だ。最近は練り状の香が手軽で簡単だから、こっちの方が多いかも。形も渦巻き型、線香型、円錐状など、沢山あっておもしろい。
「沈香」についてのエピソード。
原産地:インドシナ、マレー、インドネシアの一部地域。
奈良東大寺の宝物庫正倉院に収蔵されている名香木「蘭奢待」はこの沈香の一種で、時の権力者、足利義政、織田信長、明治天皇によって裁断された事は有名。
部屋に漂う上品な香りは、味わった人でなければ分からないだろう。
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