2017年10月21日(土) 6:00pm みなとみらいホール
ショスタコーヴィッチ ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 10-6-7-5(カデンツァ)-5
ヴァイオリン、ボリス・ベルキン
Int
チャイコフスキー 交響曲第6番ロ短調 悲愴 16-7-9-9
(encore)
チャイコフスキー モーツァルティアーナより第3曲 祈り 3
アレクサンドル・ラザレフ 指揮 日本フィルハーモニー交響楽団
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ベルキン1948年生まれ。痩せ身で軽そうに見える。足は細めで、動きが特段敏捷というほどの事はないが身のこなしはいい。腕も同じ感じなので腕っぷしが強いという感じはしなくて、弾きも最初は少し定まらないところがあった。カデンツァの弾きは結構強くてツボは外さないあたりさすが。
中庸なテンポ設定で進んでいって終楽章の盛り上がりは、それまで割と静かにしていたラザレフがエンジンをふかして少しずつ駆り立てていってソロヴァイオリンが歯車的前進、ダイナミックな追い込みでした。圧巻の中で終るはずが、その2フレーズ前あたりでラザレフの譜面台が緩んでしまい縦になってしまった。一度直すもまた縦に。譜面は立て板に水のように泳ぐのをラザレフが一生懸命抑えつけながら指揮もしながらなんとかフィニッシュ。乱れの無かったオケもさすが。
全体印象としては、ベルキンは静に沈みこむことよりも陽に向かうような演奏スタイルと感じた。元気にいけそうですねこれからも。
譜面台をガムテープで固定して後半の悲愴へ。
後半の悲愴は猛速の約40分。フシに流されない絶対ソナタを構築。ロシア物ということを忘れて進みたいところだが、この猛速であの咆哮だから、もう、猪突猛進で、やっぱりロシアの嵐が吹き荒れる。等々、色々と荒々しい演奏といった事を横に置けば、構築物件としては骨組みのしっかりした第1楽章でした。オーケストラはこの解釈には慣れていないのが濃厚で、そこは炎さん含め沢山のタクトのもと膨大な回数を演奏してきた同オケがそちらに慣れてしまっていてギアチェンジが簡単にはいかなかったのだろうと、戸惑いに似たものをこちらは感じた。リハを積んでもあの棒に乗るにはかなりエネルギーが要ると思う。
とはいうものの、透明な弦のぶ厚い響きにはやられる。圧倒的な膨らみと水の中で弦を弾いているかのようにみずみずしいサウンドが気持ちよく響いてくる。ステージフルに広がる厚みのある弦は快感ですな。
3楽章のマーチは激烈ではあるものの、このインテンポ基準の第1楽章だったかなという気があとでしてきた。前出しのやりかたがこことうまく結びついた。それにしても、うなる、咆哮、嵐、草木もなぎ倒すもの凄い圧巻の表現。
終楽章は尻つぼみにならずにどんどん盛り上げる。ここでも弦の厚みが心地よい。最後は指揮台下りてコントラバスに向かって歩いていきながら振るという熱のこめようで、膨らむように盛り上がった。結末の弱音終止、例によって終わっても振っている、そのことによって客にフライング儀式をさせない。さすがです。
ラザレフの圧力はいまだ厚い。熱い演奏がいまだ、たぎる。
おわり