河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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2571- チャイコフスキー、セレナーデ・メランコリック、木嶋真優、イオランタ、プレトニョフ、ロシア・ナショナル管、2018.6.12

2018-06-12 23:15:03 | オペラ

2018ロシア年&ロシア文化フェスティバルオープニング

2018年6月12日(火) 6:30-9:20pm サントリー

セレモニー  15
挨拶、M・E・シュヴィトコイ、高村正彦

チャイコフスキー セレナーデ・メランコリック  10
 ヴァイオリン、木嶋真優

Int

チャイコフスキー イオランタ(演奏会形式/日本語字幕付き)  100

キャスト(in order of vocal appearance)

1-1.マルタ(イオランタの乳母、ベルトランの妻)、山下牧子(Ms)
1-2.イオランタ(ルネ王の盲目の娘)、アナスタシア・モスクヴィナ(S)
1-3.ブリギッタ(イオランタの友人)、鷲尾麻衣(S)
1-4.ラウラ(イオランタの友人)、田村由貴絵(Ms)


2-1.ベルトラン(門番)、ジョン・ハオ(Bs)
2-2.アルメリック(ルネ王の従者)、高橋淳(T)


3-1.エブン=ハキア(ムーア人の大医師)、ヴィタリ・ユシュマノフ(Br)
3-2.ルネ王(プロヴァンスの王)、平野和(BsBr)


4-1.ヴォテモン伯爵(ブルゴーニュの伯爵、イオランタに恋する騎士)、イリヤ・セリヴァノフ(T)
4-2.ロベルト侯爵(ブルゴーニュの公爵・イオランタの許嫁)、大西宇宙(Br)

合唱、新国立歌劇場合唱団
ミハイル・プレトニョフ 指揮 ロシア・ナショナル管弦楽団

Duration 100
20 右1
06 左2
13 右3
34 左4~
13 九重唱等
14 フィナーレ


「ああ、なんて素敵なんだイオランタ、チャイコフスキーのオンリービューティフルでデリカシー満タンな神経細胞を垣間見るようなホレボレオペラ、10人衆圧巻じゃないか、素晴らしすぎて声もでない。
プレトニョフの頂点棒、応えるロシア・ナショナル管、新国立」

ツイッターでの一発目のつぶやき。素晴らしい内容が時間をおいてもドドッと寄せてきて波打つ。湯気が立つような感動の一夜だった。


1幕物100分、お初で見るイオランタ、演奏会形式で登場人物がメリハリつけて出てくるのでイメージでシーンをおぎなうことはできる。
冒頭の4人の女性、そして男性の方は大体2人ずつの束で歌う。
イオランタのストーリーもさることながら、伯爵、公爵、ライバルではないものでこれには気が安らぐ。

オネーギンを思い出す静寂が支配するイオランタだし、また、時折ほんの一瞬、ボリスで月夜に歌うマリーナに寄り添う音楽が短くブラスの咆哮をするといった音楽の盛り上げ効果、あのようなことを感じさせる局面がいい。咆哮は短ければ短いほどなんとも効果的でシーンがうるわしく滴る。心理劇と音楽の表情がパーフェクトにマッチする。

暗闇は暗闇にいては分からない。無から有が出来上がる抒情的エモーショナルストーリー。
目出度い喜びの物語、なのだが、聴後感というのは、そのような晴れやかさよりもむしろ、治癒前のイオランタのことを何度も思い出す。得ることによって無くなるものがあるだろうといった陳腐な話では無くて、なんだろう、切なさ、はかなさを強く感じさせる。なぜだろう。
チャイコフスキーの音楽がまるで誰かの、神経細胞を垣間見るようなデリカシーで迫ってくる。美しい弱音フレーズが触ってはいけない神経に触れる。美しさを越えたディテールデリカシー。音が場にしみこんでいく。それを共有したのかもしれない。
瞬間瞬間がほとぼり冷めることなくつながっていく。

冒頭ハープのチャイコフスキー節に続き女性4人による美しいソロ、重唱。
ロングクライマックスとなる中盤30分に及ぶヴォテモン伯爵とイオランタの掛け合い。静けさが支配していた音楽が絶妙に網の目のあやになって透明に張りつめていく中、二人が最高の歌の限りを尽くす。この1幕物オペラの実に三分の一を使った長丁場、圧巻のシーンでした。
そして9重唱、ロベルトが入り10人衆の惚れ惚れする歌、合唱。ナイーヴで繊細なチャイコフスキー節、大きくしなりを魅せながらオーケストラは頂点を吹き鳴らす。素晴らしい。
プレトニョフの作り出す音楽というのは繊細なもので、聴き手にヒタヒタと沁み込んでくる。オーケストラ共々極上テイスト。彼の美意識によく合っているオペラだし、納得の見事さでした。

女性4人衆、マルタ山下さんに導かれるように最初から好調。山下さんはこうゆう役どころが多いですが歌い口が好きで、最初のひと声で、イオランタのモスクヴィナ、鷲尾さん、田村さん、みなさん気合いが入り、ソロ、アンサンブル、見事でしたね。タイトルロールのモスクヴィナさんとの掛け合いも良くてその後の彼女の歌いっぷりを盛り上げていたように思います。山下さんの好唱が光る。

次の、ハオさん、高橋さん、ハオさんは最近いたるところに出ていて、もう、馴染んでます。高橋さんは山のように聴いているので、今回ももう少し長く聴いていたかったですね。

その次の、ルネ平野さん、医師ユシュマノフさん。
平野さんはたぶんお初で聴きます。スタイルのいいプロレスラー風味、キャラばっちりで堂々の歌。プログラム冊子にはフォルクスオーパー在籍10シーズンで350回というのが凄い。来日という定義ですね今回。そりゃそうだろうな、の納得歌唱。歌、仕草、動き、場慣れしていて、ドーンと何でも来いという感じ。
ユシュマノフさんは周りに比べると少し線が細いかな。昨年2017年、びわ湖でのラインの黄金に出演。しなる歌。

そして、ヴォテモン伯爵セリヴァノフさん、ロベルト侯爵の大西さん。敵対役と思いきや、このオペラではそうではなくて実に気持ちがいい。
大西さんはキャラクターがばっちりと決まっていて、前向きな歌唱、そしてアクション、そう快で、日本人とは思えない。あちらでの活躍がメインのようですからね。彼も来日という定義。
セリヴァノフさんはモスクヴィナさんとの長丁場での熱唱光りました。それもこれも、セリヴァノフ、大西、この両名がよくはまっていてこそ、で、オペラが一段と映えました。

以上の10人衆、みなさん素晴らしくて、オペラの醍醐味を満喫。コンサートスタイルでコンディションがいいというのもあるかと思いましたが、それ、途中から忘れました。オペラのシーンを観るように没入。


ブラスセクションと男声合唱は沈黙の長丁場覚悟、オーケストラのほうは吹いてなくても音を身体で受け止めていて常に音楽の中にある。集中力が切れることの無いもので、一旦音が出ると納得の凄味がある。
また、チェロが時折ベースのような音になる。そうとうに腰のあるサウンド。それやこれや色々と技を楽しめた。
プレトニョフのコントロールは隈なく効いている。最終的には強くそう感じた。

感動のイオランタ、ありがとうございました。

この日は、2018ロシア年&ロシア文化フェスティバルの初日。プログラム前半にセレモニー、そして、木嶋さんによるセレナーデ・メランコリックの美演。
木嶋さんのヴァイオリンは本当によく鳴る。少しうつむきながらの憂いを含んだ幅広な音と歌い口、それに伴奏オケ、細やかな演奏を楽しめた。


オープニングナイト、全て楽しめました。よかったなあ。
おわり

 


●●
付記


歌劇《イオランタ》 魅惑のロシア芸術に浸る一夜

 目の見えない愛娘を溺愛する余り、自分が盲目だということを娘に気付かせまいとする父王。彼女に本当のことを告げて共に試練に立ち向かうことこそ、真の愛だと考える騎士。人里離れた城を舞台に、愛の力で闇の世界から光の世界へと解き放たれる美しいイオランタ姫の物語を、詩情溢れる音楽で描いたチャイコフスキーの名作オペラ≪イオランタ≫が、「ロシア文化フェスティバル」のオープニングを飾る。
 演奏は、指揮者としてピアニストとしてロシア最高の音楽家の誉れ高いプレトニョフと、彼が創設し、今や「ロシア芸術のシンボル」と讃えられるロシア・ナショナル管弦楽団。歌手勢には世界で活躍する日露両国の若手とベテランが顔を揃える。
 プレトニョフはとりわけチャイコフスキーを敬愛し、他の追随を許さない精緻で洗練された名演で万人を魅了してきた。その彼が、日本では滅多に上演されない≪イオランタ≫を最高の布陣で聴かせてくれるとは、何という歓びだろう!それにこの演目は、愛の本質を問う普遍的なテーマを持った一幕物のオペラなので、感動を呼ぶ内容といい、約1時間40分の演奏時間といい、「ロシア・オペラは初めて」という方にもぜひお勧めしたい。更に今回は日本語字幕付きの演奏会形式で上演されるため、聴き手はチャイコフスキーの色彩感溢れる響きと名旋律に酔いながら、想像力を無限に羽ばたかせられる。
 オペラに先立ち、日本の若手ヴァイオリニストのホープ木嶋真優がプレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団との共演で、チャイコフスキーの珠玉の名曲≪セレナーデ・メランコリック(憂鬱なセレナーデ)≫を披露する。日本人が大好きな“チャイコフスキーの世界”を100パーセント楽しめる趣向だ。
 日露文化交流の場として、ロシア芸術の魅力と真髄を堪能する場として、これ以上ない魅惑的な一夜になるだろう。
ひのまどか(音楽作家)

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/イオランタ

 





 

 


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