河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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2641- バーバー、シェリー、コープランド、オルガンシンフォニー、鈴木優人、アイヴズ2番、広上、N響、2018.11.24

2018-11-24 23:52:34 | コンサート

2018年11月24日(土) 6:00pm NHKホール

バーバー シェリーによる一場面のための音楽  10

コープランド オルガンと管弦楽のための交響曲  6-8-11
 オルガン、鈴木優人

(encore)
バッハ 我ら苦難の極みにあるときもBWV641  2

Int

アイヴズ 交響曲第2番  7+12-10-3+11


広上淳一 指揮 NHK交響楽団


バーバー、コープランド、アイヴズ、アメリカ物3発。広上の指揮による作品の内面に光をよく当てた実に見事な演奏であった。もはや、彼らの作品に同化し尽したパフォームで、あまりの素晴らしさに声も出ない。圧倒的な快演に感動感動、魂が揺り動かされました。

大好物のアイヴズ2番、鮮やかな演奏であった。終楽章エンディングのインパクトは取りあえず神棚に置いて、序奏的第1楽章の閉かさや、耳に染み入るオケの音。ゆったりとさらさらとした弦から始まる。音力階層を感じさせるコントラバスは弱音レヴェルでのニュアンス、揺蕩う波が美しい。
そのまま続く2楽章、それに次の3楽章。この二つは規模が大きい。錯綜と清流、27才の冷静な知恵者が描く描写は実に素晴らしい。引用作品の絡み合い、若き作曲家の心象風景、色々なものが混ざり合い淡々とした中に、演奏はややウェットな趣きをひたひたと感じさせるように進行していく、行間の隅々まで情感が染み渡っていく。各インストゥルメントのソロが美しく響く。何故か懐かしいあのアメリカ時代1902年、それ以前の事だろうか、ほのぼのとした、家の煙突から煙が出ていそうな、国は違えどなんだが色々と共感する様なところがあって、何故か懐かしい。ホルンソロの共感、チェロがホルンに負けないデカサウンドでありったけの力で弾き切る、いやいや、お見事過ぎて声も出ない。指揮の広上はパーフェクトな振りではなかろうか。錯綜と清流、太細、繊細、大胆、強弱、伸縮、作品と同化した完全な指揮であった。彼が作品に共感しているその思いがN響の全パート、全プレイヤーにストレートに伝播、まるで指揮者がプレイしているようなオーケストラという個体、それを眼前に観ているようで、音楽の内面が広上によって鮮やかに表現された長い長い瞬間だった。

第2楽章のウィットに富んだコジャレた、タタッのコジャレエンディング。まるで、ラ・ボエーム第3幕の最初の音、最後の2個の打撃音、どちらでもいいけれど、あの二つの音を限りなく弱めたようなタタッ、ああゆうところって本当に生で聴いて観てよかったなあと感慨ひとしお。広上はタタッの前の空白のあたりで聴衆を振りむき最後のタタッを振る。機敏なオーケストラの反応もさることながら、ああいった生きてる音楽を聴いている実感の呼吸ってホント素敵。ビューティフル。

まあ、ここらあたりで音楽が引用の山らしいという話しはもはや横に置いて作品の中に入り込んで夢中で聴く。
ごく短い4楽章を終え、そのまま終楽章になだれ込む。ここもロングな楽章。振り返りもある。辻本の弾くチェロは太く美しく広上共々共感に溢れたプレイ、音楽作りに余裕を感じさせる。アメリカの音楽を実感しながらの弾きだった。脱帽もの。
音楽は2,3楽章の波を感じさせつつも、結末に向けて盛り上がりを魅せ、圧倒的に不可思議な全オケメンによるあらん限りの不協和音を引き伸ばして終わる。聴いているほうは路頭に迷う、このあとどこに向かえばいいのかわからない、茫然自失、唖然茫然の空間に放り出された状態になる。何回聴いてもなんだこれはという話しなんだが、まあ、演奏会ではこういったことも楽しみのうち。多くは語るまい。

バーンスタインのアイヴズ2番は音源3種聴ける。最後の1987年4月のライブDG盤は、昨今のテクノロジーではもっといい音で聴くことが出来るはずだが、とりあえずオリジナル盤で聴いても、凄さは変わらない。バスドラの強烈サウンド、重厚で何階層もあるコントラバス流れ、そして我らの音楽という共感のNYP猛者プレイ。炸裂フィニッシュには色々とあるのだろうが、もはや、受け入れるしかないこの説得力。広上の解釈は、ここ、ほぼ、このバーンスタインの解釈と瓜二つのものであった。ただの物まねになっていないのは、作品に対する心底共感が最初から聴けていて、誰もそんなことは思わない。こうなったらこうするしかない抜き差しならない音楽表現なのである。あれしかない。血が通った演奏とはこうゆうものをいうのであろう。音楽に真実を見た。圧巻。悶絶。

前半2曲目に配されたコープランドのオルガン・オルガン・シンフォニー、これも作曲者20代の作品。冷静さとギクシャクしたものが綯い交ぜになった音響空間は目いっぱい魅力的ですね。めったに演奏されることが無い作品、珍しさは越えてうならせてくれる内容。オーケストラやオルガンの底力も大きいですね。スキルもパワフルという感じで、やっぱり長けた猛者と実感する。
1楽章は静かなもので、響きを細めたようなオルガンサウンド、動きは細かい。これと一緒に小ぶりのオケがうまく合わさっていて、室内楽でも聴いているようだ。非常にバランスの良いものでしたね。2楽章に入り細かい動きはオケにも波及し幾何学模様の音響行進となっている。ミニマル風味というよりも、ミニマルの原点素材をそのまま放り出したような具合で、粗野な感じもする。いずれにしても魅力的なギクシャク幾何学模様ですな。鈴木息子の冷静なプレイが映える。
あちらが透けて見えそうなジャングルジム的幾何学模様が徐々に積分されていって響きの積み重ねが時間推移をあまり感じさせないほどになったあたりではたと気がつくとメラメラと燃え上がっている。凄腕オケの本領発揮、コープランドも草葉の陰で喜んでいることだろう。絶品でした。聴きごたえありましたね。

最初のバーバー、詩人シェリーの作品の1シーン。静かな喜び、音が何もないところから自然にペイントされていく美しい流れが高まり鎮まり、オーケストラのアンサンブルバランスが見事で美しい。広上の白鳥振りにも一段と力がこもる。空間をなぜていくような音楽でした。
おわり






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