錦糸町のすみだトリフォニーホールまでいってきました。
現在、超絶好調指揮者であるマーカルを聴かないてはない。
EXTONレーベルから出しているチャイコフスキー、マーラー、ドヴォルザークのそれぞれのシリーズは名演連発だし。
旬の彼らの演奏を聴けるわけだから錦糸町でもどこでもいかなければならない。
翌週のマーラー3番は必聴としても、この日のマイ・カントリーも必聴ではないか。
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2007年11月22日(木)7:00pm
すみだトリフォニー・ホール
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スメタナ/わが祖国
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ズデネック・マーカル指揮
チェコ・フィルハーモニー
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第一印象は、EXTONのSACDの音が出てきた。という感じ。
EXTONレーベルから連発しているSACDのサウンドそのものような音だ。本来は逆なのだろうが、それだけSACDのスペックはすごいということなのだろう。
眼前にせまりくる音。ちょっと遠い席で聴いたので眼前というのも変だが、要は音の彫りが非常に深いのである。
遠近というか、強弱というか、チェコ・フィル独特の針金が一本ずつそのまま川面に流れていうようなサウンドが、マーカルのもと今度は束になって響き、非常に彫りの深いサウンドとなっている。
彫の深い音、直観的に感じるのは厳しいトレーナーではないか、ということ。
このような彫の深い音のオーケストラというのはだいたい指揮者が猛烈なトレーナーの場合が多いような気がする。
いままで下手だったわけではないが、分解していた弦の響きが、まとまったサウンドとなって響く。素晴らしいサウンド。
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わが祖国。スメタナは聴こえない耳で作ったせいか自分で自分に感動しながら作っているような気がしないでもない。
スメタナをこうやってあらためて聴いてみると、マルティヌーの原型を聴いているような錯覚に陥る。
マルティヌーの飛ぶ音がミニマル・ミュージック風であったりするがその原型を聴いているような雰囲気になることがある。
マーカルは細やかな音楽のディテールを明確に、こだわりをもって表現する。
細部が非常に美しい音楽となっている。
SACDだとダイナミックな箇所もこまやかなところも並列して素晴らしいのだが、生で聴くとまた別の良さを発見できるものだ。
モルダウはやや速めで、びっしりと敷きつめられたヴァイオリンの音が美しい。
プレイヤーがみんな同じ方向を見て演奏している。
指揮者が絶好調というのはそういうことなんだ。
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この日は、通し演奏ではなく休憩があった。前半3曲。後半3曲。
総じて前半の3曲が素晴らしかった。
特にディテールの美しさは何ものにもかえがたい。
後半は曲の弱さが出てきてしまい少し弛緩した。
5曲目のフィナーレのブラスが、そのまま第6曲の冒頭部分の響きになるのは、曲の結びつきの強さを示すというよりも、弱点を単に補っているだけのように聴こえてしまう。
5曲目6曲目は曲が弱いと思う。
それならばと、マーカルは細部にこだわり、その部分の美しさを表現することに腐心していた。
曲の弱さを補って余りあるマーカル/チェコ・フィルの美しさである。
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マーカルの棒は昔どこかで見たことがあるような気がするのだが、河童蔵で調べてみないとわからない。
遠目にはちょっとシャルル・デュトワのような雰囲気があるが、もうすこし指揮が丁寧だ。
左手をひらいて両手を大きく下から上に振る姿は体の動きがそれほどでもないため、観ている方としてもわずらわしさがない。
オーケストラに溶け込んだ指揮姿だ。
この組み合わせは現在、非常に魅力的。
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すみだトリフォニーホールは今回初めて。
木目と金属骨組みのようなものがアンバランスになることなくしっくりしている。
また、前方ステージは奥行がかなりあり、となりの奏者と明確な距離を保てる。
ステージ両翼の音響板のようなものは、ななめに床に刺さっているように見えるユニークなもの。
一部ワインヤード型の階もあるが基本的には長方形でサウンドもまんべんなく響くようだ。
初めて聴くホールだが、マーカル/チェコ・フィルのサウンドに満足した。
ただ、このホール、ロビーというか、バーコーナーがあるが何故か壁だらけで窮屈で歩きにくい。
ホールは広く余裕のサウンドだが、周りの通路、ロビーなどあまりいいとはいえない。
休憩時間など、全然ゆっくりできない。
構造的に改築は不可能だろう。がまんがまんだね。
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